13歳男児。体重50 kg。エピペン注射液0.3 mg(注)の処方が記載された処方箋を持って母親とともに薬局を訪れた。薬剤師が情報収集したところ、男児は昼食にうどんを食べた後、屋外の運動場でサッカーをしているときに倒れたとのことだった。倒れたのは運動開始30分後だった。緊急搬送後、適切な処置により症状は消失し、その後小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーと診断され、エピペン注射液を処方された。
(注)1管2 mL、アドレナリンを2 mg含有するプレフィルドシリンジ。
1回に0.3 mL注射される。
なお、2週間前にもパスタを食べた後にサッカーをしたところ、軽度のかゆみや発疹の症状があった。夜食にうどんやパスタを食べても異常はなく、空腹時にサッカーをしても異常はなかった。
【問338】エピペン(アドレナリン自己注射薬)の使用方法
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | 注射前に振ってから使用 | × エピペンの薬液は溶液であり、懸濁液のように振って均一化する必要はない。「使用前に振る」という指導は不要かつ不適切。 |
| 2 | 通常、臀部に注射 | × エピペンは大腿部の前外側に注射する。「臀部」は誤った部位であり、坐骨神経損傷等のリスクもあるため不適切。 |
| 3 ★ | 緊急時は衣服の上から注射可能 | ◯ エピペンは緊急時には衣服(ズボン等)の上からでも注射可能な設計になっている。アナフィラキシーは一刻を争うため、衣服を脱がせる時間を惜しんで直ちに注射することが推奨される。 |
| 4 ★ | 注射部位に垂直に針を刺す | ◯ エピペンは大腿部前外側に垂直(90度)に押し当てることで、内蔵された針が筋肉内に確実に刺入される設計になっている。斜めに当てると正しく作動しない・薬液が適切に注射されないおそれがある。 |
| 5 | 残液がなくなるまで繰り返し使用 | × エピペンは1回使い切りの自己注射器であり、1本で投与できる薬液量・注射時間(数秒間押し当てる)が決まっている。使用後に再度同じデバイスを使い回すという発想自体が誤りで、症状が改善しない場合は新しいエピペンを追加投与するか医療機関での対応となる。 |
・選択肢2:「注射=臀部(お尻)」という一般的な筋肉注射のイメージに引っかかりやすいが、エピペンは大腿部前外側専用。
・選択肢5:「残液がある=再利用できる」という発想は、1回使い切りの自己注射デバイスという設計思想と矛盾する。
【問339】食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)の生活指導
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | 運動は屋内の体育館で行う | × FDEIAの誘因は「原因食物+運動」の組合せであり、運動が屋外か屋内かは本質的な要因ではない。屋内であっても、原因食物摂取後に運動すれば発症する可能性があり、「屋内なら安全」という説明は誤った安心感を与える。 |
| 2 ★ | 小麦摂取後の運動を避ける | ◯ FDEIAの基本的な予防策は、原因食物(本症例では小麦)を摂取した後、一定時間(数時間程度)は運動を避けること。症例文の経過(うどん・パスタ摂取後の運動でのみ症状が出現)と完全に整合する、最も核心的な生活指導。 |
| 3 | 運動前の水分補給で発症予防 | × 水分補給は熱中症対策等として一般に重要だが、FDEIAの発症機序(食物アレルゲン+運動による吸収・反応性の変化)とは無関係であり、水分補給によってFDEIAの発症を予防できるという医学的根拠はない。 |
| 4 ★ | エピペンを常時携帯 | ◯ FDEIAは誤って原因食物を摂取した後に運動してしまうリスクが常に存在し、アナフィラキシーショックという生命に関わる症状を起こしうる。エピペンを常に携帯させ、症状出現時に速やかに使用できる体制を整えることは、安全管理上極めて重要な指導内容。 |
| 5 | 小麦の完全除去が必要 | × 症例文では「夜食にうどんやパスタを食べても異常はなかった」と記載されており、小麦を摂取するだけ(運動を伴わない)であれば症状は出現していないことが示されている。FDEIAは「食物+運動」の組合せが誘因であるため、運動と組み合わせない限り、必ずしも食品の完全除去が必要とは限らない。「アレルギー=原因食物を完全に断つ」という単純な発想は、FDEIAの病態とは合致しない。 |
・選択肢1・3:「屋外運動」「水分不足」など、熱中症や一般的な体調不良の予防策を連想させる選択肢だが、FDEIAの本質的な誘因(食物+運動の組合せ)とは無関係。
・選択肢5:症例文の「夜食にうどん・パスタを食べても異常なし」という具体的なエピソードが、この選択肢を否定する直接的な根拠になっている。問題文をよく読むことで判断できる設問。
・本問は「食物単独では問題ない」「運動単独でも問題ない」「食物+運動の組合せでのみ発症する」というFDEIAの3層構造を理解しているかが核心。


エピペンの使い方を「3つの動作」で覚える:①オレンジ色のニードルカバーを下に向けて大腿部前外側に、②「カチッ」と音がするまで垂直に強く押し付ける、③数秒間(5〜10秒程度)押し付けたまま待つ。「衣服の上からでもOK」「振らない」「臀部ではなく大腿部」という否定形のポイントもセットで覚えておくと、本問のような選択肢に対応しやすくなります。
FDEIAの典型的な問診ポイント:「その食品を食べただけでは症状が出ないか?」「運動だけでは症状が出ないか?」「食べた後に運動したときだけ症状が出るか?」という3点を確認することで、通常の食物アレルギーとFDEIAを鑑別できます。本症例も、この3パターンの経過が症例文に丁寧に書き込まれており、FDEIAの典型例として読み解くことができます。
FDEIAの原因食物と運動のタイミング:小麦・甲殻類(エビ・カニ)などが代表的な原因食物として知られています。症状は食後数時間以内(特に2時間以内)の運動で誘発されやすいとされ、本症例の「昼食後、運動開始30分で発症」という経過も典型的です。「食べてすぐ運動しない」という指導は、給食後の体育の授業や部活動など、学校生活における具体的な対応にもつながります。










