モルモット摘出回腸標本の収縮反応について、アセチルコリン単独による濃度−反応曲線(破線)と、薬物 X 存在下でのアセチルコリンによる濃度−反応曲線(実線)を作成したところ、下図のようになった。薬物 X はどれか。1つ選べ。
ただし、アセチルコリン単独により生じる最大収縮を100%とした。また、薬物Xの単独では収縮反応が生じなかった。
【問26】濃度−反応曲線のグラフ読み取りと拮抗様式の同定
・実線(薬物X存在下)は破線(単独)と比べ、曲線が右方向へのシフトはない
・しかし最大反応(Emax)が約50%に低下している
これは非競合拮抗(非可逆的拮抗または機能的拮抗)のパターンである。競合拮抗では Emax は変わらず右方シフトのみ生じる。
| 番号 | 薬物 | 作用機序 | 曲線への影響 |
|---|---|---|---|
| 1 | ヒスタミン | H₁受容体作動薬。回腸を収縮させる。 | 単独で収縮を起こす → 条件「単独で収縮なし」に矛盾。 |
| 2 | アトロピン | ムスカリン性受容体(M受容体)の競合拮抗薬 | 競合拮抗 → Emax は変わらず右方シフト。本問グラフ(Emax低下)とは異なる。 |
| 3 | ピリドスチグミン | コリンエステラーゼ阻害薬(間接的コリン作動薬) | ACh の分解を抑制し作用を増強する → 曲線が左方シフト・増強。本問と逆。 |
| 4 ★ | パパベリン | 平滑筋直接弛緩薬。PDE阻害による cAMP 増加および細胞内 Ca²⁺ 流入抑制(Ca²⁺ 拮抗)により、受容体に関係なく平滑筋を直接弛緩させ、ACh による収縮を非競合的に抑制 | Emax 低下・右方シフトなし。本問グラフと一致。 |
| 5 | ベタネコール | ムスカリン受容体作動薬(M受容体作動薬) | 単独で回腸を収縮させる → 条件「単独で収縮なし」に矛盾。 |
アゴニスト濃度をどんどん高くしたとき、拮抗薬に打ち勝って元の最大反応まで届くかどうか(Emax が100%まで回復するか)が最大のチェックポイントである。
- 競合拮抗(アトロピンなど):同じ受容体を奪い合うため、ACh 濃度を力押しで高くすれば拮抗薬を追い出せる。→ Emax は変わらず、グラフは右方平行シフト
- 非競合拮抗(パパベリンなど):受容体ではなく細胞内シグナル伝達・収縮機構そのものをブロックするため、ACh をいくら増やしても細胞が収縮できない。→ 右方シフトせず、Emax がガクンと低下
本問のグラフは「右方シフトなし+Emax 低下」であるため、アトロピン(競合)は除外でき、平滑筋を直接弛緩させるパパベリン(非競合)が正解となる。
パパベリンはホスホジエステラーゼ(PDE)阻害による cAMP 増加作用および細胞内への Ca²⁺ 流入抑制(Ca²⁺ 拮抗作用)により、受容体に関係なく平滑筋を直接弛緩させるため、アセチルコリンによる収縮を非競合的に抑制する。したがって正解は 4(パパベリン) である。
・選択肢1(ヒスタミン)・5(ベタネコール):いずれも単独で回腸収縮を引き起こすため、「薬物X単独では収縮反応が生じなかった」という条件で除外できる。


濃度−反応曲線の変化パターンは薬理の超頻出テーマです。「右方シフト+Emax変わらず」か「Emax低下あり」かの2パターンを確実に見分けましょう。
| 拮抗様式 | 曲線の変化 | 代表薬 |
|---|---|---|
| 競合拮抗 | 右方シフト(Emax 変わらず) | アトロピン、プロプラノロール など |
| 非競合拮抗 | Emax 低下(右方シフトなし or 軽度) | パパベリン、フェノキシベンザミン など |
| 部分作動薬 | Emax 低下+右方シフト(完全作動薬との組み合わせ) | ブプレノルフィン など |
パパベリンはアヘンから単離されたイソキノリンアルカロイドですが、オピオイド作用はなく、血管・消化管・胆管などの平滑筋を直接弛緩させるのが特徴です。ムスカリン受容体を直接ブロックするわけではなく、別のルートで収縮を止めるこのような拮抗の仕方を「機能的拮抗(生理的拮抗)」と呼ぶこともあります。「パパベリン=平滑筋直接弛緩=Emaxを低下させる」という方程式を、アトロピンの右方シフトとセットで記憶の引き出しにしまっておきましょう!










