第111回
問167-168
理論問題|病態・薬物治療/薬理
DIC(播種性血管内凝固症候群)の治療と敗血症治療薬の薬理
【症例】65歳男性。悪性リンパ腫に対する化学療法施施3日目に38.7℃の発熱と悪寒を認め、血液検査では白好中球数が400/μLに低下していたため、発熱性好中球減少症と診断された。広域抗菌薬による治療が開始されたが発熱は持続し、新たに行った血液検査では血小板数が6×10⁴/μLと急激な低下が認められたため、播種性血管内凝固症候群(DIC)と診断された。
問167(病態・薬物治療)
この患者へ投与する薬物として適切なのはどれか。2つ選べ。
1
アンチトロンビン ガンマ
—
2
ワルファリン
—
3
ヘパリン
—
4
ペグフィルグラスチム
—
5
アスピリン
—
正解です!
DICの治療薬選択を正確に把握できています。
不正解です。正解は 1 と 3 です。
解説でDICの病態と治療を確認しましょう。
問168(薬理)
敗血症の治療に用いられる薬物の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1
ピペラシリンは、ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害し、細菌の葉酸合成を抑制する。
—
2
セフトリアキソンは、ペプチドグリカン前駆体のペンタペプチド末端のD-アラニル-D-アラニンに結合し、細菌の細胞壁合成を抑制する。
—
3
ゲンタマイシンは、細菌のリボソーム30Sサブユニットに結合し、細菌のタンパク合成を抑制する。
—
4
メロペネムは、ペニシリン結合タンパク質に結合し、細菌の細胞壁合成を抑制する。
—
5
タゾバクタムは、DNAジャイレースを阻害し、細菌のDNA複製を抑制する。
—
正解です!
抗菌薬の作用機序を正確に把握できています。
不正解です。正解は 3 と 4 です。
解説で各抗菌薬の標的と機序を確認しましょう。
解説を見る(問167・168)
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【問167】DICの治療薬選択
DICの病態と治療
DICでは全身の微小血管内で過剰な凝固活性化が起き、微小血栓の多発と凝固因子・血小板の消耗により出血傾向が同時に生じる。
・アンチトロンビン(AT)ガンマ:AT活性低下がDICの病態中心。AT製剤(ガンマ型)の補充が標準治療
・ヘパリン(低分子ヘパリン含む):トロンビン・Xa因子阻害→過剰凝固を抑制。感染症性DICに使用
・ワルファリン:経口薬で作用発現が遅い→急性DICには不適
・ペグフィルグラスチム:G-CSF製剤→好中球増加(発熱性好中球減少症への対応だが、DIC自体への治療ではない)
・アスピリン:抗血小板薬→DIC治療の適応なし(血小板がすでに消耗している)
DICでは全身の微小血管内で過剰な凝固活性化が起き、微小血栓の多発と凝固因子・血小板の消耗により出血傾向が同時に生じる。
・アンチトロンビン(AT)ガンマ:AT活性低下がDICの病態中心。AT製剤(ガンマ型)の補充が標準治療
・ヘパリン(低分子ヘパリン含む):トロンビン・Xa因子阻害→過剰凝固を抑制。感染症性DICに使用
・ワルファリン:経口薬で作用発現が遅い→急性DICには不適
・ペグフィルグラスチム:G-CSF製剤→好中球増加(発熱性好中球減少症への対応だが、DIC自体への治療ではない)
・アスピリン:抗血小板薬→DIC治療の適応なし(血小板がすでに消耗している)
| 選択肢 | 薬物 | 判定・理由 |
|---|---|---|
| 1 ★ | アンチトロンビン ガンマ | ◯ DICではアンチトロンビン(AT)活性が低下する。AT製剤(ガンマ型)の補充はDICの標準治療であり、感染症性DICでは特に有効。トロンビン・Xa因子を阻害して過剰凝固を抑制する |
| 2 | ワルファリン | × ワルファリンはビタミンK依存性凝固因子の生成を阻害する経口抗凝固薬だが、作用発現に数日かかるため急性期DICには不適。また DIC患者はすでに凝固因子が消耗しており出血リスクが高く、さらなる凝固因子産生阻害は危険 |
| 3 ★ | ヘパリン | ◯ ヘパリンはアンチトロンビンを介してトロンビン・Xa因子を速やかに阻害し、DICの過剰凝固を抑制する。感染症性DIC(本症例の病態)においてはアンチトロンビン補充と組み合わせて使用される。即効性がある |
| 4 | ペグフィルグラスチム | × ペグフィルグラスチムはG-CSF製剤で好中球減少症の予防・治療に用いるが、DICの凝固異常を治療する薬ではない。本症例では発熱性好中球減少症が先行しているが、DIC治療の選択肢としては不適切 |
| 5 | アスピリン | × アスピリンは抗血小板薬だが、DICでは血小板が消耗して血小板減少が生じている。さらなる血小板機能抑制は出血リスクを増大させるため不適切 |
【問168】敗血症治療に用いられる抗菌薬の作用機序
| 選択肢 | 薬物・記述 | 判定・理由 |
|---|---|---|
| 1 | ピペラシリン:ジヒドロ葉酸還元酵素阻害→葉酸合成抑制 | × ピペラシリンは広域スペクトルペニシリン系抗菌薬。ペニシリン結合タンパク質(PBP)に結合してペプチドグリカン合成を阻害し細胞壁合成を抑制する。ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害するのはトリメトプリム(ST合剤の成分) |
| 2 | セフトリアキソン:D-Ala-D-AlaへのPGN前駆体結合→細胞壁合成抑制 | × セフトリアキソンはセファロスポリン系抗菌薬でPBP(ペニシリン結合タンパク質)に共有結合して細胞壁合成を阻害する。D-Ala-D-Alaに結合するのはバンコマイシン(グリコペプチド系抗菌薬)の機序 |
| 3 ★ | ゲンタマイシン:リボソーム30Sサブユニット結合→タンパク合成抑制 | ◯ ゲンタマイシンはアミノグリコシド系抗菌薬で、細菌のリボソーム30Sサブユニットに結合してmRNAの誤読を誘導し、タンパク合成を阻害する。殺菌的かつ濃度依存性 |
| 4 ★ | メロペネム:PBPに結合→細胞壁合成抑制 | ◯ メロペネムはカルバペネム系抗菌薬で、ペニシリン結合タンパク質(PBP)に共有結合してペプチドグリカン架橋形成を阻害し細胞壁合成を抑制する。広域スペクトルで重症感染症・敗血症の第一選択薬の一つ |
| 5 | タゾバクタム:DNAジャイレース阻害→DNA複製抑制 | × タゾバクタムはβラクタマーゼ阻害薬で、ピペラシリンとの合剤(ピペラシリン・タゾバクタム)として使用される。βラクタマーゼを不可逆的に阻害してピペラシリンの分解を防ぐ。DNAジャイレース阻害はキノロン系抗菌薬(シプロフロキサシン等)の機序 |
⚠️ 引っかけポイント(問168・選択肢順):
・選択肢1:ピペラシリンは「ジヒドロ葉酸還元酵素阻害」ではなくPBP結合による細胞壁合成阻害
・選択肢2:D-Ala-D-Alaへの結合はバンコマイシン。セフトリアキソンはPBPへ結合
・選択肢5:タゾバクタムは「DNAジャイレース阻害」ではなくβラクタマーゼ阻害薬
・選択肢1:ピペラシリンは「ジヒドロ葉酸還元酵素阻害」ではなくPBP結合による細胞壁合成阻害
・選択肢2:D-Ala-D-Alaへの結合はバンコマイシン。セフトリアキソンはPBPへ結合
・選択肢5:タゾバクタムは「DNAジャイレース阻害」ではなくβラクタマーゼ阻害薬
臨床メモ
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薬剤師 あおい
発熱性好中球減少症は化学療法後の重篤な合併症で、迅速な広域抗菌薬の投与が必要です。ピペラシリン・タゾバクタムやカルバペネム(メロペネム等)が第一選択として使用されます。薬剤師は抗菌薬の適正使用(AMS)の観点から血中濃度モニタリング(TDM)や投与量の提案に関わります。
ゲンタマイシン等アミノグリコシド系は腎毒性・聴器毒性があるため、TDMによるピーク値・トラフ値の管理が必須です。腎機能に応じた投与量調整は薬剤師が積極的に介入すべき領域です。










