【第111回薬剤師国家試験】問106 レニンによるタンパク質Aの切断部位 解説

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第111回 問106
第111回 問106
理論問題|化学
レニンによるタンパク質Aの切断部位
問106 アスパラギン酸プロテアーゼであるレニンは、基質タンパク質 A をペプチド B に加水分解する。レニン阻害薬アリスキレンは、この遷移状態を模倣したプロテアーゼ阻害薬である。アリスキレンの中央部(ア)にあるアミノ基とヒドロキシ基は、レニンの活性中心に存在する2つのアスパラギン酸残基と相互作用する。アで示す官能基に隣接する構造(イ及びウ)は基質切断部位のアミノ酸の構造を模倣している。レニンによるタンパク質 A の切断部位はどれか。1つ選べ。
タンパク質Aのアミノ酸配列とアリスキレン構造
1
Tyr–Ile 間(矢印1の位置)
2
His–Pro 間(矢印2の位置)
3
Phe–His 間(矢印3の位置)
4
Leu–Val 間(矢印4の位置)
5
Ile–His 間(矢印5の位置)
正解です!
レニンはLeu-Val間を切断します。アリスキレンのイ(イソブチル基→Leuを模倣)とウ(イソプロピル基→Valを模倣)が手がかりです。
×
不正解です。正解は 4 です。
解説でアリスキレンの構造とアミノ酸の対応を確認しましょう。
解説を見る
アスパラギン酸プロテアーゼ阻害薬の設計原理
レニンなどのアスパラギン酸プロテアーゼは、活性中心に2つのAsp残基を持ち、ペプチド結合の加水分解を触媒する。加水分解の遷移状態では基質のC-N結合が伸び、結合中心に四面体型の中間体(ヒドロキシ基とアミノ基を持つ)が形成される。
アリスキレンはこの遷移状態を模倣した遷移状態アナログ型阻害薬であり、中央部(ア)のアミノ基とヒドロキシ基が活性中心の2つのAspと水素結合・静電相互作用する。

アスパラギン酸プロテアーゼの仲間:レニンのほか、HIVプロテアーゼ(HIV感染症治療薬の標的)やペプシン(胃液中の消化酵素)も同じ仲間。いずれも活性中心に2つのAsp残基を持つという特徴が共通している。

【切断部位の同定:イ・ウの側鎖から読み解く】

アリスキレンのアを挟む構造(イ・ウ)は、切断部位のP1・P1’アミノ酸の側鎖を模倣している。

イ(アの左隣・P1側):イソブチル基(–CH₂CH(CH₃)₂)
 → ロイシン(Leu)の側鎖と同じ構造

ウ(アの右隣・P1’側):イソプロピル基(–CH(CH₃)₂)
 → バリン(Val)の側鎖と同じ構造

∴ アリスキレンが模倣している切断部位は Leu–Val 間 → タンパク質Aの切断部位は矢印4(Leu–Val 間)

【アミノ酸の側鎖と切断部位の対応】

構造部位アリスキレンの側鎖対応するアミノ酸タンパク質A上の位置
イ(P1) イソブチル基(–CH₂CH(CH₃)₂) ロイシン(Leu) Leu(切断される側)
ウ(P1’) イソプロピル基(–CH(CH₃)₂) バリン(Val) Val(切断される側)
⚠️ 引っかけポイント:
選択肢1(Tyr–Ile間):Tyrの側鎖はヒドロキシフェニル基、Ileの側鎖は分岐アルキル基。アリスキレンのイ・ウとは一致しない
選択肢2(His–Pro間):ProはN-アルキル化されたアミノ酸であり、アスパラギン酸プロテアーゼに切断されにくい
選択肢3(Phe–His間):Hisの側鎖はイミダゾール環であり、アリスキレンのウ(イソプロピル基)とは一致しない
選択肢5(Ile–His間):同上。Hisの側鎖がウと一致しない
・イ・ウの側鎖の炭素骨格を正確にアミノ酸の側鎖と照合することが解法の鍵

【主要アミノ酸の側鎖構造】

この問題のように「側鎖の構造からアミノ酸を同定する」場面は国家試験で繰り返し出題される。主要アミノ酸の構造は確実に覚えておきたい。

主要アミノ酸の構造一覧

引用:第106回薬剤師国家試験対策 参考書(青本)[化学] p.255(薬学ゼミナール 編、薬ゼミ情報教育センター 発行)

臨床メモ
あおい
薬剤師 あおい

アリスキレン(商品名:ラジレス)は世界初の経口直接レニン阻害薬として2007年に承認された降圧薬です。レニン–アンジオテンシン系(RAS)の最上流であるレニンを直接阻害するため、ACE阻害薬やARBとは異なる作用点を持ちます。

ただし、糖尿病患者へのACE阻害薬・ARBとの併用は禁忌とされており(腎機能悪化・高カリウム血症のリスク)、使い分けに注意が必要です。「遷移状態アナログ」という薬物設計の概念はHIVプロテアーゼ阻害薬(例:サキナビル)など他の分野でも重要です。

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