81歳男性。一人暮らし。息子が車で30分くらいの場所に住んでいる。息子は週末にこの男性宅を訪問し、生活の世話をしている。この男性は65歳から高血圧症、高尿酸血症及び前立腺肥大症の治療を行っていた。1年前に認知症と診断され、処方1、処方2及び処方3の薬剤で治療中である。血圧コントロール不良のため、今回より処方4の薬剤が追加となり、男性が息子とともに処方箋を持って薬局を訪れた。受付時に、この男性から「最近飲み忘れが多く、結構薬が残ってしまいます。今日から薬が1つ増えると聞いたのですが、ただでさえ飲み忘れがあるのに、これ以上増えたらもっと飲めなくなるのではないかと心配です。何か良い方法はないですか。睡眠はよくとれており体調には問題ありません。」と相談があった。
(処方1)
カンデサルタン錠 4 mg・ドネペジル塩酸塩錠 10 mg 各1回1錠(1日1錠) 1日1回 朝食後 14日分
(処方2)
アロプリノール錠 100 mg・ナフトピジル錠 50 mg 各1回1錠(1日1錠) 1日1回 昼食後 14日分
(処方3)
スボレキサント錠 10 mg・酸化マグネシウム錠 500 mg 各1回1錠(1日1錠) 1日1回 就寝前 14日分
コメント:酸化マグネシウム錠は排便のあった日は服用しないでよい。
(処方4)
ヒドロクロロチアジド錠 12.5 mg 1回0.5錠(1日0.5錠) 1日1回 朝食後 14日分
(処方箋に記載されていた検査値)
血圧 164/86 mmHg、AST 32 IU/L、ALT 18 IU/L、
血清クレアチニン 0.9 mg/dL、BUN 23 mg/dL、尿酸 10.1 mg/dL
【問308】多剤服薬患者への服薬支援
→ 服薬回数の集約・家族のサポート強化・医師との連携が基本方針
| 選択肢 | 対応内容 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 ★ | 息子に毎日電話確認を提案 | ◯ 認知症・一人暮らしの服薬管理に家族の関与は重要。息子は週末のみの訪問だが、電話での毎日の服薬確認は現実的・効果的なサポート手段。薬剤師から家族に具体的な方法を提案することは適切な服薬支援。 |
| 2 | 疑義照会なしに配合錠へ変更 | × 薬剤の変更(配合錠への切り替えを含む)は必ず医師への疑義照会が必要。薬剤師の独断による変更は薬剤師法違反。カンデサルタン+ヒドロクロロチアジドの配合錠への変更を提案するのは良いが、実施には医師の承認が必要。 |
| 3 ★ | 処方2を朝食後に変更提案 | ◯ 現在、処方1(朝)・処方2(昼)・処方3(就寝前)と3回に分かれている。アロプリノール・ナフトピジルは昼食後服用だが、朝食後への変更が薬理学的に問題ない場合、服用回数を朝・就寝前の2回に集約でき、飲み忘れ防止につながる。医師への変更提案は適切。 |
| 4 | アロプリノール中止を提案 | × 尿酸 10.1 mg/dLは高尿酸血症の基準(7.0 mg/dL超)を大きく超えており、アロプリノールの継続が必要。中止を提案する根拠がない。 |
| 5 | スボレキサント増量を提案 | × 「睡眠はよくとれている」と患者本人が述べており、睡眠に問題はない。増量の根拠がなく、高齢者では過剰鎮静・転倒リスクが高まる。 |
・選択肢2:「配合錠に変更すれば服薬数が減る」という発想は正しいが、疑義照会なしの変更は不可。
・選択肢4:尿酸値を確認せず「薬を減らす提案」に飛びつかない。検査値を根拠に判断する。
・選択肢5:患者の訴えを丁寧に確認。「睡眠に問題なし」なのに増量は不適切。
【問309】薬剤師フォローアップの法規(薬剤師法第25条の2)
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | 都道府県知事への申請・登録が必要 | × フォローアップ実施に際して都道府県知事への申請・登録は不要。薬剤師法第25条の2に基づき、薬剤師は調剤後も継続的な把握と指導を行う義務があるが、特段の登録手続きは規定されていない。 |
| 2 ★ | 処方医の指示は不要 | ◯ 薬剤師法第25条の2に基づくフォローアップは薬剤師が自律的に行うものであり、処方医の指示なしに実施できる。ただしフォローアップの結果、問題があれば処方医に情報提供する義務がある。 |
| 3 | アドヒアランス低下時に薬剤師の判断で用法変更 | × 用法用量の変更は医師の指示が必要。薬剤師が独断で用法用量を変更・指示することは薬剤師法違反。フォローアップで問題を把握した場合は、処方医へ情報提供し変更を相談するのが正しい手順。 |
| 4 | 電話フォローアップは認められていない | × 電話・ビデオ通話・アプリ等を用いた非対面でのフォローアップも認められている。特に一人暮らし高齢者や移動が困難な患者への電話フォローアップは実務上も重要な手段。 |
| 5 ★ | フォローアップ後も次回服薬指導は必要 | ◯ フォローアップは調剤後の継続的な把握・指導であり、次回調剤時の服薬指導を代替するものではない。次回来局時にも改めて服薬状況・副作用・効果を確認し、服薬指導を行う義務がある。 |
・選択肢1:フォローアップに登録・申請制度はない。薬剤師の義務として法律に規定されている。
・選択肢4:「電話は不可」は誤り。対面・非対面を問わず実施できる。
・選択肢3:フォローアップで気づいたことは医師へ情報提供。薬剤師単独での用法変更は不可。


認知症高齢者の服薬管理は「仕組み」で支える:認知症患者の服薬管理は、患者本人の努力だけでは限界があります。一包化・服薬カレンダー・お薬手帳・家族への説明・電話フォローアップを組み合わせた「仕組み」で支えることが重要です。今回のように服薬回数を集約(3回→2回)する提案も、薬剤師ならではのアプローチです。
薬剤師法第25条の2のフォローアップ義務:2019年の薬機法改正で薬剤師には調剤後の継続的フォローアップが義務化されました。電話・ビデオ通話・アプリなど手段は問いません。フォローアップで得た情報は記録し、必要に応じて処方医へ情報提供します。特に今回のような高血圧新規追加薬(ヒドロクロロチアジド)の低血圧リスクは、開始直後のフォローが重要です。
ヒドロクロロチアジドと高尿酸血症の関係:サイアザイド系利尿薬は尿酸の排泄を抑制し、血清尿酸値を上昇させる副作用があります。本症例はすでに尿酸 10.1 mg/dLと高値であり、アロプリノールで管理中です。ヒドロクロロチアジド追加後は尿酸値のさらなる上昇に注意が必要で、定期的なモニタリングを処方医に依頼することも薬剤師の大切な役割です。










