第110回
問202-203
実践問題|物理・化学・生物(202)・実務(203)
下垂体機能不全児のホルモン補充療法
問202-203(連問)共通問題文
問202-203 4歳男児。体重14 kg。事故で低酸素脳症となり大学病院に入院していたが退院し、在宅で人工呼吸器と胃瘻及び導尿による管理を行っている。脳下垂体機能不全に対しては3ヶ月に1回、大学病院の内分泌・代謝内科を外来受診することになっており、初回受診時に、以下の薬剤が処方された。
(処方1)
ヒドロコルチゾン錠10 mg
1回0.25錠(1日0.75錠)
1日3回 朝昼夕食前 90日分
(処方2)
デスモプレシン酢酸塩水和物口腔内崩壊錠60 μg
1回1錠(1日2錠)
1日2回 10時、22時 90日分
(処方3)
レボチロキシンナトリウム水和物散0.01%
1回0.35 g(1日0.35 g)
1日1回 朝食前 90日分
問202(物理・化学・生物)
処方2の薬剤は製造過程で水溶液を凍結乾燥して調製される。水の状態図中に記された状態変化のうち、凍結乾燥の過程における水の状態変化を正しく表しているのはどれか。1つ選べ。ただし、状態変化はAからBへ矢印の方向に起こるものとする。
1
—
2
—
3
—
4
—
5
—
正解です!
解説で凍結乾燥の原理を確認しましょう。
不正解です。正解は 3 です。
解説で凍結乾燥の原理を確認しましょう。
問203
問203(実務)
初回受診後の患者家族に対して薬局薬剤師が行う服薬指導として正しいのはどれか。2つ選べ。
1
発熱時には処方1の薬剤を増量する必要があるので、医師の指示を受けてください。
—
2
幼児は成人よりも体重あたりの必要水分量が多いので、1日合計2L以上の水を薬剤と共に与えてください。
—
3
決められた服用時刻を遵守すれば、食事の時間はいつでもかまいません。
—
4
痙れんや嘔吐は薬剤による副作用の可能性があるので、医師に連絡してください。
—
5
大豆製品は処方3の薬剤の効果を強めるので、摂らせないようにしてください。
—
正解です!
解説で本症例の服薬指導のポイントを確認しましょう。
不正解です。正解は 1、4 です。
解説で本症例の服薬指導のポイントを確認しましょう。
問202の解説を見る▼
凍結乾燥(フリーズドライ)は、水溶液を凍結させた後、減圧下で氷を昇華させて水分を除去する方法です。水の状態図(圧力-温度図)上で、この2段階の過程がどのように表されるかを正確に理解することがポイントです。
凍結乾燥の2段階のプロセス
① 凍結(フリージング):液体の水溶液を、比較的高い圧力(大気圧付近)のまま温度を下げて凍結させる。状態図上では、液相から固相へ、温度軸に沿って左方向(水平方向)に移動する
② 一次乾燥(昇華):凍結した状態(固相)のまま、圧力を下げていき、氷を液体を経ずに直接気体へ昇華させる。状態図上では、固相から気相へ、圧力軸に沿って下方向(垂直方向)に移動する(三重点より低い圧力にする必要がある)
① 凍結(フリージング):液体の水溶液を、比較的高い圧力(大気圧付近)のまま温度を下げて凍結させる。状態図上では、液相から固相へ、温度軸に沿って左方向(水平方向)に移動する
② 一次乾燥(昇華):凍結した状態(固相)のまま、圧力を下げていき、氷を液体を経ずに直接気体へ昇華させる。状態図上では、固相から気相へ、圧力軸に沿って下方向(垂直方向)に移動する(三重点より低い圧力にする必要がある)
正しい状態変化の経路
A(液相、高圧・高温付近)→ 温度を下げて水平方向に左へ移動し、融解曲線を越えて固相に入る(凍結)
→ その後、圧力を下げて垂直方向に下へ移動し、昇華曲線を越えて気相に入る(昇華・乾燥)→ B(気相、低圧・低温)
この「水平移動(凍結)→垂直移動(昇華)」という順序と方向を正しく示しているのが選択肢3である
A(液相、高圧・高温付近)→ 温度を下げて水平方向に左へ移動し、融解曲線を越えて固相に入る(凍結)
→ その後、圧力を下げて垂直方向に下へ移動し、昇華曲線を越えて気相に入る(昇華・乾燥)→ B(気相、低圧・低温)
この「水平移動(凍結)→垂直移動(昇華)」という順序と方向を正しく示しているのが選択肢3である
引っかけポイント:
・選択肢1:水平方向の移動のみで、圧力を下げる過程(昇華)が描かれていない、または方向が単一で凍結乾燥の2段階プロセスを表せていない
・選択肢2:先に圧力を下げてから温度を下げる順序になっており、「凍結してから昇華させる」という正しい順序(先に温度を下げて凍結、その後圧力を下げて昇華)と逆になっている
・選択肢4・5:矢印の向きが気相から固相へ、あるいは圧力が上昇する方向になっているなど、乾燥(水分除去)とは逆の状態変化を表してしまっている
・選択肢1:水平方向の移動のみで、圧力を下げる過程(昇華)が描かれていない、または方向が単一で凍結乾燥の2段階プロセスを表せていない
・選択肢2:先に圧力を下げてから温度を下げる順序になっており、「凍結してから昇華させる」という正しい順序(先に温度を下げて凍結、その後圧力を下げて昇華)と逆になっている
・選択肢4・5:矢印の向きが気相から固相へ、あるいは圧力が上昇する方向になっているなど、乾燥(水分除去)とは逆の状態変化を表してしまっている
問203の解説を見る▼
本症例は下垂体機能不全に対し、副腎皮質ホルモン(ヒドロコルチゾン)、抗利尿ホルモン(デスモプレシン)、甲状腺ホルモン(レボチロキシン)の3剤による補充療法を行っています。それぞれのホルモン補充療法に特有の注意点(シックデイ対応、水分管理、服薬タイミング等)を正確に押さえることがポイントです。
各薬剤に関する服薬指導のポイント
・ヒドロコルチゾン(副腎皮質ホルモン補充):発熱等のストレス時には、身体が必要とする副腎皮質ホルモン量が増加するため、通常量では不足し急性副腎不全(副腎クリーゼ)を起こす危険がある。発熱時は医師の指示のもと増量(シックデイルール)が必要となる
・デスモプレシン(抗利尿ホルモン補充):強力な水分再吸収促進作用を持つため、過剰な水分摂取は希釈性低ナトリウム血症(水中毒)を来す危険がある。「体重あたりの必要水分量が多いから多めに水を与える」という対応はデスモプレシン服用中の患者には禁忌に近い危険な指導である
・レボチロキシン(甲状腺ホルモン補充):吸収率が食事の影響を受けやすいため、空腹時(食前)に服用する必要があり、食事のタイミングはいつでもよいわけではない
・低ナトリウム血症(デスモプレシンの水分過剰による副作用)の症状として、痙れん・嘔吐・意識障害等が現れることがあり、これらの症状がみられた場合は速やかに医師へ連絡する必要がある
・大豆製品(イソフラボン等)は、レボチロキシンの消化管吸収を阻害(低下)させることが知られており、「効果を強める」という記述は逆である
・ヒドロコルチゾン(副腎皮質ホルモン補充):発熱等のストレス時には、身体が必要とする副腎皮質ホルモン量が増加するため、通常量では不足し急性副腎不全(副腎クリーゼ)を起こす危険がある。発熱時は医師の指示のもと増量(シックデイルール)が必要となる
・デスモプレシン(抗利尿ホルモン補充):強力な水分再吸収促進作用を持つため、過剰な水分摂取は希釈性低ナトリウム血症(水中毒)を来す危険がある。「体重あたりの必要水分量が多いから多めに水を与える」という対応はデスモプレシン服用中の患者には禁忌に近い危険な指導である
・レボチロキシン(甲状腺ホルモン補充):吸収率が食事の影響を受けやすいため、空腹時(食前)に服用する必要があり、食事のタイミングはいつでもよいわけではない
・低ナトリウム血症(デスモプレシンの水分過剰による副作用)の症状として、痙れん・嘔吐・意識障害等が現れることがあり、これらの症状がみられた場合は速やかに医師へ連絡する必要がある
・大豆製品(イソフラボン等)は、レボチロキシンの消化管吸収を阻害(低下)させることが知られており、「効果を強める」という記述は逆である
各選択肢の解説
◯ 1 発熱時にはストレスに対応するため副腎皮質ホルモンの必要量が増加し、医師の指示のもと処方1(ヒドロコルチゾン)の増量が必要になることがあるという説明は正しい
× 2 デスモプレシン服用中に大量の水分を摂取させると、水中毒(低ナトリウム血症)を来す危険があり、「1日2L以上の水を与える」という指導は誤りかつ危険である
× 3 レボチロキシンは空腹時(食前)の服用が必要であり、食事のタイミングを問わないという説明は誤り
◯ 4 痙れんや嘔吐は、デスモプレシンによる水中毒(低ナトリウム血症)等の副作用症状である可能性があり、医師への連絡を促す説明は正しい
× 5 大豆製品はレボチロキシンの吸収を阻害する(効果を弱める)ものであり、「効果を強める」という記述は誤り
◯ 1 発熱時にはストレスに対応するため副腎皮質ホルモンの必要量が増加し、医師の指示のもと処方1(ヒドロコルチゾン)の増量が必要になることがあるという説明は正しい
× 2 デスモプレシン服用中に大量の水分を摂取させると、水中毒(低ナトリウム血症)を来す危険があり、「1日2L以上の水を与える」という指導は誤りかつ危険である
× 3 レボチロキシンは空腹時(食前)の服用が必要であり、食事のタイミングを問わないという説明は誤り
◯ 4 痙れんや嘔吐は、デスモプレシンによる水中毒(低ナトリウム血症)等の副作用症状である可能性があり、医師への連絡を促す説明は正しい
× 5 大豆製品はレボチロキシンの吸収を阻害する(効果を弱める)ものであり、「効果を強める」という記述は誤り
引っかけポイント:
・選択肢2:「幼児は体重あたりの水分必要量が多い」という一般的な小児科の知識は事実だが、本症例はデスモプレシン(水分貯留を強力に促進するホルモン)を服用中であり、一般論をそのまま適用すると水中毒という重大な副作用を誘発する危険がある。個々の薬剤の特性を踏まえた指導が必要である点を問うている
・選択肢5:大豆製品とレボチロキシンの相互作用の「方向」(弱める)が真逆の「強める」にすり替えられている
・選択肢2:「幼児は体重あたりの水分必要量が多い」という一般的な小児科の知識は事実だが、本症例はデスモプレシン(水分貯留を強力に促進するホルモン)を服用中であり、一般論をそのまま適用すると水中毒という重大な副作用を誘発する危険がある。個々の薬剤の特性を踏まえた指導が必要である点を問うている
・選択肢5:大豆製品とレボチロキシンの相互作用の「方向」(弱める)が真逆の「強める」にすり替えられている
臨床メモ▼


薬剤師 あおい
複数のホルモン補充療法を行っている患者さんでは、それぞれの薬剤の副作用が「他の薬剤の一般的な注意点」と矛盾するように見えることがあります。本症例のように、水分摂取に関する一般的な小児指導とデスモプレシンの薬理作用が相反する場合は、必ず個々の薬剤の特性を優先して指導することが重要です。
在宅で複数のホルモン補充療法を受けている小児患者さんの家族には、シックデイ(発熱・嘔吐・食欲不振等)の際の対応をあらかじめ具体的に説明し、自己判断で薬を増減せず必ず医療機関に連絡するよう伝えることが、急性副腎不全などの重篤な事態を防ぐために非常に重要です。










