【第111回薬剤師国家試験】問302-303 褥瘡の病期評価と病期別の薬物治療選択 解説

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第111回 問302-303
第111回 問302-303
実践問題|実務(302)・病態・薬物治療(303)
褥瘡の病期評価と病期別の薬物治療選択
【症例】問302-303 共通

76歳女性。身長153 cm、体重42 kg。在宅医療を受けていたが転倒し、大腿骨近位部骨折のため整形外科にて入院加療となった。後日、仙骨部に褥瘡が認められたため、褥瘡対策チームが介入することとなった。褥瘡患部は、感染の可能性のある黄色壊死組織を形成していたため(黄色期)、処方1の薬剤で治療が開始された。

(処方1)

カデックス軟膏 0.9%(注) 100 g 1回適量 1日2回 朝夕 患部に塗布

注:カデキソマー150、マクロゴール400、マクロゴール4,000を基剤とし、1 g中にヨウ素9 mgを含有する。

2週間後、褥瘡対策チームの回診の際、医師が褥瘡の診察を行い、処方1の薬剤から処方2の薬剤へ変更となった。

(処方2)

トレチノイントコフェリル軟膏 0.25% 30 g 1回適量 1日2回 朝夕 患部に塗布

問302(実務)
この患者への薬物治療について、整形外科病棟の症例検討カンファレンスで研修医や医療スタッフ向けに発表して欲しいと褥瘡対策チームの薬剤師へ依頼があった。薬剤師の発表内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1
処方1の基剤は水溶性であるため、滲出液が多い患部に適していること。
2
処方1の薬剤の効果が不十分であったため、処方2の薬剤へ変更となったこと。
3
処方1及び2の薬剤の塗布後は、安静のために一定の体位を保ってもらうこと。
4
処方2の薬剤は使用部位の疼痛、出血をみることがあるため、壊死組織除去後は使用を中止すること。
5
処方2の薬剤には細胞増殖促進作用があり、肉芽形成を促すために使用していること。
正解です!
褥瘡治療薬の特性を正確に理解しています。
×
不正解です。正解は 1 と 5 です。
解説で各薬剤の特性を確認しましょう。
問303(病態・薬物治療)
処方2を開始した10日後、褥瘡は滲出液の少ない白色期に移行した。この時期の病態及び治療について適切なのはどれか。2つ選べ。
1
皮膚の上皮化が進み、肉芽組織が収縮している。
2
症状が改善すると、黒色期に移行する。
3
薬物治療として、積極的に壊死組織を除去する薬剤を使用する。
4
軟膏の基剤として、乳剤性基剤又は油脂性基剤が適している。
5
外科的手術として、デブリードマンが推奨される。
正解です!
褥瘡の病期と治療を正確に理解しています。
×
不正解です。正解は 1 と 4 です。
解説で白色期の病態と治療を確認しましょう。
解説を見る

【褥瘡の病期】黒色期→黄色期→赤色期→白色期

黒色期:黒色壊死組織→壊死組織除去(デブリードマン)
黄色期:感染性黄色壊死・膿性滲出液→殺菌・壊死組織除去(カデックス等)
赤色期:肉芽形成・滲出液やや多い→肉芽促進(トレチノイントコフェリル等)
白色期:上皮化進行・滲出液少ない→上皮化促進・保湿(油脂性・乳剤性基剤)

【問302】薬剤師の発表内容

選択肢発表内容判定・解説
1 ★処方1は水溶性基剤→滲出液多い患部に適切◯ カデックス軟膏の基剤はカデキソマー+マクロゴール(PEG)であり水溶性基剤。水溶性基剤は滲出液を吸収して患部を乾燥・清潔に保つ。感染性黄色壊死・滲出液の多い黄色期に適している。
2処方1が不十分→処方2へ変更× 処方1(カデックス軟膏)は黄色期に使用し、2週間後に処方2(トレチノイントコフェリル)へ変更されたのは病期が進行したため(赤色期への移行)。効果不十分だったからではない。
3塗布後は一定の体位を保つ× 仙骨部の褥瘡において同一体位を保つことは圧迫の持続につながり褥瘡を悪化させる。体位変換(2時間ごとなど)が褥瘡予防・治療の基本。
4処方2:壊死組織除去後は中止× トレチノイントコフェリルは肉芽形成促進薬であり、壊死組織除去後の赤色期〜白色期に使用する薬剤。壊死組織除去後に中止するのは誤り。使用中に疼痛・出血がみられることはあるが、継続使用が原則。
5 ★処方2:細胞増殖促進→肉芽形成促進◯ トレチノイントコフェリル(ビタミンA誘導体)は細胞増殖促進作用を持ち、線維芽細胞の増殖・肉芽形成を促進する。赤色期(肉芽形成期)に使用される薬剤であり、病期に応じた適切な選択である。
⚠️ 引っかけポイント(問302):
選択肢2:薬剤変更の理由は「効果不十分」ではなく「病期の進行(黄色期→赤色期)」。病期に合わせた薬剤選択が褥瘡治療の基本。
選択肢3:「安静のため同一体位」は褥瘡を悪化させる。定期的な体位変換が必須。

【問303】白色期の病態と治療

選択肢記述判定・解説
1 ★上皮化進行・肉芽組織収縮◯ 白色期は褥瘡治癒の最終段階。新生上皮が周囲から中心に向かって進行し(上皮化)、肉芽組織が収縮・線維化して瘢痕形成へと向かう。「滲出液の少ない白色期」という記述と一致する。
2改善すると黒色期に移行× 褥瘡の病期は黒色期→黄色期→赤色期→白色期の順に進行し、改善・治癒へ向かう。白色期の次は治癒(瘢痕化)であり、黒色期に戻ることはない。逆方向への記述は誤り。
3壊死組織除去薬を積極的に使用× 壊死組織除去(デブリードマン・壊死組織除去薬)は黒色期・黄色期の治療。白色期には壊死組織はなく、上皮化促進・保湿が目的となる。
4 ★乳剤性基剤または油脂性基剤が適切◯ 白色期は滲出液が少なく上皮化が進む段階。水溶性基剤(マクロゴール等)は吸水性が強く皮膚を乾燥させすぎるため不適。乳剤性基剤(O/W型・W/O型)または油脂性基剤(白色ワセリン等)が皮膚を保湿・保護して上皮化を促進する。
5デブリードマンが推奨される× デブリードマン(外科的壊死組織除去術)は黒色期・黄色期に行う処置。白色期に壊死組織はなく、デブリードマンは適応外。むしろ新生上皮を傷つけるリスクがある。
⚠️ 引っかけポイント(問303):
選択肢2:病期の方向性を逆に記述。白色期から黒色期に戻ることはない。
選択肢3・5:壊死組織除去・デブリードマンは黒色期・黄色期の処置。病期ごとの治療を対応させて覚える。
臨床メモ
あおい
薬剤師 あおい

褥瘡の病期と薬剤選択の対応表:国試頻出の組み合わせです。黒色期→カデックス軟膏・ユーパスタ・スルファジアジン銀(感染合併時)。赤色期→トレチノイントコフェリル・アルプロスタジルアルファデクス。白色期→ジメチルイソプロピルアズレン軟膏・ヒルドイドなど油脂性・乳剤性基剤。基剤の種類と適応病期をセットで覚えましょう。

「体位変換」は薬剤師も伝える:褥瘡対策では薬剤だけでなく、体位変換(2時間ごと)・栄養管理・皮膚の清潔保持が三本柱です。薬剤師が処方せんを受けたときに「体位変換はできていますか?」と声をかけることが、チーム医療における薬剤師の大切な役割の一つです。

カデックス軟膏のヨウ素と甲状腺への影響:カデックス軟膏にはヨウ素が含まれており、広範囲・長期使用では甲状腺機能への影響(ヨウ素過剰摂取)が懸念されます。甲状腺疾患のある患者への使用には注意が必要です。

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