ネキシウムとオメプラールの違いってなんだろう?
・薬のことについて知りたい
・ネキシウムとオメプラールの違いについて知りたい
この記事はこういった悩みをもった方向けです。
こんにちは。薬剤師のあおい(@yaku_medical)です!
この記事では、消化器系疾患治療薬のネキシウムとオメプラールについてまとめていきます!
【消化器系疾患治療薬】ネキシウムとオメプラールの違いは?
基本情報の比較
ネキシウム | オメプラール |
---|---|
【一般名】 エソメプラゾール | 【一般名】 オメプラゾール |
【分類】 プロトンポンプ・インヒビター(PPI) | 【分類】 プロトンポンプ・インヒビター(PPI) |
【粉砕可否】 粉砕NG (腸溶性コーティングが施されているのため) | 【粉砕可否】 粉砕NG (腸溶性コーティングが施されているのため) |
【代謝】 主にCYP2C19、一部CYP3A4 (CYP2C19の寄与度73%) | 【代謝】 主にCYP2C19、一部CYP3A4 (CYP2C19の寄与度98%) |
【特徴】 遺伝的体質によって効き目に個人差がでてしまう「オメプラゾール」の弱点を改善したもの。 | 【特徴】 遺伝的体質によって効き目に個人差がでることがある。 |
代謝酵素であるCYP2C19には、遺伝的多型があり、代謝能に個人差があります。
「ネキシウム(エソメプラゾール)」は、「オメプラール(オメプラゾール)」の光学異性体「S体」で、個人差が小さいという特徴があります。
併用禁忌
薬の中には、飲み合わせにより、作用の増強や減弱、副作用の増強など体に悪い影響がでるおそれがあり、併用することが禁止されている飲み合わせがあり「併用禁忌薬」と呼ばれます。
ネキシウムとオメプラールの併用禁忌は、共通しています!
併用禁忌薬 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
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アタザナビル硫酸塩 (レイアタッツ®) | アタザナビル硫酸塩の作用を減弱するおそれがある。 | 本剤の胃酸分泌抑制作用によりアタザナビル硫酸塩の溶解性が低下し、アタザナビルの血中濃度が低下することがある。 |
リルピビリン塩酸塩 (エジュラント®) | リルピビリン塩酸塩の作用を減弱するおそれがある。 | 本剤の胃酸分泌抑制作用によりリルピビリン塩酸塩の吸収が低下し、リルピビリンの血中濃度が低下することがある。 |
PPIの作用機序
ネキシウムとオメプラールは、どちらも「プロトンポンプ・インヒビター(PPI)」と呼ばれる分類の薬で、作用は共通しています。PPIは胃の壁細胞H/K-ATPase(プロトンポンプ)を阻害することで胃酸分泌を抑える働きをします。
ヒスタミンH2受容体阻害薬との違い
胃酸分泌を抑制する薬には「プロトンポンプ・インヒビター(PPI)」の他に「ヒスタミンH2受容体阻害薬」があります。
ヒスタミンH2受容体阻害薬は酸産生への機序のうち1経路しかブロックしないが、PPIは最終的なプロトンポンプを阻害するためより強力な酸抑制作用を持ちます。
規格・薬価の比較
ネキシウム | オメプラール,オメプラゾン |
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ネキシウムカプセル10mg ¥57.6/カプセル | オメプラール10mg ¥37.2/錠 オメプラゾン10mg ¥36.6/錠 |
ネキシウムカプセル20mg ¥100/カプセル | オメプラール20mg ¥57.3/錠 オメプラゾン20mg ¥56.4/錠 |
ネキシウム懸濁用顆粒分包10mg ¥66.2/包 | オメプラール注用20mg ¥362/瓶 |
ネキシウム懸濁用顆粒分包20mg ¥115.9/包 | オメプラゾールの先発品には、「オメプラール」と「オメプラゾン」の2つがあります。 |
ジェネリック(後発品)について
ジェネリック医薬品とは、厚生労働省の認可を得て製造販売される、先発医薬品と同じ有効成分を含む医薬品です。先発医薬品の再審査期間、特許期間が満了した後に製造されるため、先発医薬品よりも安いという特徴があります。
ネキシウムにはジェネリック医薬品がありません。
オメプラゾール10mg ¥18.3/錠 | オメプラゾール20mg ¥28.2/錠 | オメプラゾール注用20mg ¥206/瓶 |
オメプラゾールは、ジェネリックにすることで半額くらいに薬価を抑えることができます!
用法用量の比較
ネキシウム | オメプラール |
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①下記疾患の胃酸分泌抑制 ・胃潰瘍 ・十二指腸潰瘍 ・吻合部潰瘍 ・Zollinger-Ellison症候群 ・逆流性食道炎 <小児> ・1日1回10mg(1歳以上体重20kg未満) ・1日1回20mg(1歳以上体重20kg以上) ・1日1回10-20mg(体重20kg以上) <成人> ・1日1回20mg(標準用量) ・1日1回10-20mg(再燃・再発を繰り返す逆流性食道炎の維持療法) | ①下記疾患の胃酸分泌抑制 ・胃潰瘍 ・十二指腸潰瘍 ・吻合部潰瘍 ・Zollinger-Ellison症候群 ・逆流性食道炎 1日1回20mg 1日1回10-20mg (再燃・再発を繰り返す逆流性食道炎の維持療法の場合) |
②非びらん性胃食道逆流症 1日1回10mg | ②非びらん性胃食道逆流症 1日1回10mg,4週間まで |
③下記疾患における内視鏡的治療後、胃・ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎におけるヘリコバクター・ピロリの除菌補助 ・胃潰瘍 ・十二指腸潰瘍 ・胃MALTリンパ腫 ・特発性血小板減少性紫斑病 ・早期胃癌 <一次除菌> ・ネキシウムカプセル 20mg ・アモキシシリン 750mg ・クラリスロマイシン 200mg (1回400mg、1日2回が上限) 3剤を同時に1日2回、7日間 <二次除菌(一次除菌失敗の場合)> ・ネキシウムカプセル 20mg ・アモキシシリン 750mg ・メトロニダゾール 250mg 3剤を同時に1日2回、7日間 | ③下記疾患における内視鏡的治療後、胃・ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎におけるヘリコバクター・ピロリの除菌補助 ・胃潰瘍 ・十二指腸潰瘍 ・胃MALTリンパ腫 ・特発性血小板減少性紫斑病 ・早期胃癌 <一次除菌> ・オメプラゾール 20mg ・アモキシシリン 750mg ・クラリスロマイシン 200mg (1回400mg、1日2回が上限) 3剤を同時に1日2回、7日間 <二次除菌(一次除菌失敗の場合)> ・オメプラゾール 20mg ・アモキシシリン 750mg ・メトロニダゾール 250mg 3剤を同時に1日2回、7日間 |
④NSAIDs・低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制 1日1回20mg | ー |
薬剤Point
ネキシウム | オメプラール |
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①胃潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎では、8週間まで | ①胃潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎では、8週間まで |
②十二指腸潰瘍では、6週間まで | ②十二指腸潰瘍では、6週間まで |
③「非びらん性胃食道逆流症」には、1回10mgのみの適応 (他疾患は、1回20mgが標準用量) | ③「非びらん性胃食道逆流症」には、1回10mgのみの適応 (他疾患は、1回20mgが標準用量) |
④高齢者では、骨折、低Mg血症、低Na血症、C.difficile感染症などのリスクが増加する可能性があり、使用期間は必要最小限に留める | ④高齢者では、骨折、低Mg血症、低Na血症、C.difficile感染症などのリスクが増加する可能性があり、使用期間は必要最小限に留める |
⑤オメプラゾールの鏡像体で、同じ用量ではオメプラゾールよりも強力 | ⑤(注射用)内服可能となった後は、経口投与に切り替え、漫然と投与しない |
⑥CYP2C19の寄与がオメプラゾールよりも低く、遺伝子多形による個体間変動が少ない | ⑥CYP2C19の寄与大きく、遺伝子多型や相互作用による影響を受けやすい。(強いCYP2C19阻害薬との併用でAUC5倍以上) |
まとめ
①「ネキシウム(エソメプラゾール)」は、遺伝的体質によって効き目に個人差が出てしまう「オメプラール(オメプラゾール)」の欠点を改良したもの
②「ネキシウム(エソメプラゾール)」は、「オメプラール(オメプラゾール)」の光学異性体「S体」で、個人差が小さい
③PPIの個人差が大きいと、ピロリ菌除菌の成功率にも影響が出る
最後に
今回は、消化器系疾患治療薬のネキシウムとオメプラールについてまとめていきました。
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