第111回
問83
必須問題|実務
一般病棟・外来処置室での常備を避けるべき薬剤
問題文
医療安全の観点から、一般病棟や外来処置室での常備を避けることが望ましい薬剤はどれか。1つ選べ。
1
リドカイン塩酸塩静脈内注射用 2%
—
2
アドレナリン注射液 0.1%
—
3
d-クロルフェニラミンマレイン酸塩注射液 0.5%
—
4
L-アスパラギン酸カリウム注射液 10 mEq/10 mL
—
5
アトロピン硫酸塩注射液 0.05%
—
正解です!
高濃度カリウム製剤は誤投与による心停止リスクがあり、一般病棟常備は禁忌に近い扱いです。
不正解です。正解は 4 L-アスパラギン酸カリウム注射液 です。
高濃度カリウム製剤の誤投与は心停止を招くため、一般病棟での常備は避けるべきハイアラートドラッグです。
解説を見る
▼
正解:4 L-アスパラギン酸カリウム注射液 10 mEq/10 mL
高濃度カリウム製剤は、静脈内に急速投与・誤投与されると心室細動→心停止を引き起こす危険性がある。そのため、ISMPや日本病院薬剤師会のガイドラインではハイアラートドラッグ(特に注意を要する医薬品)として一般病棟への常備を避け、薬剤部での一元管理が推奨されている。
| 選択肢 | 薬剤名 | 用途・特性 | 常備の可否 |
|---|---|---|---|
| 1 | リドカイン塩酸塩静注用 2% | 抗不整脈薬・局所麻酔薬。救急・処置に使用 | △ 救急カートへの配備は施設判断。過量で中毒リスクあり |
| 2 | アドレナリン注射液 0.1% | アナフィラキシー・心停止の救急薬 | ◯ 救急時に備え常備が推奨される。迅速投与が必要 |
| 3 | d-クロルフェニラミン注射液 0.5% | 抗ヒスタミン薬。アレルギー反応・アナフィラキシーに使用 | ◯ アドレナリンとともに救急常備薬として適切 |
| 4 ★ | L-アスパラギン酸カリウム注射液 10 mEq/10 mL | カリウム補充製剤(高濃度K製剤) | × 一般病棟常備を避けるべきハイアラートドラッグ。誤投与で心停止のリスク |
| 5 | アトロピン硫酸塩注射液 0.05% | 抗コリン薬。徐脈・有機リン中毒の解毒に使用 | ◯ 救急常備薬として適切。徐脈時の迅速投与に必要 |
高濃度カリウム製剤の誤投与事故を防ぐために
高濃度カリウム製剤(KCl注、L-アスパラギン酸K注など)は、生理食塩液や蒸留水と外見が似ているため、希釈せずに誤投与する事故が世界中で発生しています。主な対策として次のものが挙げられます。
・薬剤部一元管理:一般病棟への原液常備をやめ、薬剤部で希釈・調製したうえで払い出す
・専用ラベル・専用保管場所:カリウム製剤と他の電解質製剤を同じ場所に置かない
・濃度の確認:投与前にダブルチェックを実施
⚠️ 引っかけポイント:
・選択肢1(リドカイン静注用 2%)も過量投与で中毒(痙攣・心停止)リスクがあるが、一般病棟よりも救急カート・処置室での常備が前提となっており、本問の「最も避けるべき」には該当しない
・選択肢2(アドレナリン)・3(クロルフェニラミン)・5(アトロピン)はいずれもアナフィラキシーや救急への対応に必要であり、むしろ常備が推奨される薬剤
・選択肢1(リドカイン静注用 2%)も過量投与で中毒(痙攣・心停止)リスクがあるが、一般病棟よりも救急カート・処置室での常備が前提となっており、本問の「最も避けるべき」には該当しない
・選択肢2(アドレナリン)・3(クロルフェニラミン)・5(アトロピン)はいずれもアナフィラキシーや救急への対応に必要であり、むしろ常備が推奨される薬剤
臨床メモ
▼


薬剤師 あおい
「高濃度カリウム製剤を病棟に置かない」という原則は、医療安全の世界では最も有名なルールの一つです。1990年代にWHOやISMP(医薬品安全使用研究所)がこの問題を取り上げ、日本でも多くの病院が病棟からカリウム原液を撤去し、薬剤部で希釈・ミキシングしてから払い出す体制に切り替えました。
カリウムは細胞の興奮性に直結するイオンであり、急速な高K血症は心筋の脱分極を引き起こして心室細動につながります。逆に言えば、適切に希釈・点滴管理されれば低カリウム血症の補正に欠かせない電解質です。「薬は用量と投与方法が命」を体感できる典型的な事例です。
カリウム静注の基準値と覚え方
まず「40」を覚える:カリウムイオン濃度は 40 mEq/L 以下(=0.3 w/v% 以下)
→ ゴロ:死(40)を抑える 急速静注で死(心停止)を招く濃度の上限が40
40から残りを導く:
- 濃度:40 mEq/L 以下 → 0.3 w/v% 以下(40 mEq = KCl 約3 g ≒ 0.3 g/100 mL)
- 速度:20 mEq/hr 以下
濃度 40 mEq/L = 0.04 mEq/mL
1時間あたりの投与量(mEq/hr)= 濃度(mEq/mL)× 速度(mL/hr)
→ 0.04 mEq/mL × 500 mL/hr = 20 mEq/hr
つまり「濃度40 mEq/Lの液」を「500 mL/hr」で落とすとちょうど上限の20 mEq/hrになる - 速度換算:20 mEq/hr ÷ 60 分 ÷ 0.04 mEq/mL = 約8 mL/分以下
血清K基準値:3.5〜5.0 mEq/L(覚え方:4.0前後)
低K血症(<3.5)では補正が必要だが、補正速度が速すぎると高K血症・心停止を招く。補正中は心電図モニタリングが必須。
ゴロも含めてさらに詳しく整理した記事はこちら→ 【薬剤師国家試験】カリウム静注の安全基準(濃度・速度)の覚え方!












