第111回
問112
理論問題|生物
血圧に影響を及ぼす生理活性物質
問112 血圧に影響を及ぼす生理活性物質に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1
レニンは、傍糸球体細胞から分泌される。
—
2
アンジオテンシノーゲンは、肺胞上皮細胞から分泌される。
—
3
アルドステロンは、毛細血管における K⁺ の再吸収を促進する。
—
4
バソプレシンは、尿細管及び集合管における水の再吸収を促進する。
—
5
ナトリウム利尿ペプチドは、尿細管及び集合管における Na⁺ の再吸収を促進する。
—
正解です!
レニンは傍糸球体細胞から分泌され、バソプレシンは水の再吸収を促進して血圧を上昇させます。
不正解です。正解は 1 と 4 です。
解説でRAS系とホルモンの作用を確認しましょう。
解説を見る
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血圧調節に関わる主要なホルモン・物質
①RAS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系):血圧低下時に活性化し、Na⁺・水の再吸収促進→血圧上昇
②バソプレシン(ADH):視床下部産生・下垂体後葉から分泌。水の再吸収促進→血圧上昇
③ナトリウム利尿ペプチド(ANP/BNP):心臓(心房・心室)から分泌。Na⁺排泄促進→血圧低下
①RAS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系):血圧低下時に活性化し、Na⁺・水の再吸収促進→血圧上昇
②バソプレシン(ADH):視床下部産生・下垂体後葉から分泌。水の再吸収促進→血圧上昇
③ナトリウム利尿ペプチド(ANP/BNP):心臓(心房・心室)から分泌。Na⁺排泄促進→血圧低下
【各選択肢の解説】
| 選択肢 | 記述 | 判定・理由 |
|---|---|---|
| 1 ★ | レニンは傍糸球体細胞から分泌される | ◯ レニンは腎臓の傍糸球体装置(傍糸球体細胞)から分泌されるタンパク質分解酵素。血圧低下・交感神経刺激・Na⁺濃度低下などを感知して分泌される。アンジオテンシノーゲン→アンジオテンシンIへの変換を触媒する。 |
| 2 | アンジオテンシノーゲンは肺胞上皮細胞から分泌される | × アンジオテンシノーゲンは主に肝臓で産生・分泌される糖タンパク質。レニンによってアンジオテンシンIに変換され、次いで肺のACE(アンジオテンシン変換酵素)によってアンジオテンシンIIに変換される。「肺で変換される」という事実と「肺胞上皮細胞から分泌される」を混同しないよう注意。 |
| 3 | アルドステロンは毛細血管における K⁺ の再吸収を促進する |
× 誤りが2点ある。 ①作用部位が誤り:アルドステロンの作用部位は「毛細血管」ではなく腎臓の遠位尿細管・集合管。 ②K⁺の動きが逆:アルドステロンはNa⁺の再吸収促進とK⁺の排泄促進を引き起こす。 【イメージで整理】 Na⁺と水は基本的に同じ挙動を示すため、「Na⁺が体内に再吸収される=水も一緒に体内に残る=尿が出にくくなる」方向。これにより循環血液量が増え血圧が上昇する。 K⁺の排泄は「Na⁺を回収する代わりに、Na-Kトランスポーターを介してK⁺を尿中へ捨てる」ために起こる。Na⁺を取り込む際のトレードオフとして、K⁺が尿中に出ていくイメージ。 → アルドステロン過剰(原発性アルドステロン症)では高血圧+低K血症が生じる。 |
| 4 ★ | バソプレシンは尿細管及び集合管における水の再吸収を促進する | ◯ バソプレシン(ADH:抗利尿ホルモン)は視床下部で産生され、下垂体後葉から分泌される。腎臓の遠位尿細管・集合管に作用し、アクアポリン-2(水チャネル)を管腔側膜に発現させて水の再吸収を促進→尿量減少・血漿浸透圧低下・血圧上昇。 |
| 5 | ナトリウム利尿ペプチドは尿細管及び集合管における Na⁺ の再吸収を促進する | × ナトリウム利尿ペプチド(ANP:心房性ナトリウム利尿ペプチド)は心房の伸展刺激で分泌され、腎臓でのNa⁺・水の再吸収を抑制(排泄を促進)して利尿・降圧作用を示す。「促進」ではなく「抑制」。 |
【RAS系の流れ】
血圧低下・循環血液量減少
↓
レニン分泌(傍糸球体細胞)
↓ アンジオテンシノーゲン(肝臓産生)を分解
アンジオテンシンI
↓ ACE(肺)による変換
アンジオテンシンII(強力な血管収縮作用)
↓
①血管収縮→血圧上昇
②アルドステロン分泌促進(副腎皮質)→ 遠位尿細管・集合管でNa⁺再吸収↑・K⁺排泄↑→循環血液量増加→血圧上昇
↓
レニン分泌(傍糸球体細胞)
↓ アンジオテンシノーゲン(肝臓産生)を分解
アンジオテンシンI
↓ ACE(肺)による変換
アンジオテンシンII(強力な血管収縮作用)
↓
①血管収縮→血圧上昇
②アルドステロン分泌促進(副腎皮質)→ 遠位尿細管・集合管でNa⁺再吸収↑・K⁺排泄↑→循環血液量増加→血圧上昇
⚠️ 引っかけポイント:
・選択肢2:アンジオテンシノーゲンの産生は「肝臓」。ACEが存在するのが「肺」。産生と変換の場所を混同しない
・選択肢3:アルドステロンはK⁺を「再吸収」ではなく「排泄」促進。Na⁺とK⁺の動きが逆になる
・選択肢5:「ナトリウム利尿」という名前の通り、Na⁺を排泄する(再吸収を抑制する)ペプチド
・選択肢2:アンジオテンシノーゲンの産生は「肝臓」。ACEが存在するのが「肺」。産生と変換の場所を混同しない
・選択肢3:アルドステロンはK⁺を「再吸収」ではなく「排泄」促進。Na⁺とK⁺の動きが逆になる
・選択肢5:「ナトリウム利尿」という名前の通り、Na⁺を排泄する(再吸収を抑制する)ペプチド
臨床メモ
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薬剤師 あおい
RAS系は降圧薬の主要な標的です。ACE阻害薬(エナラプリル・リシノプリルなど)はアンジオテンシンIIの産生を抑制し、ARB(カンデサルタン・バルサルタンなど)はアンジオテンシンII受容体を遮断します。どちらも高血圧・心不全・腎保護に使用されます。
バソプレシン関連では、バソプレシンV₂受容体拮抗薬(トルバプタン)が低Na血症・心不全による体液貯留の治療に用いられます。「水だけを排泄する(電解質を排泄しない)」という選択的な利尿作用が特徴です。またBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心不全の診断・重症度評価の重要なバイオマーカーです。










