市販の痛み止めを使うときに注意することって何かあるのかな?
この記事はこんな疑問をもった方向けです。
こんにちは。薬剤師のあおい(@yaku_medical)です!
市販の痛み止めを使う際に、症状によっては病院にかかった方がいい場合などがあります。
この記事では、病院にかかった方がいい場合の症状などを解説していきます。
今回の内容はこちらの書籍を参考に書いています。
【薬剤師が解説】市販の解熱鎮痛薬を選ぶ際の注意点
症状によっては、病院にかかった方が良い場合もあります。
この記事では、病院にかかった方が良い場合を解説していきます。
解熱鎮痛薬としてよく使われるロキソニンやカロナールの違い、市販薬についてはこちらで解説しています。
病院にかかった方がいい場合
いずれかに該当する場合は病院を受診しましょう!
それぞれについて詳しく解説していきます。
頭痛
下記のような場合には、病院にかかることを推奨します。
- はじめて経験するような痛み
- 「Ottawa SAH Rule」に当てはまる
- 視野に異常がある
- 片頭痛の症状が重い
- 痛み止めを月 15 日以上使っている
- 直近で頭をぶつけた経験がある
それぞれ見ていきましょう!
はじめて経験するような痛み
市販の解熱鎮痛薬で対応できるような頭痛は、通常今まで何度も経験したことがあるものに限ります。
特に、40歳以上で「はじめて経験するような痛み」となるとくも膜下出血や脳出血、緑内障などが疑われます。
そのため、一度病院を受診することが推奨されます。
「Ottawa SAH Rule」に当てはまる
Ottawa SAH Ruleとは、「オタワくも膜下出血ルール(Ottawa Subarachnoid Hemorrhage Rule)」のことで、くも膜下出血(SAH)の可能性を鑑別するために開発された臨床ルールです。
これに当てはまる人は、すぐに病院を受診する必要があります。
①年齢≥40歳
②首の痛みやこわばりがある
③意識消失を目撃されている
④活動中に発症
⑤雷鳴頭痛(突然雷が鳴ったような激しい頭痛)
⑥顎が胸につかない
40歳以上の人で、②~⑥の項目中1つでも当てはまるものがある場合、クモ膜下出血の可能性があります。
この場合は、病院を受診しましょう!
※Ottawa SAH Ruleの「感度」は、98.5~100%と高く全て該当しなければ「くも膜下出血」である可能性は低いと言えます。
しかし、「特異度」は15~27%と低いため、該当した人が「くも膜下出血」でない場合(偽陽性)も多いため、痛みの原因を明確にするためにも一度病院を受診することが推奨されます。
※感度・特異度のことはこちらの記事で解説しています。
視野に異常がある
閉塞隅角緑内障の急性発作では、
- 頭痛
- 眼の痛み
- 視野の異常
などが起こります。
薬が原因で悪化することもあります。
対応が遅れると失明の原因にもなるため、すぐに病院を受診しましょう。
片頭痛の症状が重い
片頭痛の症状がひどい場合は、OTCでは十分に治まらないことも多いです。
特に、頭痛によりひどい吐き気を伴うような場合は、一度病院を受診することが推奨されます。
片頭痛には、専用の治療薬や予防薬があり、そちらの必要性を検討する必要があります。
痛み止めを月15日以上使っている
痛み止めを使いすぎると、薬物乱用頭痛を引き起こす恐れがあります。
このような場合、医師の指導のもとでより適切な治療を受ける必要があります。
直近で頭をぶつけた経験がある
直近で頭を強く殴打した経験がある場合、その際に生じた外傷や出血が原因である可能性があります。
時間経過で悪化していくような場合もあり、一度病院を受診することが推奨されます。
腰痛・背部痛
下記のような場合には、病院にかかることを推奨します。
- 痛みが2週間以上続いている
- 安静にしていても痛む
- 発熱・体重減少を伴っている
- 脚やお尻に「痺れ」がある
- 尿が出ない・血尿が出る
- 電気が走る・やけるように痛む
それぞれ順番に見ていきましょう!
痛みが2週間以上続いている
一般的に言われる「腰痛」は、1週間で50%、2週間で80%が自然に治まるといわれています。1)
1) Borenstein DG: A clinicianʼs approach to acute low back pain. Am J Med, 102: 16S-22S, 1997[PMID:9217555]
しかし、
- 腰痛が2週間以上続く
- 時間経過で改善してこない
このような場合には、
- 内臓疾患
- 自己免疫疾患
などによる炎症などの可能性が出てきます。
こういった場合には、痛みの原因を明確にするためにも一度病院を受診することが推奨されます。
安静にしていても痛む
一般的な腰痛や関節痛の主な原因は筋肉の炎症であることが多く、安静にしていることで和らぐことが多いです。
しかし、
- 安静にしていても改善しない
- 夜間に痛みで目が覚めることがある
など、こんな場合には、
- 感染症
- 内臓疾患
などの可能性も疑われます。
そのため、一度病院を受診することが推奨されます。
発熱・体重減少を伴っている
腰痛などの関節痛に、
- 発熱
- 体重減少
などの全身症状が伴っている場合、
- 感染症
- 悪性腫瘍
などの可能性が疑われます。
そのため、一度病院を受診することが推奨されます。
脚やお尻に「痺れ」がある
脚やお尻に痺れの症状が現れている場合は、
- 脊髄圧迫などによる神経症状
などの可能性があります。
麻痺が進行すると回復が困難になる恐れもあります。
そのため、こんな場合はすぐに病院を受診しましょう。
尿が出ない・血尿が出る
尿が出ない・血尿が出るなどの症状は、
- 尿路結石
- 腎結石
などの疾患で見られます。
この際、強い腰の痛みや背中の痛みも伴うことがあります。
そのため、こんな場合はすぐに病院を受診しましょう。
電気が走る・やけるように痛む
- ビリビリと電気が走るような痛み
- チリチリとやけるように痛む
といった痛みは、
- 神経障害性疼痛と言われる神経性の痛み
- 帯状疱疹などの感染症
などの可能性があります。
こういった神経性の痛みは、市販薬では十分な効果が期待できないため、 病院を受診することが推奨されます。
のどの痛み
下記のような場合には、病院にかかることを推奨します。
- 唾液を飲み込んで痛みが悪化しない
- 口を開けにくい・息苦しさがある
- 「Centor Score」で2~3点以上になる
- 直近で異物を誤飲した経験がある
それぞれ順番に見ていきましょう!
唾液を飲み込んで痛みが悪化しない
通常、風邪などで喉が痛む際は「唾液を飲み込む」と痛みが強まります。
唾液を飲み込んでも喉の痛みが悪化しない場合は、喉ではなく頸部の痛みが疑われます。
- 寝違えた
- 捻った
などの明らかなケガをした覚えがない場合、心筋梗塞などの痛みによる可能性もあり、原因特定のため一度病院を受診することが推奨されます。
口を開けにくい・息苦しさがある
口の中の扁桃に膿が溜まって腫れ上がる「扁桃周囲膿瘍」や喉頭蓋の細菌感染症である「喉頭蓋炎」は、重症化すると気道を圧迫し、呼吸できなくなる恐れがあります。
この「扁桃周囲膿瘍」では、
- 喉の痛みに伴って口を開けにくい
- 息苦しいといった症状が現れる
といった特徴があります。
こういった場合は、すぐに病院を受診する必要があります。
「Centor Score」で2~3点以上になる
「Centor Score」とは、咽頭炎を予測する指標です。
溶血性連鎖球菌による「急性咽頭炎」では、抗菌薬による治療が必要な場合があります。
Centor Scoreが 2~3点以上になる場合は痛み止めを使うのではなく、病院を受診する必要があります。
症状 | 点数 |
---|---|
15歳未満 | +1 |
咳が出ない | +1 |
38℃以上の発熱 | +1 |
リンパ節を押さえると痛む(※) | +1 |
扁桃に白いブツブツがある | +1 |
45歳以上 | -1 |
合計点 | A群溶連菌性咽頭炎の可能性 |
---|---|
0点以下 | 2~3% |
1点 | 4~6% |
2点 | 10~12% |
3点 | 27~28% |
4点以上 | 38~63% |
2~3点以上になる場合は、溶血性連鎖球菌による「急性咽頭炎」の可能性があります。
(※)セルフメディケーションの観点では、リンパ節の正確な場所がわからなくても、「自分であごの下、のどの横あたり」を押さえてみて痛むかどうかを確認できれば十分です。
直近で異物を誤飲した経験がある
直近で異物を誤飲した経験がある場合は、そのときに生じた外傷が原因の可能性があります。
のどに魚の骨が刺さって、
- 骨がとれないとき
- 1~2日経っても痛みが消えない
- 1~2日経っても違和感が続く
こういった場合は、病院で診てもらったほうが無難です。
魚の骨は、食道などを傷付けやすく、局所の炎症・浮腫・腫瘍の原因になることがあります。
特に「ご飯の丸呑み」は食道などに深く刺さってしまうこともあるため、厳禁です!
その他の痛み
下記のような場合には、病院にかかることを推奨します。
- 痛みで「冷や汗」が出る
- 安静にしていても痛む
- 広範囲の漠然とした不明瞭な痛み
- 痛む部位を押しても痛みが強まらない
- 痛みが時間経過とともに悪化している
それぞれ順番に見ていきましょう!
痛みで「冷や汗」が出る
特に、胸部の痛みで「冷や汗」が出るような場合は、心筋梗塞など緊急性の高い疾患である可能性があります。
このような場合は、すぐに病院を受診する必要があります。
安静にしていても痛む
- 安静にしていても痛みが改善しない
- 眠っていても痛みで目が覚めることがある
このような場合は、通常の炎症による痛みではなく、
- 感染症
- 内臓疾患
などの可能性が疑われます。
そのため、一度病院を受診することが推奨されます。
広範囲の漠然とした不明瞭な痛み・痛む部位を押しても痛みが強まらない
心筋梗塞などの虚血性心疾患では、胸が痛むのが一般的ですが、
中には「胸の痛み」が現れず、下顎や歯・顔面への痛み・しびれ・違和感として現れる(放散痛)ことがあります。2)
2) Kreiner M, et al: Craniofacial pain as the sole symptom of cardiac ischemia: a prospective multicenter study. J Am Dent Assoc, 138: 74-79, 2007[PMID:17197405]
- 広範囲に漠然とした痛みがある
- 痛みの場所がハッキリしない
- 痛む場所を押しても痛みが強まらない
このような「放散痛」の可能性があります。
放散痛とは、関連痛ともいい、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患で典型的な症状である「胸部の締め付けられるような痛み」以外の心臓から離れた場所に起こる痛みを指します。
このような場合には、早めに病院を受診しましょう。
痛みが時間経過とともに悪化している
市販薬で対応できるような炎症性の痛みであれば、通常は時間経過とともに自然治癒します。
しかし、時間が経過しても、
- 痛みがどんどん悪化している
- 全く改善してこない
このような場合には、痛みの原因を明らかにするために一度病院を受診することが推奨されます。
まとめ
以上のことをまとめると下記のようになります。
最後に
今回は、病院にかかった方が良い場合を解説しました。
こういった場合に該当しない場合は、市販薬(OTC医薬品)で対応できることが多いです。
解熱鎮痛薬としてよく使われるロキソニンやカロナールの違い、市販薬についてはこちらで解説しています。
<参考書籍>
»OTC医薬品の比較と使い分け
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