第111回
問104
理論問題|化学
ラセミ体を与える反応(立体化学)
問104 化合物 A を原料とし、得られる主生成物がラセミ体となる反応はどれか。2つ選べ。
化合物 A
1
—
2
—
3
—
4
—
5
—
正解です!
ヒドロホウ素化(syn付加)と臭素付加(anti付加)はいずれもラセミ体を与えます。
不正解です。正解は 2 と 4 です。
解説で各反応の立体化学を確認しましょう。
解説を見る
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ラセミ体になる条件
化合物Aは1,2-ジメチルシクロペンテン(二重結合の両面が等価)。二重結合への付加反応で新たな不斉炭素が生じる場合、表面(上面)・裏面(下面)どちらから攻撃されるかによって生成物の立体が決まる。
・syn付加(同面付加):二重結合の同じ面に2つの原子が付加。1,2-ジメチルシクロペンテンのように両面が等価な場合、上面syn・下面synのどちらも等確率で起こり → ラセミ体になることも、メソ体になることもある(生成物の対称性による)
・anti付加(逆面付加):二重結合の反対面に2つの原子が付加。上面・下面への攻撃が等確率 → ラセミ体
化合物Aは1,2-ジメチルシクロペンテン(二重結合の両面が等価)。二重結合への付加反応で新たな不斉炭素が生じる場合、表面(上面)・裏面(下面)どちらから攻撃されるかによって生成物の立体が決まる。
・syn付加(同面付加):二重結合の同じ面に2つの原子が付加。1,2-ジメチルシクロペンテンのように両面が等価な場合、上面syn・下面synのどちらも等確率で起こり → ラセミ体になることも、メソ体になることもある(生成物の対称性による)
・anti付加(逆面付加):二重結合の反対面に2つの原子が付加。上面・下面への攻撃が等確率 → ラセミ体
【各選択肢の解説】
| 選択肢 | 試薬・反応 | 付加様式 | 生成物の立体 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Pd-C, H₂(接触水素化) | syn付加 | 両面synが等確率 → メソ体(1,2-ジメチル基がtrans関係のみ)。対称性により光学不活性な単一化合物 | × ラセミ体にならない(メソ体) |
| 2 ★ | ①BH₃ ②H₂O₂, NaOH, H₂O(ヒドロホウ素化) | syn付加(anti-Markovnikov) | 両面からのsyn付加が等確率で起こり、生じる2つの生成物は鏡像関係(エナンチオマー) → ラセミ体 | ◯ |
| 3 | mCPBA(m-クロロ過安息香酸、エポキシ化) | syn付加(酸素が同面から付加) | syn付加によりメチル基がcis配置のエポキシドが生成する。この分子には酸素原子を通る対称面が存在するため、メソ体となり光学不活性。ラセミ体にはならない | × ラセミ体にならない(メソ体) |
| 4 ★ | Br₂(臭素付加) | anti付加(臭素の環状ブロモニウムイオン経由) | anti付加によりメチル基と臭素がtrans配置になる。上面・下面どちらへの攻撃も等確率で起こり、(1R,2R)体と(1S,2S)体の鏡像体が1:1で生成 → ラセミ体 | ◯ |
| 5 | ①OsO₄ ②NaHSO₃, H₂O(ジヒドロキシル化) | syn付加(cisジオール生成) | 両面からのsyn付加が等確率 → メソ体(cisジオールで対称性があるため光学不活性) | × ラセミ体にならない(メソ体) |
【syn付加でメソ体 vs ラセミ体になる理由】
syn付加(H₂、OsO₄、mCPBA):2つの原子・基が同じ面から付加
→ 上面からsyn付加:C1がR・C2がS(またはその逆)
→ 下面からsyn付加:C1がS・C2がR(またはその逆)
→ 生成物に対称面が存在する場合 → メソ体(光学不活性)
(H₂・OsO₄・mCPBAはすべて1,2-ジメチルシクロペンテンに対してメソ体を与える)
ヒドロホウ素化(BH₃):syn付加だが、BとHが非対称に異なる位置に付加
→ C1にOH・C2にH(または逆)という非対称な付加が起こる
→ 生成物に対称面がなく鏡像体の関係 → ラセミ体
anti付加(Br₂):2つのBrが反対面から付加
→ メチル基とBrがtrans関係((1R,2R)体と(1S,2S)体)
→ 上面・下面への攻撃が等確率 → ラセミ体
→ 上面からsyn付加:C1がR・C2がS(またはその逆)
→ 下面からsyn付加:C1がS・C2がR(またはその逆)
→ 生成物に対称面が存在する場合 → メソ体(光学不活性)
(H₂・OsO₄・mCPBAはすべて1,2-ジメチルシクロペンテンに対してメソ体を与える)
ヒドロホウ素化(BH₃):syn付加だが、BとHが非対称に異なる位置に付加
→ C1にOH・C2にH(または逆)という非対称な付加が起こる
→ 生成物に対称面がなく鏡像体の関係 → ラセミ体
anti付加(Br₂):2つのBrが反対面から付加
→ メチル基とBrがtrans関係((1R,2R)体と(1S,2S)体)
→ 上面・下面への攻撃が等確率 → ラセミ体
⚠️ 引っかけポイント:
・選択肢1・3・5:syn付加でも「メソ体」になる場合がある。生成物に対称面があればラセミ体にならない
・選択肢2:ヒドロホウ素化はsyn付加だが、付加位置の非対称性によりラセミ体になる
・選択肢4:anti付加のBr₂は(1R,2R)体と(1S,2S)体のラセミ体を与える
・選択肢1・3・5:syn付加でも「メソ体」になる場合がある。生成物に対称面があればラセミ体にならない
・選択肢2:ヒドロホウ素化はsyn付加だが、付加位置の非対称性によりラセミ体になる
・選択肢4:anti付加のBr₂は(1R,2R)体と(1S,2S)体のラセミ体を与える
この問題の「本質」
この問題は、単に反応名を覚えているかではなく、「立体的な形を想像して、最後に対称性があるかを確認できるか」を試している。
・シス体(syn付加)が生成:分子が左右対称になりやすい → メソ体の可能性大
・トランス体(anti付加)が生成:分子が左右非対称になりやすい → ラセミ体の可能性大
※ ただしヒドロホウ素化のように、syn付加でも付加位置が非対称なためラセミ体になる例外もある。最終的には「生成物に対称面があるか」を確認することが重要。
この問題は、単に反応名を覚えているかではなく、「立体的な形を想像して、最後に対称性があるかを確認できるか」を試している。
・シス体(syn付加)が生成:分子が左右対称になりやすい → メソ体の可能性大
・トランス体(anti付加)が生成:分子が左右非対称になりやすい → ラセミ体の可能性大
※ ただしヒドロホウ素化のように、syn付加でも付加位置が非対称なためラセミ体になる例外もある。最終的には「生成物に対称面があるか」を確認することが重要。
臨床メモ
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薬剤師 あおい
ラセミ体か光学活性体かは医薬品開発で非常に重要です。たとえば、サリドマイドはR体が催眠鎮静作用を、S体が催奇形性を持つことが知られており、ラセミ体として販売されていたことが悲劇の一因でした。
現在は「キラルスイッチ」戦略として、ラセミ体から光学活性な単一エナンチオマー医薬品に切り替える開発が進んでいます。OsO₄によるsyn付加(シャープレス不斉ジヒドロキシル化)など、立体選択的な反応は光学活性医薬品の合成に欠かせない技術です。










