第111回
問95
理論問題|物理
日本薬局方 赤外吸収スペクトル測定法
問題文
日本薬局方赤外吸収スペクトル測定法に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1
赤外線の波長領域は、紫外線と可視光線の間にある。
—
2
赤外線の波数 4000 cm⁻¹ を波長に換算すると、2.5 μm である。
—
3
赤外吸収は、振動によって分子の分極率が変化するときに観測される。
—
4
赤外吸収スペクトルの指紋領域は特性吸収帯より高波数側にある。
—
5
固体だけではなく、液体や気体の試料でも赤外吸収スペクトルを測定できる。
—
正解です!
赤外吸収の波数・波長換算と測定対象の理解が重要です。
不正解です。正解は 2と5 です。
波数4000 cm⁻¹=波長2.5 μm、固体・液体・気体すべてで測定可能です。
解説を見る
▼
正解:2・5
赤外吸収スペクトルの基本:
・波長領域:0.78〜1000 μm(近赤外〜遠赤外)。可視光より長波長側
・波数と波長の換算:$\tilde{\nu}\text{(cm}^{-1}\text{)} = \dfrac{1}{\lambda\text{(cm)}} = \dfrac{10^4}{\lambda\text{(μm)}}$
・日局の測定範囲:4000〜400 cm⁻¹(2.5〜25 μm)
・赤外活性の条件:振動によって双極子モーメントが変化すること(分極率ではない)
・指紋領域:1500〜400 cm⁻¹(特性吸収帯 4000〜1500 cm⁻¹ より低波数側)
・波長領域:0.78〜1000 μm(近赤外〜遠赤外)。可視光より長波長側
・波数と波長の換算:$\tilde{\nu}\text{(cm}^{-1}\text{)} = \dfrac{1}{\lambda\text{(cm)}} = \dfrac{10^4}{\lambda\text{(μm)}}$
・日局の測定範囲:4000〜400 cm⁻¹(2.5〜25 μm)
・赤外活性の条件:振動によって双極子モーメントが変化すること(分極率ではない)
・指紋領域:1500〜400 cm⁻¹(特性吸収帯 4000〜1500 cm⁻¹ より低波数側)
| 選択肢 | 記述 | 判定・理由 | ||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 赤外線の波長領域は紫外線と可視光線の間にある | × 電磁波の波長順(短→長):X線 → 紫外線 → 可視光線 → 赤外線 → マイクロ波。赤外線は可視光線より長波長側にある。
名前の由来
「紫外線」=可視光の紫より外(短波長側) 「赤外線」=可視光の赤より外(長波長側) |
||||||||||||||||
| 2 ★ | 波数 4000 cm⁻¹ を波長に換算すると 2.5 μm | ◯ $\lambda\text{(μm)} = \dfrac{10^4}{\tilde{\nu}\text{(cm}^{-1}\text{)}} = \dfrac{10^4}{4000} = 2.5$ μm。日局の測定範囲の短波長端(高波数端) | ||||||||||||||||
| 3 | 赤外吸収は振動によって分子の分極率が変化するときに観測される | × 赤外活性の条件は双極子モーメントの変化。分極率が変化するときに活性になるのはラマン散乱。赤外とラマンは相補的な分析法 | ||||||||||||||||
| 4 | 指紋領域は特性吸収帯より高波数側にある | × 逆。特性吸収帯(官能基領域):4000〜1500 cm⁻¹、指紋領域:1500〜400 cm⁻¹。指紋領域は特性吸収帯より低波数側にある。 特性吸収帯(4000〜1500 cm⁻¹)
OH基・C=O基・C-H基など分子内の特定の官能基に特有の吸収が現れる領域。官能基の確認に利用する。
指紋領域(1500〜400 cm⁻¹)
C-C・C-O単結合の伸縮や骨格の曲げ振動が複雑に重なり合って現れる領域。化合物の同定(指紋照合)に利用する。
★ 暗記必須:水酸基(OH)3600〜3200・幅広い吸収、カルボニル基(C=O)1700付近
|
||||||||||||||||
| 5 ★ | 固体だけでなく液体や気体の試料でも測定できる | ◯ 日局の赤外吸収スペクトル測定法では固体(KBr錠剤法・液膜法など)・液体(液膜法・ATR法)・気体(ガスセル)いずれの状態でも測定可能 |
⚠️ 引っかけポイント:
・選択肢3:「分極率の変化」→ ラマン散乱、「双極子モーメントの変化」→ 赤外吸収。この区別は頻出
・選択肢4:指紋領域(低波数側・1500〜400)と特性吸収帯(高波数側・4000〜1500)の位置関係を逆に覚えていると誤選択する
・選択肢3:「分極率の変化」→ ラマン散乱、「双極子モーメントの変化」→ 赤外吸収。この区別は頻出
・選択肢4:指紋領域(低波数側・1500〜400)と特性吸収帯(高波数側・4000〜1500)の位置関係を逆に覚えていると誤選択する
臨床メモ
▼


薬剤師 あおい
赤外吸収スペクトル(IR)は医薬品の同定試験に実際に使われています。日本薬局方の各条(個々の医薬品の規格)には「赤外吸収スペクトル測定法によること」と記載された同定試験が多く、製造・品質管理の現場では日常的に使われる分析手法です。
薬局薬剤師が直接IRを使う機会はほとんどありませんが、製薬企業の品質管理部門や試験検査機関では、原料や製品の同定・純度確認に不可欠なツールです。「この物質のIRスペクトルが標準品と一致するか」を確認することで、誤った原料が混入していないかを素早くチェックできます。












