ロキソニンとカロナールの違いって何だろう?
この記事はこんな疑問をもった方向けです。
こんにちは。薬剤師のあおい(@yaku_medical)です!
この記事では、解熱鎮痛薬としてよく使われるロキソニンとカロナールの違いと市販薬について解説していきます。
この記事で紹介している商品一覧
市販薬のロキソニン(ロキソプロフェン)製剤
市販薬のカロナール(アセトアミノフェン)製剤
ロキソニンとカロナールの基本情報の比較
まずは、ロキソニンとカロナールの基本情報を比較していきましょう。
ロキソニン(ロキソプロフェン)
ロキソニンの一般名(成分名)はロキソプロフェンで、鎮痛・抗炎症・解熱剤として使われています。
シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し、痛みや炎症・発熱の原因物質である「プロスタグランジン」を減らすことで効果を発揮する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:エヌセイズ)と呼ばれるグループの鎮痛薬です。
カロナール(アセトアミノフェン)
カロナールの一般名(成分名)はアセトアミノフェンです。
アセトアミノフェンの作用の正確な機序は完全には解明されていません。
中枢に作用することで痛みや発熱に効果を発揮すると考えられています。
基本情報の比較
ー | ロキソニン | カロナール |
---|---|---|
一般名 | ロキソプロフェン | アセトアミノフェン |
分類 | 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | 非ピリン系解熱鎮痛薬 |
薬価 ※2021年時点 | ¥12.40/60mg | ¥6.20/200mg ¥7.20/300mg ¥8.20/500mg |
1日最高投与量 (頓服時) | ①急性上気道炎(かぜ症候群)の場合 180㎎ | ①急性上気道炎(かぜ症候群)の場合 1500㎎ ②頭痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、歯痛などの場合 4000㎎ ③小児(15歳未満)に使う場合 60mg/kg |
注意事項 | 胃粘膜障害を起こしやすく、 空腹時の投与は避ける | 高用量では肝障害に注意 |
頓服とも言ったりしますが、症状が出た時に服用することです。
鎮痛効果の比較
鎮痛効果はロキソニンの方が強力で、カロナールの方が優しい。
抗炎症効果の違い
カロナールには、抗炎症効果はほとんどないと言われています。
鎮痛効果が発現するまでの時間の比較
ロキソニン(ロキソプロフェン)は、胃への負担を少なくしたプロドラッグ製剤です。
プロドラッグ製剤は、胃などで分解されないようにして、標的部位(患部)で薬効を発揮できるように化学構造を変えて作られた薬です。投与後に体内で起こる代謝によって本来の薬効を示すように設計されています。
添付文書記載のtrans-OH体というのが、ロキソニンの活性体(薬効を発揮する本体)です。
また、赤枠で囲ったTmaxというのが、体内に入って最高濃度になったときの時間を表しています。
ロキソニンのtrans-OH体のTmaxは、0.79±0.02(hr)となっており、カロナールの500mg錠が0.79±0.49(hr)ですので、どちらも1時間かからずにピークに達します。
若干ロキソニンの方が効きが早いですが、大きな差はないです。
安全性の比較
子どもへの安全性
ロキソニンをはじめ、大半のNSAIDsは小児には使うことができません。
市販薬の「ロキソニンS」も15歳未満には使用不可となっています。
カロナールは乳幼児の段階からも使用でき、小児領域の解熱・鎮痛で使う場合は、1回10~15mg/kgで使用します。
カロナールで痛みが治まらない場合は、1歳から使用できるボルタレン坐剤(サポ)などが選択肢としてあげられます。
市販の大人用のロキソニンを無理に使うよりも、病院への受診を推奨します。
妊婦への安全性
妊娠中はカロナールの方が安全性が高いとされています。
オーストラリア基準でも、カロナールは最も安全性の高い【A】と評価されています。
また、ロキソニンは【C】と評価されています。
※妊娠末期は禁忌となります。
オーストラリア基準って何ですか?
オーストラリア基準は、妊娠中の薬に対する安全性を評価する基準です。
ロキソニンの市販薬はある?
ロキソニンの代表的な市販薬を4つ紹介します。
ロキソニン(第一三共)
1回1錠 1日2回まで
・余分な成分がなく医療用ロキソニンに最も近い
・15歳未満:×
1錠中の成分 | 量 | 成分の働き |
---|---|---|
ロキソプロフェンナトリウム水和物 | 68.1mg (水和物として60mg) | 解熱鎮痛作用(主成分) |
薬剤師的Point
余分な成分もなく医療用のロキソニンとほとんど同じです。
添加物も大きく変わらないため、使いやすいのが特徴です。
ロキソニンSプラス(第一三共)
1回1錠 1日2回まで
・ロキソニンSに制酸作用のある酸化マグネシウムという胃粘膜を保護する成分が含まれています。
・15歳未満:×
1錠中の成分 | 量 | 成分の働き |
---|---|---|
ロキソプロフェンナトリウム水和物 | 68.1mg (水和物として60mg) | 解熱鎮痛作用(主成分) |
酸化マグネシウム | 33.3mg | 制酸成分(胃薬) |
薬剤師的Point
酸化マグネシウムは、アルカリ性なので胃酸を中和することで、制酸作用を示します。
医療用の酸化マグネシウムを制酸剤(胃薬)として使う場合は、通常成人1日500~1000mgを使用します。
そのため、酸化マグネシウムの33.3mgは、かなり少ないため、胃粘膜を保護する機能はあまり期待できない可能性があります。
ロキソニンSクイック(第一三共)
1回1錠 1日2回まで
・頭痛・生理痛に0.1秒でも速く
・ロキソニンSに制酸作用のあるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムという胃粘膜を保護する成分が含まれています。
・15歳未満:×
1錠中の成分 | 量 | 成分の働き |
---|---|---|
ロキソプロフェンナトリウム水和物 | 68.1mg (水和物として60mg) | 解熱鎮痛作用(主成分) |
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム | 100mg | 胃粘膜保護+制酸成分 |
薬剤師的Point
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、胃酸を中和する作用に、アルミニウム製剤の胃粘膜保護作用により、胃粘膜を保護する働きがあります。
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、医療用としては、400㎎使用されていることが多いです。
100㎎というのは胃粘膜を保護する働きを十分期待できる量になります。
ロキソニンSプレミアム(第一三共)
1回2錠 1日2回まで
ロキソニンSに下記の成分が含有されています。
・鎮痛補助成分:アリルイソプロピルアセチル尿素
・鎮痛補助成分:無水カフェイン
・制酸成分(胃薬):メタケイ酸アルミンマグネシウム
2錠中の成分 | 量 | 成分の働き |
---|---|---|
ロキソプロフェンナトリウム水和物 | 68.1mg (水和物として60mg) | 解熱鎮痛作用(主成分) |
アリルイソプロピルアセチル尿素 | 60mg | 鎮痛補助成分、眠気の原因 |
無水カフェイン | 50mg | 鎮痛補助成分 |
メタケイ酸アルミンマグネシウム | 100mg | 制酸成分(胃薬) |
薬剤師的Point
鎮痛補助成分として入っているアリルイソプロピルアセチル尿素は、催眠鎮静剤に分類され、ロキソニンの鎮痛効果を高める作用もありますが、眠気の原因にもなってしまいますので、車を運転される方は要注意です。
鎮痛補助成分として入っている無水カフェインの50㎎は、そこそこ量が多いのでカフェイン中毒に要注意です。
コーヒー1杯(140mL)中には、およそ84㎎のカフェインが含まれており、日ごろコーヒーをよく飲む方は特に注意が必要です。
✅健康な成人:400㎎
✅妊娠中や授乳中の方:300㎎
カロナールの市販薬はある?
ロキソニンは、15際未満や妊娠されている方には使いづらく、この場合は「アセトアミノフェン(カロナール)」が使われます。
カロナールの代表的な市販薬を4つ紹介します。
タイレノールA(ジョンソン・エンド・ジョンソン)
1回1錠 1日3回まで
有効成分が純粋なアセトアミノフェンのみの製剤です。
・15歳未満:×
1錠中の成分 | 量 | 成分の働き |
---|---|---|
アセトアミノフェン | 300㎎ | 解熱鎮痛作用(主成分) |
薬剤師的Point
医療用アセトアミノフェンは、風邪などで頓用で使う場合、1回300~500㎎を1日2回までで使います。
そのため、アセトアミノフェンの300㎎という量は、医療用で使われる量とほとんど同じです。
医療用アセトアミノフェンを頓用で使う場合の1日最高投与量は1500㎎です。
ノーシンアセトアミノフェン錠(アラクス)
1回2錠 1日3回まで
有効成分が純粋なアセトアミノフェンのみの製剤です。
・成人(15歳以上):1回2錠(1日3回まで)
・7歳以上15歳未満:1回1錠(1日3回まで)
・7歳未満の乳幼児:×
1錠中の成分 | 量 | 成分の働き |
---|---|---|
アセトアミノフェン | 150㎎ | 解熱鎮痛作用(主成分) |
薬剤師的Point
タイレノールAと比べ1錠中のアセトアミノフェンの量が150㎎と少量になっていることで、15歳未満の方にも使いやすく、成人でも1回量が2錠となっており、1回量が3錠の「バファリンルナJ」よりも使いやすい設計となっています。
バファリンルナJ(ライオン)
1回3錠 1日3回まで
有効成分が純粋なアセトアミノフェンのみの製剤です。
・15才以上:1回3錠(1日3回まで)
・11才以上15才未満:1回2錠(1日3回まで)
・7才以上11才未満:1回1錠(1日3回まで)
・7才未満:×
1錠中の成分 | 量 | 成分の働き |
---|---|---|
アセトアミノフェン | 100㎎ | 解熱鎮痛作用(主成分) |
薬剤師的Point
タイレノールAと比べ1錠中のアセトアミノフェンの量が100㎎と少量になっていることで、15歳未満の方にも使いやすい設計になっています。
新セデス(シオノギヘルスケア)
1回2錠 1日3回まで
アセトアミノフェン(A)+カフェイン(C)+エテンザミド(E)を組み合わせた「ACE処方」と呼ばれる製剤です。
・15才以上:1回2錠 1日3回まで
・7才以上15才未満:1回1錠 1日3回まで
・7才未満:×
1錠中の成分 | 量 | 成分の働き |
---|---|---|
エテンザミド | 200㎎ | 解熱鎮痛作用(主成分) |
アセトアミノフェン | 80mg | 解熱鎮痛作用(主成分) |
アリルイソプロピルアセチル尿素 | 30mg | 鎮痛補助成分 |
無水カフェイン | 40mg | 鎮痛補助成分 |
薬剤師的Point
解熱鎮痛成分にエテンザミドとアセトアミノフェンの2つが入っています。
エテンザミドは、ロキソニンと同じNSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛成分です。
鎮痛補助成分として入っているアリルイソプロピルアセチル尿素と無水カフェインの2つが入っています。
アリルイソプロピルアセチル尿素は、催眠鎮静剤に分類され、眠気の原因にもなってしまいますので、車を運転される方は要注意です。
無水カフェインが40㎎入っていますのでカフェイン中毒にも要注意です。
コーヒー1杯(140mL)中には、およそ84㎎のカフェインが含まれており、日ごろコーヒーをよく飲む方は特に注意が必要です。
✅健康な成人:400㎎
✅妊娠中や授乳中の方:300㎎
ノーシン錠(アラクス)
1回2錠 1日3回 まで
眠気の原因となる成分を除いた「ACE処方」の製剤です。
(A)アセトアミノフェン
(C)カフェイン
(E)エテンザミド
・15才以上:1回2錠 1日3回まで
・15才未満の小児:×
1錠中の成分 | 量 | |
---|---|---|
アセトアミノフェン | 300mg | 解熱鎮痛作用(主成分) |
エテンザミド | 160mg | 解熱鎮痛作用(主成分) |
カフェイン水和物 | 70mg | 鎮痛補助成分 |
薬剤師的Point
眠気成分が入っていないため、車を運転される方にも使いやすいのが特徴です。
鎮痛補助成分としては、無水カフェインではなく、カフェイン水和物が入っていますが、どちらも効果面に大きな違いはありません。
カフェインの量として70㎎入っていますので、カフェイン中毒には要注意です。
コーヒー1杯(140mL)中には、およそ84㎎のカフェインが含まれており、日ごろコーヒーをよく飲む方は特に注意が必要です。
✅健康な成人:400㎎
✅妊娠中や授乳中の方:300㎎
まとめ
ロキソニンとカロナールの作用をまとめると以下の通りです。
・鎮痛効果・抗炎症効果が高い→ロキソニン
・安全性が高い→カロナール
頭痛などで解熱鎮痛薬をドラッグストアなどで購入されるときの参考になりましたら幸いです。
お気軽にどうぞ!