第110回
問8
理論問題|化学
最も酸性度が高いフェノール誘導体
【設問】
以下の化合物のうち、最も酸性度が高いのはどれか。1つ選べ。
問8(化学)
—


1
—


2
—


3
—


4
—


5
正解です!
電子求引基(−NO₂)がフェノキシドイオンを安定化して酸性度を高めることを正しく理解しています。
不正解です。正解は 5 です。
解説で電子求引基・電子供与基と酸性度の関係を確認しましょう。
解説を見る▼
【問8】置換基効果と酸性度
フェノール(ArOH)の酸性度は、ベンゼン環上の置換基が −O⁻(フェノキシドイオン)を安定化するかどうかで決まる。
・電子求引基(EWG):共鳴・誘起効果で −O⁻ の負電荷を分散・安定化 → 酸性度 上昇
・電子供与基(EDG):負電荷を不安定化(電子密度を高める)→ 酸性度 低下
・電子求引基(EWG):共鳴・誘起効果で −O⁻ の負電荷を分散・安定化 → 酸性度 上昇
・電子供与基(EDG):負電荷を不安定化(電子密度を高める)→ 酸性度 低下
| 番号 | 化合物 | 置換基 | 効果 | 酸性度 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | シクロヘキサノール | なし(脂肪族 OH) | — | 最も低い(アルコール) |
| 2 | フェノール | なし(ベンゼン環のみ) | 共鳴安定化のみ | 中程度 |
| 3 | 4-アミノフェノール | −NH₂(電子供与基) | EDG → 酸性度低下 | 2より低い |
| 4 | 4-クロロフェノール | −Cl(弱い EWG) | 誘起効果で微増 | 2より高い |
| 5 ★ | 4-ニトロフェノール | −NO₂(強い EWG) | 共鳴+誘起で強力安定化 | 最も高い ◯ |
パラ位にニトロ基がある場合、フェノキシドの負電荷(O⁻)がベンゼン環を経由して共鳴する際、ニトロ基の電子不足な窒素(N⁺)および酸素(O⁻)の非局在化系にまで直接負電荷を逃がすことができる。つまり負電荷がベンゼン環の中だけでなく「ニトロ基の酸素原子の上」にまで分散して安定化するため、アニオンが極めて安定化し、酸性度が大幅に上昇する(pKa ≈ 7.2)。このため4-ニトロフェノールの酸性度はフェノール(pKa ≈ 10.0)よりはるかに高く、正解は 5 である。
・選択肢1(シクロヘキサノール):ベンゼン環による共鳴安定化がない脂肪族アルコールで、pKa ≈ 16 と最も酸性度が低い。
・選択肢3(4-アミノフェノール):−NH₂ は電子供与基であり、フェノキシドイオンの負電荷をさらに増大させて不安定化するため、フェノール(選択肢2)より酸性度が低くなる。
・選択肢4(4-クロロフェノール):−Cl などのハロゲンは、電気陰性度による誘起効果(電子求引:−I 効果)が、孤立電子対の共鳴効果(電子供与:+R 効果)を上回るため、トータルとして弱い電子求引基(EWG)として働く。そのためフェノール(選択肢2)より酸性度は上がるが、−NO₂ の強力なダブル効果(−I+−R)には遠く及ばない。
・選択肢3(4-アミノフェノール):−NH₂ は電子供与基であり、フェノキシドイオンの負電荷をさらに増大させて不安定化するため、フェノール(選択肢2)より酸性度が低くなる。
・選択肢4(4-クロロフェノール):−Cl などのハロゲンは、電気陰性度による誘起効果(電子求引:−I 効果)が、孤立電子対の共鳴効果(電子供与:+R 効果)を上回るため、トータルとして弱い電子求引基(EWG)として働く。そのためフェノール(選択肢2)より酸性度は上がるが、−NO₂ の強力なダブル効果(−I+−R)には遠く及ばない。
臨床メモ▼


薬剤師 あおい
置換基と酸性度の問題は「EWG(電子求引基)は酸性度を上げる、EDG(電子供与基)は酸性度を下げる」の一言で整理できます。典型的な EWG は −NO₂、−CN、−CHO、−COOH など、EDG は −NH₂、−OH、−OR、−アルキル基などです。
また、置換位置も重要です。パラ位(4位)やオルト位(2位)の置換基は共鳴効果が直接フェノキシドに伝わるため影響が大きく、メタ位(3位)は誘起効果のみで共鳴効果は届きません。−NO₂ がパラ位にあれば共鳴+誘起のダブル効果で酸性度が大幅に上がるので、最強の酸性化置換基と覚えておきましょう!
国試でよく狙われるひっかけとして「3-ニトロフェノール(メタ位)」があります。メタ位にニトロ基があっても、共鳴効果でアニオンの負電荷をニトロ基に逃がすことができません。つまり酸性の強さは「4-ニトロ(パラ体)> 3-ニトロ(メタ体)」になります!置換基の種類だけでなく「置換している位置」までしっかり見る癖をつけておきましょう!










