【第111回薬剤師国家試験】問274-275 2型糖尿病患者の脱水・乳酸アシドーシスとメトホルミンの薬物動態 解説

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第111回 問274-275
第111回 問274-275
実践問題|実務(274)・薬剤(275)
2型糖尿病患者の脱水・乳酸アシドーシスとメトホルミンの薬物動態
【症例】問274-275 共通

85歳男性。身長165 cm、体重82 kg、BMI 30.1。2型糖尿病の既往があり、ダパグリフロジン・メトホルミン・リシノプリルで治療中。3日前より下痢と食欲不振が続き脱水状態となり救急搬送された。

症例・処方・身体所見・検査値
問274(実務)
来院時、この患者に生じている症状として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1
代謝性アルカローシス
2
糖尿病ケトアシドーシス
3
乳酸アシドーシス
4
呼吸性アルカローシス
5
遠位型尿細管性アシドーシス
正解です!
検査値から乳酸アシドーシスを正確に判断できています。
×
不正解です。正解は 3 です。
解説で血液ガス・乳酸値からの酸塩基異常の判断を確認しましょう。
問275(薬剤)
薬剤師は処方1又は処方2の薬剤の副作用を疑い、注意事項等情報(添付文書)等から薬物動態に関する以下の情報を得た。この患者に生じている症状の原因と考えられる薬物とその理由として、最も可能性が高い組合せはどれか。1つ選べ。
薬物 理由
1ダパグリフロジン消化管吸収量の増大
2メトホルミン消化管吸収量の増大
3ダパグリフロジン肝代謝の低下
4メトホルミン肝代謝の低下
5ダパグリフロジン腎排泄の低下
6メトホルミン腎排泄の低下
正解です!
メトホルミンの腎排泄依存と蓄積による乳酸アシドーシスを正確に理解しています。
×
不正解です。正解は 6 です。
解説でメトホルミンの薬物動態と腎機能低下による蓄積を確認しましょう。
解説を見る

【問274】来院時の酸塩基異常の判断

血液ガス・検査値からの判断
動脈血pH 7.25(<7.35)→ アシドーシス
PaCO₂ 18 mmHg(正常35〜45)→ 低下(代償性過換気)
HCO₃⁻ 10 mEq/L(正常22〜26)→ 著明低下
代謝性アシドーシス(HCO₃⁻低下が一次性)
乳酸 203 mg/dL(正常3.7〜16.3)→ 著明高値・ケトン体(−)
乳酸アシドーシスと判断
選択肢判定・解説
1 代謝性アルカローシス× pH上昇+HCO₃⁻上昇が特徴。本症例はpH 7.25(低下)・HCO₃⁻ 10(低下)で逆。
2 糖尿病ケトアシドーシス× ケトン体(−)で否定。DKAは血中ケトン体上昇が必須。
3 ★ 乳酸アシドーシス◯ 代謝性アシドーシス+乳酸203 mg/dL(正常上限の約14倍)+ケトン体陰性。メトホルミン関連乳酸アシドーシス(MALA)の典型。
4 呼吸性アルカローシス× PaCO₂低下は代謝性アシドーシスへの代償(クスマウル呼吸)であり一次性ではない。pHが低下している点でも否定。
5 遠位型尿細管性アシドーシス× 高塩素性代謝性アシドーシスで乳酸上昇を伴わない。
⚠️ 引っかけポイント(問274):
選択肢2(DKA):2型糖尿病+アシドーシスで反射的に選びがちだが、ケトン体(−)で否定。
選択肢4:PaCO₂低下を「呼吸性アルカローシス」と誤解するひっかけ。pHが低下しているので代償反応。

【問275】原因薬物と蓄積機序

薬物動態パラメータの読み方
・メトホルミン:尿中未変化体排泄率52%→腎排泄依存性が高い
・ダパグリフロジン:尿中未変化体排泄率1%→腎排泄にほぼ依存しない
本症例:Cr 2.10 mg/dL(脱水による急性腎機能低下)→メトホルミン蓄積→乳酸産生↑→MALA
番号薬物 ─ 理由判定・解説
1ダパグリフロジン ─ 消化管吸収量の増大× 脱水でBAが増大する根拠なし。乳酸アシドーシスを引き起こす機序もない。
2メトホルミン ─ 消化管吸収量の増大× 下痢・脱水では消化管吸収の増大は起きない。
3ダパグリフロジン ─ 肝代謝の低下× AST・ALT正常で肝機能障害なし。尿中未変化体1%で腎機能低下の影響も軽微。
4メトホルミン ─ 肝代謝の低下× メトホルミンは肝代謝をほとんど受けない。肝代謝低下は蓄積の理由にならない。
5ダパグリフロジン ─ 腎排泄の低下× 尿中未変化体わずか1%。腎機能低下でも蓄積はほぼ生じない。
6 ★メトホルミン ─ 腎排泄の低下◯ 尿中未変化体52%の腎排泄依存薬。脱水・腎機能低下でメトホルミン蓄積→ミトコンドリア電子伝達系阻害→嫌気的解糖↑→乳酸産生↑→MALA。
⚠️ 引っかけポイント(問275):
選択肢5(ダパグリフロジン+腎排泄の低下):腎機能低下は事実だが、尿中未変化体1%のため蓄積しない。数値をしっかり読む。
・メトホルミンの乳酸アシドーシスリスク因子:腎機能低下・脱水・高齢・造影剤使用前後。
メトホルミン関連乳酸アシドーシス(MALA)リスク因子
eGFR 30未満:禁忌 / eGFR 45未満:減量検討 / 脱水・低血圧・ショック / 造影剤使用前後 / 高齢者・肝機能障害
臨床メモ
あおい
薬剤師 あおい

メトホルミンと乳酸アシドーシスは薬局・病院薬剤師が必ず押さえておくべき重大な副作用です。「下痢・嘔吐・脱水を訴えている糖尿病患者がメトホルミンを服用していたら、すぐに服薬中断を指導してください」とお伝えすることが大切です。シックデイルール(発熱・嘔吐・下痢・食事不可時にメトホルミンを休薬)の指導も処方時に行いましょう。

eGFRと糖尿病治療薬の使い分け:メトホルミンはeGFR 30〜45では慎重投与(減量・最大750 mg/日)、30未満では禁忌。造影剤検査前後は一時的に休薬します。SGLT2阻害薬も腎機能低下(eGFR 45未満)では血糖降下効果が減弱するため、eGFRに応じた薬剤選択が重要です。

血液ガス読み方の基本:①pH→アシドーシスかアルカローシスか、②HCO₃⁻→代謝性成分、③PaCO₂→呼吸性成分。「pH低下+HCO₃⁻低下+PaCO₂低下(代償)」は代謝性アシドーシスのパターン。乳酸値の確認でDKAと鑑別します。

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