第111回
問331
実践問題|実務
インシデントレポートの目的と運用
問331(実務)
インシデントレポートに関する記述として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1
再発防止のために作成される。
—
2
保健所に提出する。
—
3
薬剤に関連するインシデント報告はまれである。
—
4
当事者の責任追及のために利用する。
—
5
当事者以外が報告してもよい。
—
正解です!
インシデントレポートの目的(再発防止・ノーブレイム)と運用を正確に理解しています。
不正解です。正解は 1 と 5 です。
解説でインシデントレポートの目的と医療安全文化について確認しましょう。
解説を見る▼
【問331】インシデントレポートの目的と運用
インシデントレポートは、医療現場で発生した事故・ヒヤリ・ハット事例を記録・分析し、システムとしての再発防止策につなげるための仕組み。「誰が悪いか(個人の責任追及)」ではなく「なぜ起きたか(仕組みの問題)」に焦点を当てるノーブレイム(non-blame)文化が医療安全の基本理念。
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 ★ | 再発防止のために作成される | ◯ インシデントレポートの本来の目的は、発生した事例の情報を蓄積・分析し、同様の事例の再発を防止するための対策(システム改善・手順見直し等)につなげることである。 |
| 2 | 保健所に提出する | × インシデントレポートは、原則として施設内(院内・薬局内)の医療安全管理部門等で活用される報告制度であり、保健所への提出義務はない。なお、重大な医療事故等については別途医療事故調査・支援センター等への報告制度があるが、これとインシデントレポートは異なる仕組み。 |
| 3 | 薬剤関連インシデントはまれ | × 医療安全に関する報告において、薬剤関連のインシデント(誤薬・処方エラー・調剤エラー・与薬エラー等)は、報告件数の中でも多くを占める代表的なカテゴリーの一つであり、「まれである」という記述は実態と異なる。 |
| 4 | 当事者の責任追及のために利用 | × インシデントレポートは個人の責任を追及するための懲罰的な制度ではない。責任追及を目的とすると、報告者が報告をためらい、重要な情報が共有されなくなるため、医療安全の観点からは「人を罰するのではなく、仕組みを改善する」というノーブレイムの考え方が重視される。 |
| 5 ★ | 当事者以外が報告してもよい | ◯ インシデントレポートは、インシデントを直接起こした当事者だけでなく、それを発見した者・関係者など、誰でも報告することができる。早期発見・早期共有のためには、当事者以外からの報告も重要な情報源となる。 |
⚠️ 引っかけポイント(問331):
・選択肢2:「報告書=行政に提出するもの」という思い込みに注意。インシデントレポートは施設内の医療安全活動のためのものであり、保健所等への提出とは別制度。
・選択肢3:「薬剤=専門家が扱うから間違いが少ない」という直感的なイメージとは逆に、薬剤関連エラーは医療安全上の重要課題として継続的に報告・分析されている。
・選択肢4:「レポート=誰が間違えたかを記録するもの」という発想は、医療安全文化(ノーブレイム)の理念と正反対。報告のしやすさを確保することが、結果的に医療安全につながるという視点が重要。
・選択肢2:「報告書=行政に提出するもの」という思い込みに注意。インシデントレポートは施設内の医療安全活動のためのものであり、保健所等への提出とは別制度。
・選択肢3:「薬剤=専門家が扱うから間違いが少ない」という直感的なイメージとは逆に、薬剤関連エラーは医療安全上の重要課題として継続的に報告・分析されている。
・選択肢4:「レポート=誰が間違えたかを記録するもの」という発想は、医療安全文化(ノーブレイム)の理念と正反対。報告のしやすさを確保することが、結果的に医療安全につながるという視点が重要。
臨床メモ▼


薬剤師 あおい
「ヒヤリ・ハット」と「インシデント」「アクシデント」の整理:ヒヤリ・ハットは患者に実害がなかった事例、インシデントはより広く医療事故につながりうる出来事全般(実害の有無を問わない場合も含む)、アクシデント(医療事故)は実際に患者に害が及んだ事例、として整理されることが多いです。いずれも「報告→分析→改善」のサイクルに乗せることが重要です。
ノーブレイム文化とスイスチーズモデル:医療安全の考え方では、ミスは個人の不注意だけでなく複数の防御層(チェック体制)の隙間が偶然重なって発生すると捉えます(スイスチーズモデル)。「誰が間違えたか」ではなく「どの層に、どんな隙間があったか」を分析することで、システム全体の改善につながります。
薬局における代表的な報告対象:調剤過誤(薬剤取り違え・規格違い・用法用量の入力誤り等)、処方箋の記載不備、疑義照会の記録漏れ、ニアミス(手渡す直前に気づいた等)など、「実際には患者に届かなかったケース」も含めて積極的に報告する文化が、将来の重大事故を防ぐ第一歩になります。










