第110回
問320-321
実践問題|法規・制度・倫理(320)・実務(321)
要支援2の一人暮らし高齢者への居宅療養管理指導と、酸化マグネシウムによる軟便への対応
問320-321(連問)共通問題文
問320-321 69歳男性。一人暮らし。隣県に息子が住んでおり、休日にこの男性の世話をしている。処方1及び2の薬剤で治療していたが、物忘れが多くなり、2ケ月前より処方3の薬剤が開始となった。服薬を忘れることもあり、息子は一人では面倒をみられないと近所の地域包括支援センターに相談し、要介護認定の申請を行い、今月要支援2の認定を受けた。主治医は、残薬が多く服薬に問題があるため、服薬支援のために薬局薬剤師の在宅訪問を考えた。この男性、息子、医師、薬剤師、介護支援専門員と相談の結果、薬剤師の月1回訪問が決まり、契約を締結し、薬剤管理指導の費用を介護保険で請求することとなった。初回訪問時の処方は以下のとおりである。
(処方1)
イミダプリル塩酸塩錠 5 mg
1回1錠(1日1錠)
タムスロシン塩酸塩口腔内崩壊錠 0.1 mg
1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 28日分
(処方2)
酸化マグネシウム錠 330 mg
1回2錠(1日6錠)
1日3回 朝昼夕食後 28日分
(処方3)
ガランタミン口腔内崩壊錠 8 mg
1回1錠(1日2錠)
ファモチジン口腔内崩壊錠 10 mg
1回1錠(1日2錠)
1日2回 朝夕食後 28日分
問320(法規・制度・倫理)
薬局薬剤師が薬剤管理指導を請求する保険の算定要件等に関する記述として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1
在宅患者訪問薬剤管理指導料で請求する。
—
2
管理指導に携わる薬剤師は、5年以上の実務経験が求められる。
—
3
保険薬局の指定を受けていれば、この管理指導に関する実施について、あらためて届出をする必要はない。
—
4
1ケ月に請求できる訪問回数に制限が設けられている。
—
5
訪問時に居宅サービスの変更につながる情報を得た場合でも、医師以外の関係者に報告する必要はない。
—
正解です!
正答:3, 4
不正解です
正答:3, 4
問321へ続く
問321(実務)
薬剤師が2回目の訪問時に患者宅にあるヘルパーの訪問記録から、薬がきちんと飲めているが、ここ1ケ月ほど軟便が続いているという情報を得た。この患者に合わせた薬剤師の対応として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1
水分摂取を控えるよう患者と息子に指導した。
—
2
酸化マグネシウムの減量を主治医に提案した。
—
3
市販の止瀉薬を購入し、服用するよう患者と息子に指導した。
—
4
ファモチジンの増量を主治医に提案した。
—
5
ガランタミンの増量を主治医に提案した。
—
正解です!
正答:2
不正解です
正答:2
解説を見る(問320)
▼
本症例は今月「要支援2」の認定を受けており、問題文にも「薬剤管理指導の費用を介護保険で請求する」と明記されています。要介護・要支援認定を受けている患者への薬剤師の訪問薬剤管理指導は、医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導料」ではなく、介護保険の「居宅療養管理指導費」として算定するのが原則です。
選択肢3:健康保険法上の保険薬局の指定を受けている薬局は、介護保険法上も居宅療養管理指導の事業者として指定を受けたものとみなされる「みなし指定」の仕組みがあります。そのため、保険薬局の指定を受けていれば、介護保険法に基づく居宅療養管理指導の実施にあたり、あらためて指定の申請をする必要はありません。
選択肢4:居宅療養管理指導費は、薬局の薬剤師が行う場合、1ケ月に請求できる訪問回数の上限(原則月4回まで)が定められています。回数に制限なく請求できるわけではありません。
引っかけポイント:
選択肢1:本症例は要支援2の認定を受けており、薬剤管理指導の費用は介護保険の「居宅療養管理指導費」で請求することが問題文で明示されています。「在宅患者訪問薬剤管理指導料」は医療保険(要介護・要支援認定を受けていない患者が対象)の算定項目であり、本症例には適用されません。
選択肢2:居宅療養管理指導(薬局の薬剤師が行うもの)を実施するにあたり、薬剤師に「5年以上の実務経験」を求める法令上の規定はありません。
選択肢5:在宅訪問で得られた情報のうち、居宅サービス計画(ケアプラン)の変更につながりうる情報は、主治医だけでなく、介護支援専門員(ケアマネジャー)など多職種の関係者にも共有・報告することが求められます。「医師以外に報告する必要はない」という記述は、在宅医療における多職種連携の原則に反しており誤りです。
選択肢1:本症例は要支援2の認定を受けており、薬剤管理指導の費用は介護保険の「居宅療養管理指導費」で請求することが問題文で明示されています。「在宅患者訪問薬剤管理指導料」は医療保険(要介護・要支援認定を受けていない患者が対象)の算定項目であり、本症例には適用されません。
選択肢2:居宅療養管理指導(薬局の薬剤師が行うもの)を実施するにあたり、薬剤師に「5年以上の実務経験」を求める法令上の規定はありません。
選択肢5:在宅訪問で得られた情報のうち、居宅サービス計画(ケアプラン)の変更につながりうる情報は、主治医だけでなく、介護支援専門員(ケアマネジャー)など多職種の関係者にも共有・報告することが求められます。「医師以外に報告する必要はない」という記述は、在宅医療における多職種連携の原則に反しており誤りです。


あおい先生の臨床メモ
在宅訪問の算定区分は「要介護・要支援認定の有無」で決まります。認定を受けていれば介護保険の居宅療養管理指導費、受けていなければ医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料、という振り分けをまず押さえましょう。そのうえで「保険薬局はみなし指定で追加の指定申請は不要」「訪問回数には月あたりの上限がある」「情報はケアマネジャー等の多職種にも共有する」という3点をセットで覚えておくと、この手の問題に強くなります。
解説を見る(問321)
▼
患者は処方2として酸化マグネシウム錠330mgを1回2錠・1日3回(1日6錠=1,980mg)と、比較的高用量で服用しています。酸化マグネシウムは緩下剤(塩類下剤)であり、服薬はきちんとできているとの情報がある中で軟便が1ケ月ほど続いているという状況は、酸化マグネシウムの効きすぎ(過剰な緩下作用)を疑うべき典型的なパターンです。
選択肢2:軟便の原因として酸化マグネシウムの緩下作用が強く出ている可能性が高いため、薬剤師が独断で中止・減量するのではなく、主治医に減量を提案することが適切な対応です。薬剤師は処方変更の実行権限を持たないため、疑義照会・処方提案という形で医師に伝える必要があります。
引っかけポイント:
選択肢1:水分摂取の制限は、軟便の直接的な対処にならないばかりか、高齢の一人暮らし患者では脱水のリスクを高めるおそれがあり、不適切な指導です。
選択肢3:市販の止瀉薬を自己判断で追加することは、軟便の根本原因(酸化マグネシウムの効きすぎ)に対処せず、症状を薬でさらに覆い隠すことになり、多剤併用のリスクも高めるため不適切です。まずは原因薬剤の見直しを医師に相談すべきです。
選択肢4:ファモチジン(H2受容体拮抗薬)は軟便の原因となる薬剤ではなく、増量しても軟便の改善にはつながりません。
選択肢5:ガランタミン(コリンエステラーゼ阻害薬)はむしろ消化器症状(下痢等)を副作用として起こしうる薬剤であり、増量は軟便を悪化させる方向に働くため、症状に逆行する不適切な提案です。
選択肢1:水分摂取の制限は、軟便の直接的な対処にならないばかりか、高齢の一人暮らし患者では脱水のリスクを高めるおそれがあり、不適切な指導です。
選択肢3:市販の止瀉薬を自己判断で追加することは、軟便の根本原因(酸化マグネシウムの効きすぎ)に対処せず、症状を薬でさらに覆い隠すことになり、多剤併用のリスクも高めるため不適切です。まずは原因薬剤の見直しを医師に相談すべきです。
選択肢4:ファモチジン(H2受容体拮抗薬)は軟便の原因となる薬剤ではなく、増量しても軟便の改善にはつながりません。
選択肢5:ガランタミン(コリンエステラーゼ阻害薬)はむしろ消化器症状(下痢等)を副作用として起こしうる薬剤であり、増量は軟便を悪化させる方向に働くため、症状に逆行する不適切な提案です。


あおい先生の臨床メモ
在宅訪問では、ヘルパーや家族から得られる「普段の様子」の情報がとても貴重です。「薬はきちんと飲めているのに軟便が続く」という情報からは、緩下剤の効きすぎをまず疑うのが基本的な考え方です。酸化マグネシウムは腎機能低下患者では高マグネシウム血症のリスクもあるため、軟便が続く場合は減量提案とあわせて、血清マグネシウム値のフォローも意識しておくとよいでしょう。










