第111回
問232-233
実践問題|実務(232)・衛生(233)
ノロウイルス嘔吐物処理と食中毒の種類・特徴
【症例】問232-233 共通
66歳女性。12月下旬、忘年会で海産物を食べた後、嘔吐と下痢で内科を受診し、ノロウイルス感染症と診断された。この女性は、医療機関で点滴を受けた後、処方箋を薬局に持参した。トイレを借りたいと申し出があり、薬局スタッフが案内する途中で嘔吐した。その後、トイレの便器でも嘔吐したため、薬局スタッフが吐瀉物の処理を行うことになった。
問232(実務)
薬剤師がこの薬局スタッフに指示した内容として適切なのはどれか。2つ選べ。
1
マスク、ゴム手袋、エプロン及びフェイスシールドを着用する。
—
2
吐瀉物の処理は、感染拡大防止のため窓を閉め切って行う。
—
3
患者が触れた手すりやドアノブの消毒は、ベンザルコニウム塩化物液で行う。
—
4
洋式便座の消毒は、グルタラール液で2度拭きする。
—
5
吐瀉物が付着した白衣の消毒は、0.1%次亜塩素酸ナトリウム液への浸漬により行う。
—
正解です!
正答:1・5
不正解です
正答:1・5
問233(衛生)
その後、軽快したこの女性が感謝の気持ちを伝えたいと再び来局したときに、食中毒の種類や相違について質問した。薬剤師が説明した内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1
ノロウイルス食中毒は、生のカキ(牡蠣)などの喫食で発生することがあるが、食前加熱(85℃、5分間)することで防ぐことができる。
—
2
嘔吐型セレウス菌食中毒は、チャーハンなどの喫食で発生することがあるが、調理後室温で長時間放置しても再び加熱(85℃、5分間)することで防ぐことができる。
—
3
ウェルシュ菌食中毒は、カレーなどの喫食で発生することがあるが、調理後室温で長時間放置しても再び加温(45℃、5分間)することで防ぐことができる。
—
4
カンピロバクター食中毒は、生肉などの喫食で発生することがあるが、食品を冷凍(−20℃、48時間)することで防ぐことができる。
—
5
アニサキスによる食中毒は、鮮魚などの喫食で発生することがあるが、食品を冷凍(−20℃、48時間)することで防ぐことができる。
—
正解です!
正答:1・5
不正解です
正答:1・5
解説を見る(問232・233)
▼
■ 問232:ノロウイルス嘔吐物の処理手順
💡 ノロウイルスは飛沫感染・接触感染・糞口感染する。嘔吐物処理時はPPE(マスク・手袋・エプロン・フェイスシールド)を必ず着用。換気は窓を開けて行う(閉め切りは厳禁)。消毒は次亜塩素酸ナトリウムが有効(ノロウイルスはアルコール・逆性石けんに抵抗性あり)。便座等の環境面は0.02%、吐瀉物付着物は0.1%を使用。
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
| 1 | ◯ | 嘔吐物処理時のPPEとして、マスク・ゴム手袋・エプロン・フェイスシールドの着用は必須。ノロウイルスは少量(10〜100個)で感染するため飛沫からの防御が重要。 |
| 2 | × | 嘔吐物処理時は窓を開けて換気しながら行う。閉め切ると嘔吐物から放出されるウイルスが浮遊し、空間全体に拡散するリスクがある。 |
| 3 | × | ベンザルコニウム塩化物(逆性石けん)はノロウイルスに無効。ノロウイルスはエンベロープを持たないため、アルコールや逆性石けんへの抵抗性が高い。次亜塩素酸ナトリウムを使用する。 |
| 4 | × | グルタラールは高水準消毒薬であり内視鏡等の器具消毒に使用するが、皮膚・粘膜への毒性が強く環境表面(便座等)への使用は適切でない。便座は0.02%次亜塩素酸ナトリウムで拭き取る。 |
| 5 | ◯ | 吐瀉物が付着した衣類・布類は0.1%次亜塩素酸ナトリウム液に30分以上浸漬して消毒する。その後十分すすぎ、他の洗濯物と分けて洗濯する。 |
⚠️ 引っかけポイント(問232):
・選択肢2(窓を閉め切る):換気は必須。閉め切りはむしろウイルス拡散リスクを高める。
・選択肢3(ベンザルコニウム塩化物):ノロウイルスはアルコール・逆性石けんに抵抗性あり。次亜塩素酸ナトリウムが正解。
・選択肢4(グルタラール):高水準消毒薬で器具用。環境面への使用は不適切。便座は0.02%次亜塩素酸ナトリウムで拭く。
・選択肢2(窓を閉め切る):換気は必須。閉め切りはむしろウイルス拡散リスクを高める。
・選択肢3(ベンザルコニウム塩化物):ノロウイルスはアルコール・逆性石けんに抵抗性あり。次亜塩素酸ナトリウムが正解。
・選択肢4(グルタラール):高水準消毒薬で器具用。環境面への使用は不適切。便座は0.02%次亜塩素酸ナトリウムで拭く。
■ 問233:食中毒の種類と予防法
💡 セレウス菌(嘔吐型)の毒素は耐熱性のため加熱で不活化できない。ウェルシュ菌の芽胞は100℃でも死滅せず、45℃前後が至適増殖温度のため「45℃に加温」は逆効果。カンピロバクターは冷凍では死滅しない。アニサキスは冷凍(−20℃・24時間以上)または加熱(60℃・1分以上)で死滅する。
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
| 1 | ◯ | ノロウイルスはカキ等の二枚貝に濃縮されやすい。85℃・1分以上(中心温度)の加熱で不活化できる。問題文の「85℃・5分間」は十分な条件。 |
| 2 | × | 嘔吐型セレウス菌が産生するセレウリドは耐熱性毒素(126℃・90分でも不活化されない)。調理後室温放置で毒素が産生されると、再加熱しても毒素は残存し食中毒を防げない。 |
| 3 | × | ウェルシュ菌の至適増殖温度は43〜47℃。「45℃に加温」はウェルシュ菌の増殖を促進するだけで予防にならない。正しい予防法は速やかに冷却(10℃以下)するか、75℃以上に保温すること。 |
| 4 | × | カンピロバクターは冷凍に比較的耐性があり、−20℃冷凍では完全には死滅しない。正しい予防法は十分な加熱(中心温度75℃・1分以上)と生肉との交差汚染防止。 |
| 5 | ◯ | アニサキスは魚介類の寄生虫。−20℃・24時間以上の冷凍(問題文の「−20℃・48時間」はより確実)または60℃・1分以上の加熱で死滅する。サバ・サンマ・イカ等の鮮魚に多い。 |
⚠️ 引っかけポイント(問233):
・選択肢2(セレウス菌・再加熱で防げる):嘔吐型セレウス菌の毒素(セレウリド)は耐熱性。一度産生された毒素は加熱で除去できない。
・選択肢3(ウェルシュ菌・45℃加温):45℃はウェルシュ菌の至適増殖温度。加温ではなく冷却(10℃以下)または高温保温(75℃以上)が正解。
・選択肢4(カンピロバクター・冷凍で防げる):カンピロバクターは冷凍耐性あり。加熱が有効な予防法。
・選択肢2(セレウス菌・再加熱で防げる):嘔吐型セレウス菌の毒素(セレウリド)は耐熱性。一度産生された毒素は加熱で除去できない。
・選択肢3(ウェルシュ菌・45℃加温):45℃はウェルシュ菌の至適増殖温度。加温ではなく冷却(10℃以下)または高温保温(75℃以上)が正解。
・選択肢4(カンピロバクター・冷凍で防げる):カンピロバクターは冷凍耐性あり。加熱が有効な予防法。
臨床メモ
▼


薬剤師 あおい
ノロウイルスの嘔吐物処理は薬局でも起こりうるインシデント。処理手順を整理しておきましょう。
①PPE着用:マスク・手袋・エプロン・フェイスシールド
②換気:窓を開ける(閉め切り厳禁)
③吐瀉物の除去:ペーパータオルで外側から内側に向けて静かに拭き取り、ビニール袋に密閉
④消毒:0.1%次亜塩素酸ナトリウムで拭き取り(環境面は0.02%)
⑤後処理:使用したPPEはビニール袋に密閉して廃棄、手洗い・うがい徹底
食中毒予防の消毒濃度も覚えておきましょう:
・吐瀉物・排泄物付着物:0.1%(1000 ppm)次亜塩素酸ナトリウム
・トイレの便座・ドアノブ等環境面:0.02%(200 ppm)次亜塩素酸ナトリウム










