第111回
問107
理論問題|化学
ASTによるアミノ基転移反応とP5Pの役割
問107 ASTはアミノ基転移反応を触媒する酵素である。活性中心のリシン残基側鎖アミノ基は、補酵素ピリドキサール 5′-リン酸(P5P)の4位のアルデヒド基と共有結合し、P5P-AST複合体(ア)を形成する。以下の図は、アによるアミノ酸 A からα-ケト酸 F への反応を示す。各反応の説明として正しいのはどれか。2つ選べ。
1
アからBへの反応は、付加脱離反応である。
—
2
CからDへの反応で、リシン残基側鎖のイの部分は塩基として作用する。
—
3
F が生成する反応において、X は過酸化水素である。
—
4
A が L-アスパラギン酸の場合、生成する F はオキサロ酢酸である。
—
5
E は、以下に示すピリドキシン 5′-リン酸である。


—
正解です!
ア→Bは付加脱離反応(シッフ塩基交換)。AがAspのときFはオキサロ酢酸です。
不正解です。正解は 1 と 4 です。
解説で反応機構を確認しましょう。
解説を見る
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アミノ基転移反応の全体像
ASTはP5P(ピリドキサール 5′-リン酸)を補酵素とし、アミノ酸のアミノ基をα-ケト酸に転移する反応を触媒する。
反応は2段階:
① アミノ酸 A → α-ケト酸 F(ピリドキサール型→ピリドキサミン型への変換)
② α-ケトグルタル酸 + ピリドキサミン型 → L-グルタミン酸 + ピリドキサール型(再生)
ASTはP5P(ピリドキサール 5′-リン酸)を補酵素とし、アミノ酸のアミノ基をα-ケト酸に転移する反応を触媒する。
反応は2段階:
① アミノ酸 A → α-ケト酸 F(ピリドキサール型→ピリドキサミン型への変換)
② α-ケトグルタル酸 + ピリドキサミン型 → L-グルタミン酸 + ピリドキサール型(再生)
【各選択肢の解説】
| 選択肢 | 記述 | 判定・理由 |
|---|---|---|
| 1 ★ | ア→Bへの反応は付加脱離反応 |
◯ アはLys側鎖のアミノ基とP5Pのアルデヒドがシッフ塩基(C=N)を形成した複合体(内部アルジミン)。 アミノ酸Aのアミノ基がこのC=Nに付加して四面体中間体を経た後、Lysのアミノ基が脱離し、新たなシッフ塩基(外部アルジミン、B)が形成される。これは付加脱離反応(求核付加→脱離)である。 |
| 2 | C→Dで、イ(Lys側鎖)は塩基として作用 |
× C→Dの反応はキノノイド中間体からアルジミンへの互変異性化(プロトン移動)であり、この段階ではLys側鎖(イ)はプロトンを供与する酸として作用する。塩基として作用するのではない。 ※ イがプロトンをCαに供与することでD(ケチミン型)が生成する。 |
| 3 | Fが生成する反応でXは過酸化水素 | × DからEとFへの反応(X)は加水分解である。水(H₂O)によってシッフ塩基(C=N)が切断され、α-ケト酸F(カルボニル化合物)とピリドキサミン型のE(P5P-アミン)が生成する。Xは水(加水分解)であり、過酸化水素ではない。 |
| 4 ★ | AがL-アスパラギン酸の場合、FはオキサロΒ酢酸 |
◯ ASTの生理的基質はL-アスパラギン酸(Asp)とα-ケトグルタル酸。 L-Aspのアミノ基が転移されると、残った炭素骨格はオキサロ酢酸(oxaloacetate)となる。 L-Asp(HOOC-CH₂-CH(NH₂)-COOH)→ F(オキサロ酢酸:HOOC-CH₂-CO-COOH) |
| 5 | EはピリドキシンΒ5′-リン酸 | × EはピリドキサールΒ型からアミノ基を受け取ったピリドキサミン 5′-リン酸(P5P-アミン型)。示されている構造式はピリドキシン(アルコール型)の5′-リン酸であり、Eとは異なる。ピリドキサミン型にはアルデヒドの代わりに–CH₂NH₂基が存在する。 |
【反応ステップの整理】
ア(内部アルジミン)+ アミノ酸A
↓ 付加脱離反応(選択肢1):AのNH₂が付加→LysのNH₂が脱離
B(外部アルジミン)
↓ プロトン移動(1,3-プロトンシフト)
C(キノノイド中間体)
↓ Lys側鎖(イ)がプロトン供与(酸として作用)(選択肢2の誤りポイント)
D(ケチミン型)
↓ 加水分解(X=H₂O)(選択肢3の誤りポイント)
E(ピリドキサミン 5′-リン酸)+ F(α-ケト酸)
AがL-Aspの場合:F=オキサロ酢酸(選択肢4)
↓ 付加脱離反応(選択肢1):AのNH₂が付加→LysのNH₂が脱離
B(外部アルジミン)
↓ プロトン移動(1,3-プロトンシフト)
C(キノノイド中間体)
↓ Lys側鎖(イ)がプロトン供与(酸として作用)(選択肢2の誤りポイント)
D(ケチミン型)
↓ 加水分解(X=H₂O)(選択肢3の誤りポイント)
E(ピリドキサミン 5′-リン酸)+ F(α-ケト酸)
AがL-Aspの場合:F=オキサロ酢酸(選択肢4)
⚠️ 引っかけポイント:
・選択肢2:C→DでLys(イ)は「塩基」ではなく「酸(プロトン供与体)」として作用する
・選択肢3:XはH₂O₂ではなくH₂O(加水分解)
・選択肢5:EはピリドキサミンΒ型(–CH₂NH₂)。示された構造はピリドキシン型(–CH₂OH)であり別物
・選択肢2:C→DでLys(イ)は「塩基」ではなく「酸(プロトン供与体)」として作用する
・選択肢3:XはH₂O₂ではなくH₂O(加水分解)
・選択肢5:EはピリドキサミンΒ型(–CH₂NH₂)。示された構造はピリドキシン型(–CH₂OH)であり別物
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臨床メモ
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薬剤師 あおい
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)は肝機能検査の代表的な指標です。肝細胞が障害されると細胞内のASTが血中に流出し、血清AST値が上昇します。ALTとともに肝炎・肝硬変・脂肪肝のスクリーニングに用いられます。
補酵素P5P(ビタミンB₆の活性型)はアミノ基転移酵素全般に必須です。ビタミンB₆欠乏では多くのアミノ酸代謝が障害されます。また、結核治療薬イソニアジドはP5Pと競合してビタミンB₆欠乏を引き起こすことがあるため、末梢神経障害の予防にビタミンB₆(ピリドキシン)を併用投与することがあります。
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