第111回
問115
理論問題|生物
解糖系の酵素A・Bのグルコース親和性と反応速度
問115 酵素Aと酵素Bは、骨格筋又は肝臓に含まれる解糖系の酵素で、グルコースからグルコース6-リン酸を生成する反応を触媒する。グルコース濃度に対する酵素Aと酵素Bの相対酵素活性は、下図のようになる。相対酵素活性は、反応初速度 V₀ を最大反応速度 Vmax で除した値である。
以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1
酵素Aは、基質であるグルコースとの親和性が酵素Bより低い。
—
2
グルコース濃度が 5 mmol/L から 10 mmol/L に増加すると、酵素Bの反応初速度は約2倍になる。
—
3
酵素Aは、グルコース-6-ホスファターゼである。
—
4
酵素Bが触媒する反応は、グルコース6-リン酸の濃度が上昇すると抑制される。
—
5
酵素Aは、主に骨格筋に含まれる。
—
正解です!
酵素A(グルコキナーゼ)はKmが高く肝臓に、酵素B(ヘキソキナーゼ)はKmが低く骨格筋に多く存在します。
不正解です。正解は 1 と 4 です。
解説でグルコキナーゼとヘキソキナーゼの違いを確認しましょう。
解説を見る
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ミカエリス・メンテン式とKmの意味
酵素反応の速度は以下のミカエリス・メンテン式で表される:
$V_0 = \dfrac{V_{\max}[S]}{K_m + [S]}$
ここで [S] は基質濃度、Km はミカエリス定数。
Km の意味:反応速度が Vmax の半分(½Vmax)になるときの基質濃度。
・Kmが小さい → 低い基質濃度で½Vmaxに達する → 基質親和性が高い
・Kmが大きい → 高い基質濃度まで飽和しない → 基質親和性が低い
酵素AとBの同定
グラフから読み取れる特徴:
酵素B:低グルコース濃度でもすぐに活性が上がる(Kmが低い=高親和性)→ ヘキソキナーゼ(Ⅰ〜Ⅲ型)(骨格筋に多い)
酵素A:高グルコース濃度まで活性が飽和しない(Kmが高い=低親和性)→ グルコキナーゼ(ヘキソキナーゼⅣ)(肝臓・膵臓β細胞に多い)
【分類の整理:ヘキソキナーゼとグルコキナーゼの関係】
ヘキソキナーゼは「ヘキソース(炭素6個の糖)にリン酸を付加する酵素の総称」であり、ヒトにはⅠ〜Ⅳの4種類が存在する。グルコキナーゼはその中のヘキソキナーゼⅣの別名。
酵素反応の速度は以下のミカエリス・メンテン式で表される:
$V_0 = \dfrac{V_{\max}[S]}{K_m + [S]}$
ここで [S] は基質濃度、Km はミカエリス定数。
Km の意味:反応速度が Vmax の半分(½Vmax)になるときの基質濃度。
・Kmが小さい → 低い基質濃度で½Vmaxに達する → 基質親和性が高い
・Kmが大きい → 高い基質濃度まで飽和しない → 基質親和性が低い
酵素AとBの同定
グラフから読み取れる特徴:
酵素B:低グルコース濃度でもすぐに活性が上がる(Kmが低い=高親和性)→ ヘキソキナーゼ(Ⅰ〜Ⅲ型)(骨格筋に多い)
酵素A:高グルコース濃度まで活性が飽和しない(Kmが高い=低親和性)→ グルコキナーゼ(ヘキソキナーゼⅣ)(肝臓・膵臓β細胞に多い)
【分類の整理:ヘキソキナーゼとグルコキナーゼの関係】
ヘキソキナーゼは「ヘキソース(炭素6個の糖)にリン酸を付加する酵素の総称」であり、ヒトにはⅠ〜Ⅳの4種類が存在する。グルコキナーゼはその中のヘキソキナーゼⅣの別名。
【各選択肢の解説】
| 選択肢 | 記述 | 判定・理由 |
|---|---|---|
| 1 ★ | 酵素Aはグルコースとの親和性が酵素Bより低い | ◯ グラフで酵素Aは高濃度まで活性が飽和しない=Kmが大きい(約10 mmol/L以上)。Kmが大きいほど基質親和性が低い。酵素B(ヘキソキナーゼ)のKmは約0.1 mmol/Lと非常に低く、親和性が高い。∴ 酵素Aの方が親和性が低い |
| 2 | 5→10 mmol/Lで酵素Bの反応初速度は約2倍になる | × グラフを読むと、酵素Bは5 mmol/L時点ですでに相対活性≒0.98(ほぼVmax)に達している。10 mmol/Lでも同様に≒Vmax。したがって5→10 mmol/Lでの反応初速度の増加はほとんどなく、2倍にはならない |
| 3 | 酵素Aはグルコース-6-ホスファターゼである | × グルコース-6-ホスファターゼはグルコース6-リン酸→グルコース+リン酸の反応を触媒する酵素(糖新生・グリコーゲン分解の最終段階)。問題文では酵素Aは「グルコース→グルコース6-リン酸を生成する反応を触媒する」とあり、これはグルコキナーゼ(ヘキソキナーゼIV)である |
| 4 ★ | 酵素Bの反応はグルコース6-リン酸の濃度上昇で抑制される | ◯ 酵素B(ヘキソキナーゼ)は生成物であるグルコース6-リン酸によってフィードバック阻害を受ける。グルコース6-リン酸が蓄積すると反応が抑制される。 一方、酵素A(グルコキナーゼ)はこのフィードバック阻害を受けない。理由は、グルコキナーゼにはグルコース6-リン酸が結合するアロステリック部位が存在しないためである。そのため、食後に血糖が上昇してグルコース6-リン酸が蓄積しても、グルコキナーゼは阻害されずにグルコースを取り込み続けることができる。これが肝臓での「グルコース濃度センサー」としての機能を支えている。 |
| 5 | 酵素Aは主に骨格筋に含まれる | × 酵素A(グルコキナーゼ)は主に肝臓・膵臓β細胞に含まれる。Kmが高いため、食後に血糖が上昇した場合にのみ活発に働き、肝臓でのグルコース取り込みを促進する「グルコースセンサー」として機能する。骨格筋に多いのは酵素B(ヘキソキナーゼ) |
【ヘキソキナーゼ vs グルコキナーゼのまとめ】
| ヘキソキナーゼ(酵素B) | グルコキナーゼ(酵素A) | |
|---|---|---|
| 主な分布 | 骨格筋・脳など | 肝臓・膵臓β細胞 |
| Km(親和性) | 低い(≒0.1 mmol/L)高親和性 | 高い(≒10 mmol/L)低親和性 |
| グルコース6-リン酸によるフィードバック阻害 | あり | なし |
| 働く場面 | 常時(低血糖時でも) | 食後(高血糖時のみ) |
⚠️ 引っかけポイント:
・選択肢2:グラフで酵素Bは5 mmol/Lの時点でほぼVmaxに達しており、そこから2倍にはならない
・選択肢3:グルコース-6-ホスファターゼは逆方向(G6P→グルコース)の反応。酵素Aはグルコキナーゼ
・選択肢5:骨格筋に多いのはヘキソキナーゼ(酵素B)。グルコキナーゼ(酵素A)は肝臓・膵臓
・選択肢2:グラフで酵素Bは5 mmol/Lの時点でほぼVmaxに達しており、そこから2倍にはならない
・選択肢3:グルコース-6-ホスファターゼは逆方向(G6P→グルコース)の反応。酵素Aはグルコキナーゼ
・選択肢5:骨格筋に多いのはヘキソキナーゼ(酵素B)。グルコキナーゼ(酵素A)は肝臓・膵臓
臨床メモ
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薬剤師 あおい
グルコキナーゼ(酵素A)は膵臓β細胞でも「グルコースセンサー」として働きます。血糖が上昇した際にグルコキナーゼが活性化し、インスリン分泌のトリガーとなります。この性質を利用した薬がグルコキナーゼ活性化薬(GKA)で、新規の2型糖尿病治療薬として研究が進んでいます。
また、グルコキナーゼの遺伝子変異はMODY2(若年発症成人型糖尿病2型)の原因となります。空腹時血糖が軽度上昇するが進行しにくく、多くの場合は食事療法のみで管理可能です。遺伝性糖尿病の鑑別に重要な知識です。










