第111回
問169
理論問題|薬理
抗悪性腫瘍薬の作用機序
問169 抗悪性腫瘍薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1
メルカプトプリンは、チオイノシン酸に代謝され、イノシン酸からアデニル酸及びグアニル酸への生成を阻害する。
—
2
イリノテカンは、生体内でSN-38に代謝された後、DNAポリメラーゼを選択的に阻害する。
—
3
ゲムシタビンは、DNAをアルキル化し、がん細胞のS期移行性を阻害する。
—
4
リュープロレリンは、持続的刺激により下垂体GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)受容体のダウンレギュレーションを起こし、精巣からのテストステロン分泌を抑制する。
—
5
ニボルマブは、がん細胞上のPD-L1に結合して、T細胞を活性化する。
—
正解です!
抗悪性腫瘍薬の作用機序を正確に把握できています。
不正解です。正解は 1 と 4 です。
解説で各薬物の分類と作用機序を確認しましょう。
解説を見る
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抗悪性腫瘍薬の分類と機序
・代謝拮抗薬:メルカプトプリン(プリン代謝阻害)、ゲムシタビン(ヌクレオシド類似体→DNA合成阻害)
・植物アルカロイド(トポイソメラーゼ阻害):イリノテカン(活性代謝物SN-38がトポイソメラーゼⅠを阻害)
・ホルモン療法薬:リュープロレリン(GnRHアゴニスト→下垂体受容体ダウンレギュレーション→テストステロン低下)
・免疫チェックポイント阻害薬:ニボルマブ(抗PD-1抗体→T細胞活性化)
・代謝拮抗薬:メルカプトプリン(プリン代謝阻害)、ゲムシタビン(ヌクレオシド類似体→DNA合成阻害)
・植物アルカロイド(トポイソメラーゼ阻害):イリノテカン(活性代謝物SN-38がトポイソメラーゼⅠを阻害)
・ホルモン療法薬:リュープロレリン(GnRHアゴニスト→下垂体受容体ダウンレギュレーション→テストステロン低下)
・免疫チェックポイント阻害薬:ニボルマブ(抗PD-1抗体→T細胞活性化)
| 選択肢 | 薬物・記述 | 判定・理由 |
|---|---|---|
| 1 ★ | メルカプトプリン:チオイノシン酸に代謝→IMP→AMP・GMP生成を阻害 | ◯ メルカプトプリン(6-MP)はプリン代謝拮抗薬。体内でチオイノシン酸(TIMP)に変換され、イノシン酸(IMP)からアデニル酸(AMP)およびグアニル酸(GMP)への変換酵素を阻害してプリンヌクレオチドの合成を抑制し、DNA合成を障害する |
| 2 | イリノテカン:SN-38に代謝→DNAポリメラーゼを選択的に阻害 | × イリノテカンはプロドラッグで、生体内でカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物SN-38に変換されるが、阻害する標的は「DNAポリメラーゼ」ではなくトポイソメラーゼⅠ。SN-38がトポイソメラーゼⅠ-DNA複合体を安定化させてDNA鎖の再結合を阻害し、DNA二重鎖切断を引き起こす |
| 3 | ゲムシタビン:DNAをアルキル化→S期移行阻害 | × ゲムシタビンはシチジン類似体(ヌクレオシド代謝拮抗薬)で、DNA合成阻害によりS期に特異的に作用するが、機序はアルキル化ではない。活性化されたゲムシタビン三リン酸がデオキシシチジン三リン酸と競合してDNAに取り込まれ、DNAポリメラーゼを阻害してDNA鎖伸長を停止させる。アルキル化薬はシクロホスファミド等 |
| 4 ★ | リュープロレリン:GnRH受容体の持続刺激→ダウンレギュレーション→テストステロン分泌抑制 | ◯ リュープロレリンはGnRH(LH-RH)アゴニスト。持続的な投与により下垂体GnRH受容体がダウンレギュレーション(減少・脱感作)し、LH・FSH分泌が低下して精巣からのテストステロン産生が抑制される(外科的去勢に相当する効果)。前立腺がんの内分泌療法に使用 |
| 5 | ニボルマブ:がん細胞上のPD-L1に結合→T細胞活性化 | × ニボルマブはT細胞上のPD-1(プログラム死受容体1)に結合する抗PD-1モノクローナル抗体。PD-1とPD-L1の結合を阻害することでT細胞の免疫抑制シグナルを遮断し、T細胞を活性化する。PD-L1に結合する抗体はアテゾリズマブ・デュルバルマブ等 |
⚠️ 引っかけポイント(選択肢順):
・選択肢2:イリノテカン(SN-38)は「DNAポリメラーゼ」ではなくトポイソメラーゼⅠを阻害
・選択肢3:ゲムシタビンはアルキル化薬ではなくヌクレオシド代謝拮抗薬(DNAへの取り込み→鎖伸長停止)
・選択肢5:ニボルマブは「PD-L1」ではなくT細胞上のPD-1に結合。PD-L1抗体はアテゾリズマブ等
・選択肢2:イリノテカン(SN-38)は「DNAポリメラーゼ」ではなくトポイソメラーゼⅠを阻害
・選択肢3:ゲムシタビンはアルキル化薬ではなくヌクレオシド代謝拮抗薬(DNAへの取り込み→鎖伸長停止)
・選択肢5:ニボルマブは「PD-L1」ではなくT細胞上のPD-1に結合。PD-L1抗体はアテゾリズマブ等
臨床メモ
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薬剤師 あおい
イリノテカンはUGT1A1遺伝子多型により活性代謝物SN-38の代謝が低下した患者(UGT1A1*6/*28ホモ接合体等)で重篤な骨髄抑制・下痢が生じやすくなります。投与前の遺伝子型確認と用量調整が推奨されており、薬剤師によるファーマコゲノミクスの活用場面の一つです。
リュープロレリン(リュープリン)開始初期はテストステロンが一過性に上昇(フレア現象)して病状悪化のリスクがあります。前立腺がん患者への投与開始時に抗アンドロゲン薬(ビカルタミド等)を併用してフレアを抑制するコンビネーション療法が標準的です。










