第111回
問171
理論問題|薬剤
静脈内投与された薬物の血液と脳の間の移行
問171 静脈内投与された薬物の血液と脳の間の移行に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、血漿と脳組織間で薬物分布は平衡状態にあるものとする。
1
血漿中の非結合形薬物は、主として脳毛細血管内皮細胞の間隙を通過して移行する。
—
2
同じ分子量の低分子薬物では、脂溶性が高いほど単純拡散による透過性が高い。
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3
単純拡散のみで移行する中枢作用薬では、血漿中非結合形濃度と脳内非結合形濃度はほぼ等しい。
—
4
P-糖タンパク質の基質となる薬物では、血漿中非結合形濃度は脳内非結合形濃度より低い。
—
5
脳内へ能動輸送される薬物であっても、脳内非結合形濃度は血漿中非結合形濃度を超えない。
—
正解です!
血液脳関門における薬物移行の特性を正確に把握できています。
不正解です。正解は 2 と 3 です。
解説でBBBにおける薬物移行の特性を確認しましょう。
解説を見る
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血液脳関門(BBB)の特徴と薬物移行
・BBBの実体:脳毛細血管内皮細胞がタイトジャンクションで密着→傍細胞経路(細胞間隙)をほぼ遮断
・BBB通過の主経路:単純拡散(脂溶性・非イオン形・低分子)または能動輸送(取り込みトランスポーター)
・P-糖タンパク質(P-gp):排出トランスポーター→脳内から血漿側へ薬物を排出→脳内濃度が血漿中より低下
・平衡状態での単純拡散:血漿中非結合形濃度=脳内非結合形濃度(濃度勾配がなくなる)
・能動取り込みトランスポーター:脳内非結合形濃度が血漿中非結合形濃度を超えうる
・BBBの実体:脳毛細血管内皮細胞がタイトジャンクションで密着→傍細胞経路(細胞間隙)をほぼ遮断
・BBB通過の主経路:単純拡散(脂溶性・非イオン形・低分子)または能動輸送(取り込みトランスポーター)
・P-糖タンパク質(P-gp):排出トランスポーター→脳内から血漿側へ薬物を排出→脳内濃度が血漿中より低下
・平衡状態での単純拡散:血漿中非結合形濃度=脳内非結合形濃度(濃度勾配がなくなる)
・能動取り込みトランスポーター:脳内非結合形濃度が血漿中非結合形濃度を超えうる
| 選択肢 | 記述 | 判定・理由 |
|---|---|---|
| 1 | 非結合形薬物は主に脳毛細血管内皮細胞の間隙を通過して移行する | × BBBの脳毛細血管内皮細胞はタイトジャンクションで密着しており、細胞間隙(傍細胞経路)はほぼ遮断されている。非結合形薬物は主に細胞を通過(経細胞経路)する単純拡散や能動輸送で移行する |
| 2 ★ | 同分子量の低分子薬物:脂溶性が高いほど単純拡散による透過性が高い | ◯ BBBの主な通過経路は脂質二重膜を介した単純拡散。分子量が同じであれば脂溶性(logP)が高いほど脂質膜への分配が大きく、透過速度・透過量が増大する。これはBBB通過の基本原則 |
| 3 ★ | 単純拡散のみで移行する中枢作用薬:血漿中非結合形濃度≒脳内非結合形濃度 | ◯ 単純拡散は濃度勾配に従って移行し、平衡状態では両側の非結合形濃度が等しくなる。能動輸送や排出トランスポーターが関与しない場合、血漿中非結合形濃度と脳内非結合形濃度はほぼ等しい |
| 4 | P-糖タンパク質の基質:血漿中非結合形濃度<脳内非結合形濃度 | × P-糖タンパク質はBBBの排出トランスポーターで、脳内から血漿側へ薬物を能動的に排出する。したがってP-gpの基質では血漿中非結合形濃度>脳内非結合形濃度となる(逆) |
| 5 | 脳内へ能動輸送される薬物であっても脳内非結合形濃度は血漿中を超えない | × 能動取り込みトランスポーターはATPなどのエネルギーを使い濃度勾配に逆らって薬物を脳内へ輸送できる。したがって脳内へ能動輸送される薬物では脳内非結合形濃度が血漿中非結合形濃度を超えうる |
⚠️ 引っかけポイント(選択肢順):
・選択肢1:BBBは細胞間隙がタイトジャンクションで閉鎖されており傍細胞経路は使えない
・選択肢4:P-gpは排出トランスポーター→脳内濃度は血漿中より低下(高くはならない)
・選択肢5:能動取り込みならエネルギー駆動で脳内濃度が血漿中を超えうる
・選択肢1:BBBは細胞間隙がタイトジャンクションで閉鎖されており傍細胞経路は使えない
・選択肢4:P-gpは排出トランスポーター→脳内濃度は血漿中より低下(高くはならない)
・選択肢5:能動取り込みならエネルギー駆動で脳内濃度が血漿中を超えうる
臨床メモ
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薬剤師 あおい
P-糖タンパク質(P-gp)はBBBだけでなく小腸上皮・肝臓・腎臓にも発現し、多くの薬物の吸収・分布・排泄に影響します。P-gp阻害薬(シクロスポリン・イトラコナゾール等)との併用でP-gp基質薬(ジゴキシン等)の血中濃度が上昇するため、相互作用確認が重要です。
中枢神経系への移行が問題となる薬物(抗がん薬・HIV治療薬等)では、BBBのP-gpが治療の障壁となることがあります。P-gp阻害によるBBB通過促進は脳腫瘍・中枢神経感染症の治療戦略の研究対象です。










