45歳女性。20歳頃より2〜3ヶ月に1回程度、閃輝暗点を伴う頭痛があり、近隣のクリニックで片頭痛と診断されていた。治療には、処方された鎮痛剤を用いていたが、数年前から症状が安定し、医師から一般用医薬品での対処で問題ないと言われた。その後、一般用医薬品で症状をコントロールできていたが、半年前から1ヶ月に1〜2回の頻度で頭痛が生じ、使用回数が増えてきた。日常生活にも支障をきたすようになり、痛みの予兆があると不安で気分が落ち込むようになったため、再受診した。女性は以下の処方箋を持って薬局を訪れた。
| (処方) |
ラスミジタンコハク酸塩錠100 mg 1回1錠 頭痛時 14回分 |
【問329】ラスミジタン(5-HT₁F受容体作動薬)の服薬指導
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | 予兆時の服用で発作を予防できる | × ラスミジタンは片頭痛の急性期治療薬であり、発作が起きてから(または前兆〜頭痛開始時に)服用して痛みを緩和するための薬剤。発作そのものを未然に防ぐ予防薬ではない。「予兆時の服用=予防効果」という説明は、急性期治療薬と予防薬の役割を混同させている。 |
| 2 | 痛みが治まらない場合は追加で1錠服用 | × ラスミジタンは1回の頭痛発作に対し1日1回の使用が基本であり、効果不十分な場合に自己判断で追加服用 |
| 3 ★ | 服用後のめまい・眠気に注意 | ◯ ラスミジタンは中枢神経系の5-HT₁F受容体に作用するため、めまい・浮動性めまい・傾眠(眠気)が高頻度に報告される代表的な副作用。服用後は自動車の運転等、危険を伴う機械の操作を避けるよう指導する必要がある。 |
| 4 | 血管収縮作用による胸痛・圧迫感 | × 「血管収縮作用による胸の痛みや圧迫感(胸部症状)」はトリプタン系薬剤に特徴的な副作用(5-HT₁B受容体を介した冠動脈攣縮等)であり、ラスミジタンは血管収縮作用を持たない5-HT₁F選択的作動薬であるため、この機序による胸部症状は本来説明すべきではない。トリプタンとジタンの作用機序の違いを混同させる典型的な誤り選択肢。 |
| 5 ★ | 使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛) | ◯ 片頭痛の急性期治療薬を頻回・過剰に使用すると、かえって頭痛の頻度・重症度が増す「薬物乱用頭痛(MOH:Medication Overuse Headache)」を引き起こすことが知られている。本症例は、まさに使用回数が増加し頭痛の頻度・程度が悪化している経過であり、この説明は患者の状況にも合致する重要な情報提供である。 |
・選択肢1:「予兆時に飲む=予防」という発想は、急性期治療薬(症状が出てから対処)と予防薬(発作頻度自体を減らす)の区別を曖昧にする誤り。
・選択肢4:トリプタン系の代表的副作用(血管収縮による胸部症状)を、作用機序の異なるラスミジタン(ジタン系)に当てはめている点に注意。「片頭痛薬=血管収縮作用」という一括りの理解は危険。
・選択肢5:本症例の経過(使用回数増加→頭痛頻度増加)自体が薬物乱用頭痛を疑わせる典型的なパターンであり、症例文と選択肢が連動した良問構成になっている。


トリプタンとジタン(ラスミジタン)の違い:トリプタン系は5-HT₁B/₁D受容体に作用し、血管収縮作用により頭蓋内血管の拡張を抑えますが、冠動脈の血管収縮(胸痛・圧迫感)のリスクから、心血管疾患のある患者には禁忌・慎重投与となります。一方、ラスミジタンは5-HT₁F受容体に選択的に作用し血管収縮作用がないため、心血管リスクのある患者にも使用しやすいのが特徴です。その代わり、中枢移行性が高く、めまい・眠気が問題となります。
薬物乱用頭痛(MOH)のサイン:「以前は月1〜2回程度の頭痛で済んでいたのに、最近は使用頻度・回数が増えている」という経過は、急性期治療薬の使用過多による頭痛の悪化を疑うべき典型的なパターンです。本症例の「半年前から1ヶ月に1〜2回→使用回数が増えてきた」「痛みの予兆で不安・気分が落ち込む」という記述は、まさにMOHを背景とした受診と考えられます。
めまい・眠気のある薬の服薬指導:ラスミジタンは添付文書上、服用後一定時間は自動車の運転等を避けるよう注意喚起されています。日常生活で車を使う患者には、「頭痛が起きたタイミングで服用し、その後は運転を控える」という生活上の計画も含めて説明することが望まれます。










