9歳男児。身長136 cm、体重31 kg。1年前に咳嗽、喀痰及び呼吸困難を主訴に来院し、気管支ぜん息と診断されて治療が開始された。現在は、月に1〜2回、夜間に息苦しさとともに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった呼吸音が聞こえるとのことである。呼吸機能検査(スパイログラム)では、1秒量(FEV1)と1秒率(FEV1%)の低下がみられたが、%肺活量(%VC)は基準範囲内であった。また、血液検査ではハウスダストに対するIgE抗体が陽性であった。現在の処方は以下のとおりである。
(処方1)
アドエア100ディスカス60吸入用(注) 1個
1回1吸入 1日2回 朝就寝前 吸入
(処方2)
モンテルカストチュアブル錠 5 mg 1回1錠(1日1錠) 1日1回 就寝前 30日分
(処方3)
プロカテロール塩酸塩水和物エアゾール 5 µg 1個
発作時 1回2吸入 1日4回まで
【問296】気管支喘息の病態
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 ★ | アトピー型 | ◯ ハウスダストに対するIgE抗体が陽性=アレルゲンに対するIgE介在性の即時型アレルギー反応が関与している。これはアトピー型(外因性)気管支喘息の定義に合致する。小児喘息の多くがこのアトピー型である。 |
| 2 | 拘束性換気障害 | × FEV1・FEV1%の低下、%VCは正常。これは閉塞性換気障害のパターン。拘束性換気障害では%VCが低下しFEV1%は正常〜上昇する。喘息は気道閉塞による閉塞性換気障害。 |
| 3 ★ | 発作時に笛音聴取 | ◯ 「ヒューヒュー」「ゼーゼー」はwheeze(笛音・喘鳴)であり、狭窄した気道を空気が通過する際に生じる。聴診では呼気優位の笛音(wheezing)が聴取される。これは喘息発作の典型的な聴診所見。 |
| 4 | KL-6が高値 | × KL-6(シアル化糖鎖抗原)は間質性肺炎のマーカー。気管支喘息では上昇しない。喘息のマーカーは好酸球数・IgE・FeNO(呼気NO)など。 |
| 5 | 喀痰中の好中球増加 | × アトピー型喘息では喀痰中に好酸球が増加する。好中球増加は非アトピー型(内因性)喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)でみられる。 |
・選択肢2:閉塞性 vs 拘束性の区別。FEV1%↓+%VC正常=閉塞性。%VC↓+FEV1%正常〜↑=拘束性。
・選択肢5:喘息の喀痰は好酸球優位。好中球増加はCOPDや非アトピー型喘息。
【問297】吸入薬の服薬指導
| 選択肢 | 説明内容 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | 処方1:素早く浅く吸い込む | × アドエア ディスカスは吸入粉末剤(DPI)。粉末を肺の深部まで届けるために素早く力強く(深く)吸い込む必要がある。ゆっくり吸うと粉末が凝集したままになり肺の奥まで届かない。DPIは患者自身の吸気流速で粉をほぐす仕組みのため、吸気速度が重要。「素早く浅く」のうち「素早く」は正しいが「浅く」が誤り。 |
| 2 | 処方1:吸入後のうがいを避ける | × フルチカゾン(ICS:吸入ステロイド)を含むため、口腔内・咽頭に残存したステロイドによる口腔カンジダ症・嗄声を予防するために吸入後は必ずうがいをする。うがいを避けるのは誤り。 |
| 3 ★ | 処方2:発作を止める薬ではない | ◯ モンテルカスト(ロイコトリエン受容体拮抗薬)は長期管理薬(コントローラー)であり、発作を予防・軽減するための薬。すでに起きている発作を止める効果(レリーバー)はない。就寝前服用である点も確認。 |
| 4 ★ | 処方3:使用前によく振る | ◯ プロカテロール塩酸塩水和物エアゾールはpMDI(加圧式定量噴霧吸入器)。薬剤が均一に懸濁されるよう、使用前によく振ることが必要。振らずに使用すると適切な用量が吸入されない。 |
| 5 | 処方3:マウスピースを水洗いしない | × プロカテロールエアゾール(pMDI)のマウスピースは定期的に水洗いすることが推奨される。薬剤の残渣が詰まると噴霧量が減少するため、清潔を保つことが重要。「水洗いしない」は誤り。 |
・選択肢1:DPIは「深くゆっくり」吸入。「素早く浅く」はpMDIとも異なる誤った説明。
・選択肢2:ICS含有製剤の吸入後うがいは必須。「うがいを避ける」は真逆の指導。
・選択肢5:pMDIのマウスピースは水洗い推奨。「水洗いしない」と誤記憶しやすい。


吸入デバイスの種類と吸入方法の違い:DPI(ドライパウダー)は素早く力強く(深く)吸い込み・息止め5〜10秒。pMDI(エアゾール)は噴霧と同時にゆっくり深く吸い込み・息止め。デバイスによって手技が異なるため、患者さんごとに実際に練習してもらうことが大切です。特に小児はスペーサーの使用も検討しましょう。
コントローラーとレリーバーの区別:長期管理薬(コントローラー)は毎日継続して使う薬で、ICS・LABA・LTRA(モンテルカスト)が代表です。発作治療薬(レリーバー)はSABA(プロカテロール等)です。「発作のないときは飲まなくていい?」という患者さんの疑問には「コントローラーは毎日続けることが大切」と答えましょう。
小児喘息とハウスダスト対策:IgE陽性が確認されたアレルゲンへの環境整備(ダニ・ハウスダスト対策)は薬物療法と並ぶ重要な治療の柱です。寝具の洗濯・掃除機かけ・防ダニカバーなどを保護者に具体的にアドバイスしましょう。










