77歳男性。身長165 cm、体重61 kg。10年前に腎硬化症と診断され、処方1〜4の薬剤で治療中である。しかし、半年前から腎機能が徐々に低下してきたため、食事制限を行った。患者は腎代替療法として血液透析を希望しており、透析シャント形成のために入院となった。また、入院前日に同院内で歯科治療を受け、処方5が追加され服薬していたが痛みは持続している。
【問256】患者への説明内容
処方1:炭酸水素ナトリウム(重炭酸Na・代謝性アシドーシス補正)
処方2:球形吸着炭(腸管内毒素吸着・尿毒症改善)
処方3:アルファカルシドール(活性型VitD₃)+ダプロデュスタット(HIF-PH阻害薬・CKD貧血)+アムロジピン(Ca拮抗薬)+オルメサルタン(ARB)
処方4:ドキサゾシン(α₁遮断薬・降圧薬)/処方5:アセトアミノフェン(鎮痛)
検査値:K 5.9 mEq/L(高K血症)・HCO₃⁻ 24.1 mEq/L・CCr 7.2 mL/min
| 選択肢 | 説明内容 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 ★ | 酸塩基バランスが整っており、処方1(炭酸水素Na)の継続が必要 | ◯ HCO₃⁻ 24.1 mEq/L は正常範囲(22〜26 mEq/L)内であり、処方1(重炭酸ナトリウム)による代謝性アシドーシスの補正が奏効している。しかし、透析導入後も腎機能は回復しないため、透析でアシドーシスが管理されるまで内服継続が必要。「整ってきているから継続が必要」という説明は適切。 |
| 2 | 血液透析導入後は食事制限がなくなる | × 透析導入後も食事制限は継続される。塩分・カリウム・リン・水分制限は透析患者でも重要であり(特に透析間の体重増加管理)、「制限がなくなる」という説明は誤り。透析で除去できる量には限界があり、食事管理との組み合わせが不可欠。 |
| 3 ★ | 処方3・4の服用中は立ちくらみに注意 | ◯ 処方3のアムロジピン(Ca拮抗薬)・オルメサルタン(ARB)と処方4のドキサゾシン(α₁遮断薬)はいずれも降圧薬であり、起立性低血圧(立ちくらみ)を引き起こす可能性がある。とくにドキサゾシン(α₁遮断薬)は末梢血管抵抗を低下させるため起立性低血圧が出やすい。複数の降圧薬を併用する本症例では特に注意が必要。 |
| 4 | 処方5(アセトアミノフェン)は1時間空ければ繰り返し服用可能 | × アセトアミノフェンの投与間隔は4〜6時間以上空ける必要がある(添付文書:「4時間以上の間隔をおく」)。1時間では短すぎる。また腎機能低下(CCr 7.2 mL/min)では代謝産物の蓄積に注意が必要であり、用量・間隔に特に配慮が求められる。 |
| 5 | 透析開始後はダプロデュスタットが不要になる | × ダプロデュスタット(HIF-PH阻害薬)はCKDに伴う腎性貧血の治療薬。血液透析導入後も腎性貧血は持続するため、EPO製剤注射や経口HIF-PH阻害薬による治療継続が必要。「透析で不要になる」は誤り。 |
・選択肢2:「透析=食事制限解放」という誤解が引っかけ。透析でK・リン・水分を除去できる量には限界があり、食事管理は透析後もむしろ厳格になる面もある。
・選択肢4:「1時間空ければOK」は明らかに短すぎる。アセトアミノフェンは4時間以上の間隔が必要。腎機能低下例では蓄積リスクにも注意。
・選択肢5:「透析=腎臓の代替」と捉えると貧血治療も不要と思いがちだが、腎性貧血はEPO産生低下が原因であり、透析で改善しないため治療継続が必要。
【問257】高カリウム血症の原因となる薬物の作用機序
K 5.9 mEq/L → 高カリウム血症(正常:3.5〜5.0 mEq/L)
処方1〜3に含まれる薬物:炭酸水素Na・球形吸着炭・アルファカルシドール・ダプロデュスタット・アムロジピン・オルメサルタン
| 選択肢 | 機序 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | 電位依存性L型Ca²⁺チャネルの遮断 | × アムロジピン(Ca拮抗薬)の機序。血管平滑筋・心筋のL型Ca²⁺チャネルを遮断して血管拡張・降圧をもたらす。Ca拮抗薬は高カリウム血症を引き起こさない。 |
| 2 | HIF-PH(低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素)の阻害 | × ダプロデュスタットの機序。HIF-PHを阻害してHIFを安定化→EPO産生↑→赤血球産生↑(腎性貧血治療)。高カリウム血症との直接的な関連はない。 |
| 3 | ビタミンD受容体の刺激 | × アルファカルシドール(活性型VitD₃)の機序。腸管Ca²⁺吸収促進・副甲状腺ホルモン産生抑制。高カリウム血症ではなく高カルシウム血症・低リン血症が副作用として問題になる。 |
| 4 | アドレナリンα₁受容体の遮断 | × ドキサゾシン(処方4)の機序。処方1〜3には含まれない。α₁遮断は末梢血管抵抗低下による降圧作用をもたらすが、高カリウム血症との直接的な関連はない。 |
| 5 ★ | アンジオテンシンⅡ AT₁受容体の遮断 | ◯ オルメサルタン(ARB)の機序。AT₁受容体遮断→アルドステロン分泌低下→集合管でのK排泄低下→高カリウム血症。RAASを抑制するARB・ACE阻害薬はいずれも高K血症を引き起こしやすく、腎機能低下例(CCr 7.2 mL/min)ではリスクがさらに高まる。本症例のK 5.9 mEq/Lの主な原因。 |
AngⅡ → AT₁受容体(副腎) → アルドステロン分泌↑ → 集合管K排泄↑
ARB(オルメサルタン)でAT₁遮断 → アルドステロン↓ → K排泄↓ → 高K血症
CKD(腎機能低下)ではもともとK排泄が低下しており、ARB・ACE阻害薬がさらにリスクを高める。
・選択肢1:アムロジピンも処方3に含まれるが、Ca拮抗薬は高K血症と無関係。「処方3の薬=全部怪しい」ではなく、高K血症と機序でつながる薬剤を選ぶ。
・選択肢4:α₁遮断薬(ドキサゾシン)は処方4であり、処方1〜3には含まれない。設問の範囲外。
・選択肢2:ダプロデュスタット(HIF-PH阻害)は貧血治療薬で、K代謝への影響はない。新しい薬なので機序が複雑に見えるが、高K血症とは無関係。


CKD患者の服薬管理は薬剤師が貢献できる重要な場面です。ARB(オルメサルタン)は腎保護のために使うが高K血症を起こすという矛盾した側面があり、「使いながら定期的にK値をモニタリングし、必要なら低K血症治療薬(ケイキサレート・ロケルマ等)を追加する」という管理が実務の基本です。
ダプロデュスタット(ダーブロック®)はHIF-PH阻害薬という比較的新しい経口貧血治療薬です。透析前・透析後ともに使用可能ですが、透析患者では用量調整が必要です。「透析開始後は不要」という誤解は患者からも医療者からも出やすい点なので、丁寧に説明しましょう。
アセトアミノフェンの服用間隔は「疼痛時・1回分・10回分」という処方スタイルでよく登場します。CKD患者では代謝産物(グルクロン酸抱合体等)の蓄積があるため、腎機能に応じた投与間隔の延長(4〜6時間以上)を守るよう指導しましょう。「1時間あいたらまた飲んでいい?」という質問が現場でよく出ます。










