58歳男性。身長170 cm、体重65 kg、体表面積1.75 m²。患者は5年前より高尿酸血症に対してプロベネシド錠を服用している。今回の入院では、急性リンパ性白血病の治療として、メトトレキサート・ホリナート救援療法を行うこととなった。そこで、主治医はプロベネシド錠からアロプリノール錠へ処方を変更した。
【問272】プロベネシド→アロプリノール変更の理由
MTX救援療法:大量MTX静注→24時間後からホリナートカルシウム(ロイコボリン®)でレスキュー
プロベネシド:尿酸排泄促進薬(近位尿細管でのOAT1/3を介した有機アニオン分泌を阻害→尿酸再吸収阻害)
| 選択肢 | 変更理由 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | プロベネシド→ホリナートの肝取り込み阻害 | × ホリナートカルシウム(亜葉酸)の肝取り込みにプロベネシドが影響するという機序は、本相互作用の主な理由ではない。 |
| 2 | ホリナート→プロベネシドの尿細管再吸収阻害 | × ホリナートがプロベネシドの腎排泄に影響するという機序ではない。主役はプロベネシドによるMTX排泄への影響。 |
| 3 | MTX→プロベネシドの肝代謝を阻害 | × MTXはプロベネシドの肝代謝を阻害しない。MTX自身はCYP代謝をほとんど受けない。 |
| 4 ★ | プロベネシド→MTXの尿細管分泌を阻害 | ◯ MTXは近位尿細管のOAT(有機アニオントランスポーター)を介して尿細管分泌により腎排泄される。プロベネシドも同じOATの基質であり、OATを競合的に阻害してMTXの尿細管分泌を妨げる。結果としてMTXの血中濃度が上昇し、骨髄抑制・粘膜炎・腎障害等の毒性リスクが高まる。これが変更理由。 |
| 5 | プロベネシド→MTXの尿細管再吸収を促進 | × 選択肢4と類似しているが「再吸収の促進」は誤り。プロベネシドの影響はMTXの分泌(排泄方向)の阻害であり、再吸収の促進ではない。結果として血中濃度が上昇する点は同じだが、機序が誤り。 |
・選択肢5:「再吸収促進」でも「分泌阻害」でも血中濃度が上昇するため結果は似ているが、実際の機序は尿細管分泌(排泄方向)の阻害。OATを介した競合であることを押さえる。
・プロベネシドは「尿酸の排泄を促進する薬」だが、その機序(OAT阻害)がMTXにとっては排泄阻害になるという逆説的な関係が重要。
【問273】薬剤師の提案内容
大量MTX療法の管理:① 血中濃度モニタリング、② 尿アルカリ化(MTXは酸性尿で結晶析出→腎障害)、③ 大量補液、④ ホリナートレスキュー
| 選択肢 | 提案内容 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 ★ | 投与開始48時間後のMTX血中濃度確認 | ◯ 大量MTX療法では投与後の血中濃度モニタリングが必須。一般的に投与後24時間・48時間・72時間に血中濃度を測定し、遷延(目標値より高い場合)ではホリナートの投与量・回数を増やす。48時間値は通常1 µmol/L以下が目標。本症例のeGFR 67.9 mL/minと腎機能低下傾向があり、MTX遷延リスクに注意が必要。 |
| 2 | ホリナートをMTXと同時に開始 | × ホリナートカルシウム(ロイコボリン®)は大量MTX投与終了後24時間以降に開始するのが原則。同時投与ではMTXの葉酸拮抗作用(抗腫瘍効果)を拮抗してしまい、治療効果が失われる。 |
| 3 ★ | 尿pH≧7.0維持→炭酸水素ナトリウム追加 | ◯ MTXは酸性尿(pH 5〜6)では溶解度が低下し結晶が析出→MTX誘発性腎障害のリスクがある。尿のpHを7.0以上に維持するため炭酸水素ナトリウム注射液による尿アルカリ化は大量MTX療法の標準的な支持療法。同時に大量補液(尿量3 L/日以上)も必要。 |
| 4 | MTX排泄促進→フロセミドを追加 | × フロセミド(ループ利尿薬)はMTXの腎排泄を促進しない。むしろフロセミドはOATを介してMTXの排泄と競合し、MTX血中濃度を上昇させる可能性がある(プロベネシドと同様のOAT競合)。MTX使用中のNSAIDs・利尿薬の使用には注意が必要。 |
| 5 | 発熱時にアモキシシリンを追加 | × アモキシシリン(ペニシリン系)はOATを介してMTXの腎排泄と競合し、MTX血中濃度を上昇させる恐れがある。大量MTX療法中のペニシリン系抗菌薬の使用は原則避けるべきであり、追加提案は不適切。発熱時は感染源を確認しペニシリン系を避けた抗菌薬を選択する。 |
・選択肢4:「利尿薬でMTXを排泄促進」は一見合理的に思えるが、フロセミドはOAT競合によりMTX排泄を阻害する方向に働く。
・選択肢5:「発熱=抗菌薬追加」は正しい方向性だが、アモキシシリン(ペニシリン系)はMTXとのOAT競合で毒性増強リスク。大量MTX中はペニシリン系を避ける。


大量MTX療法の管理は病棟薬剤師の重要業務の一つです。「血中濃度モニタリング・尿アルカリ化・大量補液・ホリナートレスキュー」の4点セットで管理します。MTXは腎排泄依存のため、腎機能低下(本症例eGFR 67.9)では遷延リスクが高く、より厳密なモニタリングが必要です。
MTXとOAT競合薬の注意リスト:プロベネシド・NSAIDs・ペニシリン系・フロセミド・バルプロ酸などがMTXの腎排泄をOAT競合により阻害し、MTX毒性を増強します。これらの薬剤は大量MTX療法中は原則使用を避けるか、やむを得ない場合は血中濃度を密にモニタリングします。
ホリナートレスキューのタイミング:MTX投与終了後24時間以降に開始し、血中濃度が安全域に達するまで継続します。「MTXとホリナートは同時投与しない」は絶対的なルールです。ホリナートはジヒドロ葉酸還元酵素を経由せずに葉酸代謝に入るため、MTXの抗腫瘍効果を妨げずに正常細胞を保護できます。










