第111回
問117
理論問題|生物
病原細菌の性質
問117 病原細菌の性質に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1
黄色ブドウ球菌は、食塩耐性を有しており、マンニット(マンニトール)食塩寒天培地で増殖できる。
—
2
肺炎球菌(肺炎レンサ球菌)の莢膜は、病原因子であり、貪食細胞に対する抵抗性に寄与している。
—
3
ディフィシル菌は、芽胞形成能を持たず、食中毒の原因になりやすい。
—
4
破傷風菌は、破傷風毒素を産生し、弛緩性麻痺を引き起こす。
—
5
ボツリヌス菌は、ボツリヌス毒素を産生し、強直性痙れんを引き起こす。
—
正解です!
黄色ブドウ球菌は食塩耐性、肺炎球菌の莢膜は貪食回避の病原因子です。
不正解です。正解は 1 と 2 です。
解説で各細菌の特徴を確認しましょう。
解説を見る
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毒素による麻痺の種類を整理する
・弛緩性麻痺(筋肉が弛んで力が入らない):ボツリヌス毒素→アセチルコリン遊離阻害→神経筋接合部の伝達遮断
・痙性(強直性)麻痺(筋肉が硬直する):破傷風毒素→グリシン・GABAなどの抑制性神経伝達物質の遊離を阻害→脱抑制→筋肉が過剰収縮
・弛緩性麻痺(筋肉が弛んで力が入らない):ボツリヌス毒素→アセチルコリン遊離阻害→神経筋接合部の伝達遮断
・痙性(強直性)麻痺(筋肉が硬直する):破傷風毒素→グリシン・GABAなどの抑制性神経伝達物質の遊離を阻害→脱抑制→筋肉が過剰収縮
【各選択肢の解説】
| 選択肢 | 細菌・記述 | 判定・理由 |
|---|---|---|
| 1 ★ | 黄色ブドウ球菌 食塩耐性 マンニット食塩寒天培地 |
◯ 黄色ブドウ球菌(S. aureus)は食塩耐性(7.5〜10% NaCl)を持つ。マンニット食塩寒天培地は食塩でほかの細菌を抑制しつつ、黄色ブドウ球菌を選択的に増殖させる選択培地。マンニトールを分解して黄色ブドウ球菌のコロニー周囲が黄変する。食中毒・MRSA感染症の原因菌として重要 |
| 2 ★ | 肺炎球菌 莢膜が病原因子 貪食抵抗性 |
◯ 肺炎球菌(S. pneumoniae)の莢膜(多糖体)は最重要の病原因子。莢膜が補体成分のオプソニン化を妨げ、マクロファージ・好中球による貪食を回避させる。莢膜を持たない株は病原性が低い。莢膜の型(血清型)の違いにより肺炎球菌ワクチン(PCV・PPSV)の対象血清型が定められている |
| 3 | ディフィシル菌 芽胞形成能 食中毒 |
× 誤りが2点ある。 ①ディフィシル菌(C. difficile)は芽胞形成能を持つ。芽胞はアルコール消毒に抵抗性があり、医療環境での感染制御が困難な原因となる。 ②ディフィシル菌は食中毒ではなく抗菌薬関連下痢症・偽膜性腸炎の原因菌。抗菌薬による腸内細菌叢の乱れで増殖し、毒素A(腸管毒素)・毒素Bを産生する |
| 4 | 破傷風菌 破傷風毒素 弛緩性麻痺 |
× 麻痺の種類が誤り。破傷風毒素(テタノスパスミン)は脊髄・脳幹の抑制性介在ニューロンに作用し、グリシン・GABAの遊離を阻害する。その結果、運動ニューロンが脱抑制されて持続的に興奮し、痙性(強直性)麻痺・開口障害(牙関緊急)・後弓反張を引き起こす。「弛緩性麻痺」ではなく「痙性麻痺」が正しい |
| 5 | ボツリヌス菌 ボツリヌス毒素 強直性痙れん |
× 症状の種類が誤り。ボツリヌス毒素は神経筋接合部でアセチルコリンの遊離を阻害し、弛緩性麻痺を引き起こす(筋肉が弛んで動かない)。「強直性痙れん(筋肉が硬直する)」は破傷風の症状であり、ボツリヌスとは逆 |
【破傷風 vs ボツリヌスの覚え方】
破傷風菌(テタノスパスミン)
抑制性神経伝達物質(グリシン・GABA)の遊離を阻害
→ 抑制がなくなる(脱抑制)→ 筋肉が興奮し続ける → 痙性(強直性)麻痺
例:開口障害・後弓反張・笑筋攣縮(risus sardonicus)
ボツリヌス菌(ボツリヌストキシン)
運動神経末端でのアセチルコリン(ACh)遊離を阻害
→ 神経から筋肉へ命令が届かない → 弛緩性麻痺
例:眼瞼下垂・嚥下困難・呼吸筋麻痺
※ ボツリヌストキシンの「弛緩性麻痺」を逆手に取ったのが美容・医療応用(ボトックス注射)
抑制性神経伝達物質(グリシン・GABA)の遊離を阻害
→ 抑制がなくなる(脱抑制)→ 筋肉が興奮し続ける → 痙性(強直性)麻痺
例:開口障害・後弓反張・笑筋攣縮(risus sardonicus)
ボツリヌス菌(ボツリヌストキシン)
運動神経末端でのアセチルコリン(ACh)遊離を阻害
→ 神経から筋肉へ命令が届かない → 弛緩性麻痺
例:眼瞼下垂・嚥下困難・呼吸筋麻痺
※ ボツリヌストキシンの「弛緩性麻痺」を逆手に取ったのが美容・医療応用(ボトックス注射)
⚠️ 引っかけポイント:
・選択肢3:ディフィシル菌は「芽胞あり」「食中毒ではなく抗菌薬関連下痢症」の2点が誤り
・選択肢4・5:破傷風=痙性麻痺、ボツリヌス=弛緩性麻痺。毒素の作用機序を結びつけて覚える
・選択肢3:ディフィシル菌は「芽胞あり」「食中毒ではなく抗菌薬関連下痢症」の2点が誤り
・選択肢4・5:破傷風=痙性麻痺、ボツリヌス=弛緩性麻痺。毒素の作用機序を結びつけて覚える
🔗 関連記事:ディフィシル菌・破傷風菌・ボツリヌス菌など芽胞形成菌をゴロで一気に整理!
→ もう迷わない!芽胞形成菌のゴロ教えます!(ゴロで覚える薬学)|薬剤師の気まぐれノート
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臨床メモ
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薬剤師 あおい
MRSAの原因である黄色ブドウ球菌(選択肢1)は、β-ラクタム系抗菌薬に耐性を持つため、バンコマイシン・テイコプラニン・リネゾリドなどが使用されます。院内感染対策での手指消毒・接触予防策が重要です。
ディフィシル菌感染症(CDI、選択肢3)の治療にはメトロニダゾール・バンコマイシン(経口)・フィダキソマイシンが用いられます。CDIではアルコール消毒が芽胞に無効なため、手洗い(石鹸と流水)が基本です。ボツリヌス毒素(選択肢5)は美容医療(ボトックス注射)・眼瞼痙攣・痙性麻痺の治療にも応用されています。
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