59歳男性。1年前の勤務先の定期健康診断で眼圧高値を指摘され、専門医で精密検査を受けるよう勧められた。その後、市立病院眼科を受診したところ、原発性開放隅角緑内障と診断され、処方1の薬剤による治療を受けていた。しかし、眼圧低下効果が十分に得られないため、本日、新たに処方2が追加され来局した。
【問260】点眼指導の内容
処方1:ラタノプロスト点眼液0.005%(PGF₂α誘導体・FP受容体刺激薬)1日1回夕
処方2:ブリモニジン酒石酸塩点眼液0.1%(選択的α₂受容体刺激薬)1日2回朝夕
| 選択肢 | 指導内容 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 ★ | 処方2→めまい・低血圧に注意 | ◯ ブリモニジン(α₂刺激薬)は点眼であっても全身吸収によりα₂刺激作用が出現し、血圧低下・めまい・倦怠感・口渇などの全身性副作用が生じることがある。高齢者や降圧薬服用中の患者では特に注意が必要。 |
| 2 ★ | 夕の点眼時、処方1と2を5分以上空ける | ◯ 複数の点眼薬を同時に使用する場合、前の点眼薬が希釈・流出するのを防ぐために5分以上の間隔を空けることが原則。処方1(夕1回)と処方2(朝夕2回)は夕方に重複するため、順番と間隔の指導が必要。懸濁液・ゲル製剤は最後に点眼する。 |
| 3 | 処方2→目の周りの皮膚が黒っぽくなる | × 皮膚や虹彩の色素沈着(黒化)はラタノプロスト(処方1)の副作用。プロスタグランジンF₂α誘導体はメラニン産生を促進し、虹彩・眼瞼・睫毛の色調変化を起こす。ブリモニジン(処方2)ではない。 |
| 4 | 処方2は1回2滴がより効果的 | × 点眼薬は1回1滴が原則。結膜嚢の容積は約7〜8 µLで、1滴(約30〜50 µL)でも溢れる。2滴以上点眼しても薬効は増さず、むしろ全身吸収量が増えて副作用リスクが高まる。 |
| 5 | 点眼後すぐにまばたきを繰り返す | × 点眼後は目を静かに閉じ、涙嚢部を軽く押さえる(鼻涙管閉塞)のが正しい指導。まばたきを繰り返すと薬液が涙とともに鼻涙管→鼻→咽頭へ流れ、全身吸収が増加して副作用リスクが高まる。 |
・選択肢3:「色素沈着(黒化)=ブリモニジン(処方2)」と思いがちだが、これはラタノプロスト(処方1)の副作用。プロスタグランジン製剤のメラニン産生促進作用によるもの。
・選択肢5:「まばたきで広げる」は誤り。点眼後のまばたきは鼻涙管への流出を促進し、全身副作用を増やす可能性がある。
【問261】ラタノプロスト・ブリモニジンと作用機序が異なる薬物
除外すべき機序:ラタノプロスト=FP受容体刺激(選択肢1)、ブリモニジン=α₂受容体刺激(選択肢3)
→ 選択肢1・3は除外。選択肢2・4・5から正解を選ぶ。
| 選択肢 | 機序・薬物 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | FP受容体刺激→ぶどう膜強膜流出↑ | × ラタノプロスト(処方1)と同じ機序。「作用機序の異なる」という条件に合わない。プロスタノイドFP受容体刺激薬はラタノプロスト・ビマトプロスト・トラボプロスト等が該当。 |
| 2 ★ | β+α₁遮断→房水産生抑制+ぶどう膜強膜流出↑ | ◯ ニプラジロール(ハイパジール®)などのアドレナリンα₁β遮断薬の機序。β遮断により毛様体上皮細胞での房水産生を抑制し、さらにα₁遮断によりぶどう膜強膜流出経路からの房水排出を促進する。FP受容体刺激でもα₂刺激でもないため追加可能。 |
| 3 | α₂受容体刺激→房水産生抑制 | × ブリモニジン(処方2)と同じ機序。「作用機序の異なる」という条件に合わない。 |
| 4 ★ | Rhoキナーゼ阻害→線維柱帯-シュレム管流出↑ | ◯ リパスジル(グラナテック®)の機序。Rhoキナーゼ(ROCK)を阻害することで線維柱帯細胞の細胞骨格(アクチン・ミオシン)が弛緩・再構成され、線維柱帯-シュレム管流出経路(従来流出路)からの房水排出が促進する。FP受容体刺激でもα₂刺激でもなく、ぶどう膜強膜流出(副流出路)でなく従来流出路を促進する点が特徴。 |
| 5 | BKチャネル遮断→線維柱帯-シュレム管流出↑ | × BKチャネル(大コンダクタンスCa²⁺依存性K⁺チャネル)の遮断で房水排出を促進するという機序は、緑内障治療薬として確立されていない。なお、BKチャネルの開口(刺激)が線維柱帯弛緩に関与するという研究はあるが、臨床使用される薬剤の確立した機序としては不適切。 |
・プロスタグランジン関連薬(ラタノプロスト等)→ FP受容体刺激 → ぶどう膜強膜流出↑
・β遮断薬(チモロール・カルテオロール等)→ β₁遮断 → 毛様体房水産生↓
・α₁β遮断薬(ニプラジロール)→ β遮断(房水産生↓)+α₁遮断(ぶどう膜強膜流出↑)
・α₂刺激薬(ブリモニジン)→ α₂受容体刺激 → 房水産生↓+ぶどう膜強膜流出↑
・炭酸脱水酵素阻害薬(ドルゾラミド等)→ CA阻害 → HCO₃⁻産生↓ → 房水産生↓
・Rhoキナーゼ阻害薬(リパスジル)→ ROCK阻害 → 線維柱帯-シュレム管流出↑(従来流出路)
・選択肢2:「β+α₁遮断でぶどう膜強膜流出も促進」という部分は見落としやすい。β遮断薬の主な機序は房水産生抑制だが、α₁遮断を有するものはぶどう膜強膜流出も促進する。
・選択肢4:Rhoキナーゼ阻害→線維柱帯-シュレム管(従来)流出路の促進。ぶどう膜強膜(副)流出路を促進するPG製剤と区別する。
・選択肢5:BKチャネルの「遮断」で促進という機序は確立されておらず不適切。


点眼薬の複数使用時の間隔指導は薬局でほぼ毎日必要な場面があります。「5分以上空ける」「懸濁液・ゲル製剤は最後」「1回1滴」「点眼後は目を閉じて涙嚢部を押さえる」の4点セットで覚えておきましょう。点眼順序は原則として水溶液→懸濁液→ゲル製剤の順。
ブリモニジンの全身副作用は高齢者・小児・降圧薬服用者で特に注意が必要です。眠気・倦怠感・口渇・低血圧・徐脈が報告されており、自動車運転への影響も懸念されます。小児では中枢神経抑制(無呼吸・徐脈・低体温)の重篤例もあり、低出生体重児・乳幼児への使用は禁忌です。
リパスジル(グラナテック®)はRhoキナーゼ(ROCK)阻害薬で2014年承認の日本発の緑内障点眼薬です。既存の点眼薬(PG製剤・β遮断薬・α₂刺激薬)と全く異なる線維柱帯-シュレム管(従来流出路)への作用機序を持ち、多剤無効例への追加として有用です。点眼直後に一過性の充血・眼瞼炎が出ることがあるため、事前説明が大切です。










