50歳男性。かかりつけの内科クリニックでコレステロール値が高いと指摘され、食事療法と運動療法を行っていたが、コントロール不良のため薬物療法を開始することとなり、本日、処方1の薬剤が記載された処方箋を持って薬局を訪れた。
(処方1)
シンバスタチン錠 5 mg 1回1錠(1日1錠) 1日1回 夕食後 28日分
処方1の薬剤は本日より初めて服用する薬である。この男性が持参したお薬手帳には7日前に近所の耳鼻科で処方された以下の薬剤が記載されていた。男性によると「ずっと鼻がつまっていたので受診したら、慢性副鼻腔炎と言われ、薬をもらった。」とのことだった。
(お薬手帳の内容)
| クラリスロマイシン錠 200 mg | 1回1錠(1日1錠) | 1日1回 朝食後 28日分 |
| カルボシステイン錠 500 mg | 1回1錠(1日3錠) | 1日3回 朝昼夕食後 28日分 |
薬剤師は、処方1の薬剤とお薬手帳の薬剤との相互作用について医師に疑義照会を行った。その結果、シンバスタチン錠5 mgからフルバスタチン錠10 mgへ変更する旨の回答を得たので、処方1から処方2に変更することとなった。
(処方2)
フルバスタチン錠 10 mg 1回1錠(1日1錠) 1日1回 夕食後 28日分
また、患者より「毎日グレープフルーツジュースを飲んだり、時々市販の酸化マグネシウムという便秘薬を夕食後に飲むのですが、飲み合わせは大丈夫ですか。」との質問を受けた。
【問306】疑義照会に関する法規
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | 次回以降は照会省略・薬剤師判断で変更可 | × 薬剤師は処方箋に記載された医薬品を毎回医師へ照会する義務がある(薬剤師法第24条)。過去に疑義照会を行ったことを理由に省略することはできない。処方箋は都度確認が原則。 |
| 2 ★ | 疑問・不明点があれば疑義照会の義務あり | ◯ 薬剤師法第24条「薬剤師は、処方箋中に疑わしい点があるときは、その処方箋を交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」と規定されている。 |
| 3 ★ | 変更後に医師の署名・押印は不要 | ◯ 疑義照会により変更した内容は薬剤師が処方箋に記載すればよく、改めて医師の署名・記名押印を受ける必要はない(薬剤師法施行規則第15条の2)。 |
| 4 | 変更時の加算は存在しない | × 調剤報酬点数表において「処方箋に記載された医薬品の変更調剤」に関する加算(服薬管理指導料等)は存在する。また疑義照会による薬剤変更は処方箋への記載が必要であり、調剤管理加算等の算定要件にも関わる。 |
| 5 | 別の医師の回答で変更可 | × 疑義照会は処方箋を交付した医師本人に行う必要がある。別の医師への照会・変更は認められない。処方医が不在の場合は調剤を一時保留にするなどの対応が必要。 |
・選択肢1:「以前に照会した=次回は不要」は誤り。毎回照会が原則。
・選択肢4:「加算は存在しない」は誤り。疑義照会・薬剤変更に関連する加算は調剤報酬点数表に存在する。
・選択肢5:照会先は必ず処方医本人。同じ医療機関の別の医師への照会は不可。
【問307】フルバスタチンの服薬指導
シンバスタチンはCYP3A4で代謝される。クラリスロマイシンは強力なCYP3A4阻害薬。
→ 併用によりシンバスタチンのAUCが著増→横紋筋融解症リスクが急増(副作用増強)
→ フルバスタチン(主にCYP2C9代謝)に変更し相互作用を回避
| 選択肢 | 説明内容 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | カルボシステインのため作用が弱くなった | × カルボシステイン(去痰薬)はシンバスタチンと相互作用はない。変更理由はクラリスロマイシンとの相互作用(副作用増強)であり、「作用が弱くなる」も誤り。 |
| 2 ★ | クラリスロマイシンで副作用が出やすくなる | ◯ クラリスロマイシン(CYP3A4阻害)によりシンバスタチン(CYP3A4基質)の血中濃度が著増し、横紋筋融解症などの副作用リスクが高まる。これが変更理由として正しい説明。 |
| 3 | フルバスタチンはコレステロール排泄を促進 | × フルバスタチンはHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)であり、肝臓でのコレステロール合成を阻害する薬。排泄促進ではない。コレステロール排泄促進薬はコレスチラミン(陰イオン交換樹脂)などが該当する。 |
| 4 ★ | フルバスタチンはGFJ注意喚起なし | ◯ グレープフルーツジュース(GFJ)はCYP3A4を阻害する。シンバスタチン・アトルバスタチン・ロバスタチンなどCYP3A4代謝のスタチンはGFJで血中濃度が上昇するが、フルバスタチンはCYP2C9主代謝のためGFJとの相互作用の注意喚起はない。変更による患者メリットとして伝えられる。 |
| 5 | 酸化マグネシウムと同時服用で吸収低下 | × フルバスタチンと酸化マグネシウムの間に臨床上重要な吸収低下の相互作用はない。酸化マグネシウムとの吸収低下が問題になる薬剤はニューキノロン系抗菌薬・テトラサイクリン系・ビスホスホネート等(キレート形成)が代表的。 |
・選択肢1:「カルボシステインが原因」と誤解しやすい。2剤が同時に記載されていても、相互作用があるのはクラリスロマイシン(CYP3A4阻害)のみ。
・選択肢3:スタチン=排泄促進という誤解。スタチンは合成阻害薬。
・選択肢5:「マグネシウム=吸収低下」というキレートのイメージをスタチンに当てはめる誤り。


スタチンとCYP3A4阻害薬の組み合わせは要注意:シンバスタチン・アトルバスタチンはCYP3A4で代謝されるため、クラリスロマイシン・イトラコナゾール・シクロスポリン等のCYP3A4阻害薬との併用で横紋筋融解症リスクが急増します。お薬手帳の確認がこのような相互作用の発見につながる典型例です。
スタチン各薬の代謝酵素と相互作用リスク:シンバスタチン・アトルバスタチン・ロバスタチンはCYP3A4代謝→GFJ・マクロライド系等に注意。プラバスタチン・ロスバスタチンは代謝酵素への依存が低い→相互作用リスクが低い。フルバスタチン(CYP2C9代謝)やピタバスタチン(ほとんど代謝されない)はCYP3A4阻害薬の影響を受けにくい。
疑義照会は薬剤師の義務かつ患者保護の手段:今回の相互作用発見のように、薬剤師が処方箋とお薬手帳を照合することで重大な副作用を未然に防げます。「疑義照会が面倒」と思わず、患者さんの安全を守る大切なプロセスとして積極的に行いましょう。










