【第111回薬剤師国家試験】問96-97 日本薬局方 水酸化ナトリウムの定量(連問) 解説

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第111回 問96-97
第111回 問96-97
理論問題|物理
日本薬局方 水酸化ナトリウムの定量(連問)
共通問題文(問96・97)
次の記述は、日本薬局方水酸化ナトリウムの定量に関するものである。この水酸化ナトリウム(NaOH:40.00)は不純物として炭酸ナトリウム(Na₂CO₃:105.99)のみを含むものとし、下線部イ及びエの時点をそれぞれ第一中和点、第二中和点とする。
本品約1.5 gを精密に量り、新たに煮沸して冷却した水40 mLを加えて溶かし、15℃に冷却した後、フェノールフタレイン試液2滴を加え、0.5 mol/L 硫酸で滴定し、液の赤色が消えたときの0.5 mol/L 硫酸の量を A(mL)とする。さらにこの液にメチルオレンジ試液2滴を加え、再び0.5 mol/L 硫酸で滴定し、液が持続する淡赤色を呈したときの0.5 mol/L 硫酸の量を B(mL)とする。(A-B)mLから水酸化ナトリウム(NaOH)の量を計算する。
0.5 mol/L 硫酸 1 mL = mg NaOH
問96 この定量法に関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。
1
日本薬局方において、下線部アの標準液の標定に用いられる標準試薬と0.5 mol/L 塩酸の標定に用いられる標準試薬は同じである。
2
下線部イでは、本品の量が異なっても第一中和点となる pH の値は変化しない。
3
0.5 mol/L 硫酸の代わりに0.5 mol/L 硫酸とファクターが同じ0.5 mol/L 塩酸を用いても、滴定量は下線部ウの液量と変わらない。
4
下線部エは、メチルオレンジのほとんどが化学構造bからaに変化した結果である。
構造式a(アゾ型)
構造式b(キノイド型)
5
空欄 に入れるべき数字は、80.00 である。
正解です!
0.5 mol/L H₂SO₄の標定には炭酸ナトリウム、第一中和点のpHは量によらず一定です。
×
不正解です。正解は 1と2 です。
解説で各選択肢を確認しましょう。

問97 前問の定量法において、本品1.5000 gを量り、0.5 mol/L 硫酸(f=1.000)で適定したところ、B=0.25 mLであった。本品中の不純物である炭酸ナトリウムの含量として最も近いのはどれか。1つ選べ。
1
0.9%
2
1.8%
3
2.5%
4
3.6%
5
5.0%
正解です!
B mL は Na₂CO₃ の第一→第二中和点の滴定量。炭酸ナトリウムの分子量105.99から計算します。
×
不正解です。正解は 2(1.8%) です。
B mL の0.5 mol/L H₂SO₄が中和する Na₂CO₃ の量から計算します。
解説を見る(問96・97)

【定量法の仕組み】

NaOH + Na₂CO₃ 混合物を0.5 mol/L H₂SO₄で二段階滴定する。
第一中和点(フェノールフタレイン、pH約8.3):NaOH完全中和 + Na₂CO₃→NaHCO₃
 NaOH + ½H₂SO₄ → ½Na₂SO₄ + H₂O
 Na₂CO₃ + ½H₂SO₄ → NaHCO₃ + ½Na₂SO₄
第二中和点(メチルオレンジ、pH約4.0):NaHCO₃完全中和
 NaHCO₃ + ½H₂SO₄ → ½Na₂SO₄ + H₂O + CO₂

∴ B mL は Na₂CO₃ 由来の NaHCO₃ を中和した量 → Na₂CO₃ の定量に使う
 (A-B) mL は NaOH のみに対応する量 → NaOH の定量に使う

【問96の各選択肢】

📋 選択肢1 補足:日本薬局方 容量分析用標準液の標定(教科書表より)

分類 標準液 標準試薬(分子量) 標定時の指示薬
中和
滴定
1 mol/L 塩酸 炭酸ナトリウム(105.99) メチルレッド又は電位差滴定法
0.5 mol/L 硫酸 ⬅ 問題文「ア」 炭酸ナトリウム(105.99) メチルレッド又は電位差滴定法
1 mol/L 水酸化カリウム液 アミド硫酸(97.09) ブロモチモールブルー
1 mol/L 水酸化ナトリウム液 アミド硫酸(97.09) ブロモチモールブルー又は電位差滴定法
キレート
滴定
0.01 mol/L エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム液 亜鉛(65.38) エリオクロムブラックT又は電位差滴定法
沈殿
滴定
0.1 mol/L 硝酸銀液 塩化ナトリウム(58.44) フルオレセインナトリウム又は電位差滴定法
非水
滴定
0.1 mol/L 過塩素酸 フタル酸水素カリウム(204.22) クリスタルバイオレット又は電位差滴定法

0.5 mol/L 硫酸も1 mol/L 塩酸(=0.5 mol/L 換算)も、標定の標準試薬は「炭酸ナトリウム」で共通。→ 選択肢1 は正しい。
⚠️ フタル酸水素カリウムは非水滴定(0.1 mol/L 過塩素酸)専用。中和滴定の標準試薬と混同しないこと。

選択肢記述判定・理由
1 ★ 0.5 mol/L H₂SO₄と0.5 mol/L HClの標定に用いる標準試薬は同じ ◯ 日局では0.5 mol/L 硫酸・1 mol/L 塩酸(問題文の「0.5 mol/L 塩酸」と同系)いずれの標定にも炭酸ナトリウム(Na₂CO₃、分子量105.99)を標準試薬として用いる(上表参照)
2 ★ 本品の量が異なっても第一中和点のpHは変化しない ◯ 中和点のpHは試料量によらず、第一中和点ではNaHCO₃/H₂CO₃系の緩衝作用により約pH 8.3で一定となる
3 ファクターが同じH₂SO₄とHClに換えても、滴定量は下線部ウの液量と変わらない × 滴定量は変わる
H₂SO₄(2価)と HCl(1価)はモル濃度が同じでも規定度(中和能力)が異なる
 0.5 mol/L H₂SO₄ の規定度 = 0.5 × 2 = 1 N
 0.5 mol/L HCl  の規定度 = 0.5 × 1 = 0.5 N
同量の NaOH を中和するには HCl は H₂SO₄ の2倍の液量が必要。
∴ ファクターが同じでも 0.5 mol/L HCl に換えると滴定量は2倍になり、下線部ウの液量とは一致しない。
4 下線部エはメチルオレンジがb(キノイド型)からa(アゾ型)に変化した結果 × 。まずメチルオレンジの性質から整理する。

【メチルオレンジとは】
アゾ色素系の酸塩基指示薬。変色域は pH 3.1(赤)〜 4.4(黄)
 ・塩基性側(pH > 4.4):a 型(アゾ型)=黄色
 ・酸性側(pH < 3.1) :b 型(キノイド型)=赤色

【構造変化の方向】
酸性になる(H⁺ が増える)につれて:a(アゾ型・黄色)→ b(キノイド型・赤色)
塩基性になるにつれて:b(キノイド型・赤色)→ a(アゾ型・黄色)

選択肢4は「b から a に変化した」と言っているが、これは塩基性方向への変化。
下線部エ「液が持続する淡赤色」は pH が下がって a → b の変化(b 型=赤色が増えた)結果であり、記述は逆。
5 空欄オに入れる数字は 80.00 × 下記「選択肢5の計算」を参照。正しくは 40.00 mg

【ファクター(f)とは】

標準液のファクター(f)は、標準液の実際の濃度と規定の濃度のずれを表す補正値。

$$f = \frac{1000\,m}{VMn} = \frac{1}{V} \times \frac{1000\,m}{Mn}$$
← 実消費量の逆数 → ← 理論消費量 →
 m:標準試薬の質量(g)、V:標準液の消費量(mL)
 M:標準試薬の式量、n:価数

f の意味:
 f = 1.000 → 実際の濃度=規定の濃度(誤差なし)
 f > 1.000 → 実際の濃度が規定より高い(少ない量で中和できた)
 f < 1.000 → 実際の濃度が規定より低い(多い量が必要だった)

日局の規定:f は 0.970〜1.030 の範囲内でなければならない。
範囲外の場合は標準液を再調製する。

選択肢3の「ファクターが同じ」とは f の値が等しいという意味。
しかし f が同じでも H₂SO₄(2価)と HCl(1価)では規定度(中和能力)が2倍異なるため、滴定量は変わる。

【選択肢5の計算:空欄オ】

空欄オ=「0.5 mol/L 硫酸 1 mL が中和できる NaOH の mg 数」

① H₂SO₄ に含まれる H⁺ の物質量
 H₂SO₄ は 2 価の酸:H₂SO₄ → 2H⁺ + SO₄²⁻
 0.5 mol/L × 1 mL × 2 = 1 mmol の H⁺

② 中和に必要な NaOH の物質量
 NaOH + H⁺ → Na⁺ + H₂O(1:1)
 ∴ NaOH = 1 mmol

③ NaOH の質量
 1 mmol × 40.00 mg/mmol = 40.00 mg

∴ 空欄オ = 40.00 (選択肢5の「80.00」は 2 倍間違い)

※ 日局によっては「0.5 mol/L 硫酸(½)」と表記し 1 mL = 20.00 mg と規定する場合もあるが、本問の問題文は通常の「0.5 mol/L 硫酸」であり、化学量論どおり 40.00 mg が正しい。

【問97の計算】

B mL の意味を確認:
B = 第一中和点(フェノールフタレイン)→ 第二中和点(メチルオレンジ)の滴定量
この段階では NaHCO₃ + ½ H₂SO₄ → ½ Na₂SO₄ + H₂O + CO₂ の反応が進む
∴ B mL の H₂SO₄ は、Na₂CO₃ から変化した NaHCO₃ を中和している

① H₂SO₄ の物質量
 0.5 mol/L × 0.25/1000 L = 0.000125 mol の H₂SO₄

② NaHCO₃ の物質量(反応比 NaHCO₃ : H₂SO₄ = 2 : 1)
 NaHCO₃ = 0.000125 mol × 2 = 0.00025 mol

③ Na₂CO₃ の物質量(Na₂CO₃ : NaHCO₃ = 1 : 1)
 Na₂CO₃ + ½H₂SO₄ → NaHCO₃ + ½Na₂SO₄
 ∴ Na₂CO₃ = NaHCO₃ = 0.00025 mol

④ Na₂CO₃ の質量
 0.00025 mol × 105.99 g/mol = 0.026498 g ≈ 0.0265 g

⑤ 含量(%)
 0.0265 g ÷ 1.5000 g × 100 = 1.77% ≈ 1.8%

∴ 正解は選択肢 2(1.8%)
⚠️ 引っかけポイント:
選択肢1:「フタル酸水素カリウム=非水滴定の標準試薬」と覚えている人は、0.5 mol/L 硫酸と0.5 mol/L 塩酸の標定試薬が炭酸ナトリウム(共通)だと知らないと混乱する。両者が同じ標準試薬を使うことを問うている
選択肢3:「ファクターが同じ=滴定量も同じ」と思いがち。しかし H₂SO₄(2価)と HCl(1価)はモル濃度が同じでも規定度が2倍異なる。0.5 mol/L HCl では同じ NaOH を中和するのに2倍の液量が必要になる
選択肢4:メチルオレンジの色変化の方向(酸性→赤色 = b型 = キノイド型)を逆に覚えると誤選択する
選択肢5:0.5 mol/L H₂SO₄ は 2 価の酸なので、1 mL 中の H⁺ = 0.5 × 1 × 2 = 1 mmol。NaOH 1 mmol = 40.00 mg が正解。「80.00」は H₂SO₄ の価数を 2 倍で考えた上にさらに誤りを重ねた値。なお「20.00」は日局の「(½)H₂SO₄」規定の場合の値(本問とは別の定義)
問97:B mL が Na₂CO₃ の定量に対応することを理解していないと計算できない
臨床メモ
あおい
薬剤師 あおい

日局の定量法は製薬企業の品質管理部門・試験検査機関で実際に使われる手法です。薬局薬剤師が直接行う機会はほとんどありませんが、「なぜ二段階滴定をするのか」「なぜ指示薬を変えるのか」という原理を理解しておくことは、製剤の品質を患者に説明する際の背景知識になります。

フェノールフタレインは塩基性側(pH 8〜10)で赤色、メチルオレンジは酸性側(pH 3〜4)で赤色に変色します。この2つの指示薬を使い分けることで、NaOH と Na₂CO₃ を同一溶液中で別々に定量できるという分析法です。

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