第111回
問334
実践問題|実務
術後栄養管理(高カロリー輸液・脂肪乳剤)に関する説明
【症例】
56歳男性。身長163 cm、体重58 kg。食道がん全摘出から5日後の栄養管理として、処方1及び2の薬剤が投与される予定である。
| (入院時の検査値) |
HbA1c 5.4%、空腹時血糖101 mg/dL、血清クレアチニン0.72 mg/dL BUN 17.0 mg/dL、AST 19 IU/L、ALT 22 IU/L |
| (処方1) |
高カロリー輸液用アミノ酸・糖・電解質・総合ビタミン液(注1) 1バッグ 高カロリー輸液用微量元素製剤2 mLシリンジ 1本 1日1回 持続点滴 24時間 |
| (処方2) |
20%静注用脂肪乳剤100 mL(注2) 1バッグ 1日1回 持続点滴 4時間 |
(注1:1,500 mL中にブドウ糖180 g、総遊離アミノ酸30 gが含まれる)
(注2:100 mL中に熱量が約200 kcal含まれる)
問334(実務)
この患者の担当薬剤師が、薬学実習生に対して、本症例に関する説明を行った。説明内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。ただし、アミノ酸は16%の窒素を含むものとする。
1
処方1の薬剤を投与する時は、輸液バッグを遮光カバーで被覆すること。
—
2
処方2の薬剤は0.22 µm孔径の輸液フィルターを使用して投与すること。
—
3
処方2の薬剤は末梢静脈からの投与が可能であること。
—
4
非タンパク質カロリー/窒素比(NPC/N)が400程度に設定されていること。
—
5
腎機能が低下しているため、アミノ酸の減量を担当医に提案する予定であること。
—
正解です!
高カロリー輸液の遮光・脂肪乳剤の投与経路・NPC/N比の計算を正確に理解しています。
不正解です。正解は 1 と 3 です。
解説で総合ビタミン液の遮光、脂肪乳剤の投与経路・フィルター、NPC/N比の計算を確認しましょう。
解説を見る▼
【問334】高カロリー輸液・脂肪乳剤の取扱いとNPC/N比の計算
処方1は総合ビタミンを含む高カロリー輸液(アミノ酸・糖・電解質・総合ビタミン)、処方2は20%脂肪乳剤。総合ビタミン含有製剤は光分解を防ぐための遮光が必要であり、脂肪乳剤は等張に近い浸透圧のため末梢静脈から投与可能、かつ輸液フィルターを通さないという特性がある。
NPC/N比の計算
・ブドウ糖によるカロリー:180 g × 4 kcal/g = 720 kcal
・脂肪乳剤によるカロリー:100 mL → 約200 kcal
・非タンパク質カロリー(NPC)合計:720 + 200 = 920 kcal
・窒素量(N):総遊離アミノ酸30 g × 16% = 4.8 g
・NPC/N = 920 ÷ 4.8 ≒ 192(一般的な目標値は150〜200程度)
→ 選択肢4の「400程度」は、計算結果(約192)と大きく異なり誤り。
・ブドウ糖によるカロリー:180 g × 4 kcal/g = 720 kcal
・脂肪乳剤によるカロリー:100 mL → 約200 kcal
・非タンパク質カロリー(NPC)合計:720 + 200 = 920 kcal
・窒素量(N):総遊離アミノ酸30 g × 16% = 4.8 g
・NPC/N = 920 ÷ 4.8 ≒ 192(一般的な目標値は150〜200程度)
→ 選択肢4の「400程度」は、計算結果(約192)と大きく異なり誤り。
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 ★ | 処方1の輸液バッグを遮光カバーで被覆 | ◯ 処方1には総合ビタミンが含まれており、ビタミンB群(特にB1・B2)等は光により分解されやすい。これを防ぐため、投与時には遮光カバーで輸液バッグを被覆することが推奨される。総合ビタミンを含む高カロリー輸液製剤に共通する基本的な取扱い。 |
| 2 | 処方2に0.22 µmフィルター使用 | × 脂肪乳剤は輸液フィルターを通してはならない。脂肪粒子のサイズはフィルターの孔径(0.2 µm前後)と同程度かそれ以上であり、フィルターを通すと脂肪成分が目詰まり・除去されてしまう。脂肪乳剤はフィルターを介さず、または別ルート・フィルター下流から投与する。 |
| 3 ★ | 処方2は末梢静脈からの投与が可能 | ◯ 20%脂肪乳剤は血液とほぼ等張であり、高濃度ブドウ糖を含む高カロリー輸液(処方1、中心静脈投与が基本)とは異なり、末梢静脈からの投与が可能。実際の臨床でも、脂肪乳剤は中心静脈ラインとは別に、末梢静脈から投与されることが多い。 |
| 4 | NPC/N比が400程度 | × 上記の計算の通り、本処方のNPC/N比は約192であり、一般的な目標値(侵襲のない状態で150〜200程度)の範囲内に収まる、ごく標準的な設定である。「400程度」という記述は、計算結果と大きく異なり誤り。 |
| 5 | 腎機能低下のためアミノ酸減量を提案予定 | × 入院時検査値は血清クレアチニン0.72 mg/dL、BUN 17.0 mg/dLであり、いずれも明らかな腎機能低下を示す異常値ではない。腎機能が正常範囲内であるにもかかわらず「腎機能低下のためアミノ酸減量を提案する」という説明は、検査値の評価と矛盾する。 |
⚠️ 引っかけポイント(問334):
・選択肢2・3:「脂肪乳剤=フィルター不要・末梢投与可能」という2つの特性をセットで覚えると、選択肢2(誤り)と選択肢3(正解)を同時に判断できる。
・選択肢4:NPC/N比の計算問題。糖質1g=4kcal、脂肪乳剤は注記のkcal値をそのまま使用、アミノ酸量×窒素含有率(16%)=窒素量という基本式を確実に当てはめる。
・選択肢5:「術後だから何か制限が必要そう」という思い込みに注意。検査値(Cr・BUN)を見て、実際に腎機能低下があるかどうかを確認する姿勢が重要。
・選択肢2・3:「脂肪乳剤=フィルター不要・末梢投与可能」という2つの特性をセットで覚えると、選択肢2(誤り)と選択肢3(正解)を同時に判断できる。
・選択肢4:NPC/N比の計算問題。糖質1g=4kcal、脂肪乳剤は注記のkcal値をそのまま使用、アミノ酸量×窒素含有率(16%)=窒素量という基本式を確実に当てはめる。
・選択肢5:「術後だから何か制限が必要そう」という思い込みに注意。検査値(Cr・BUN)を見て、実際に腎機能低下があるかどうかを確認する姿勢が重要。
臨床メモ▼


薬剤師 あおい
NPC/N比の計算式を「材料」で覚える:NPC/N比=(糖質のカロリー+脂質のカロリー)÷ 窒素量。糖質は1g=4kcalとして計算するのが基本(Atwater係数)。脂肪乳剤は添付文書・処方箋に記載されたkcal値をそのまま利用できる場合が多いです。窒素量はアミノ酸量(g)×0.16で求めます。この3ステップを覚えておけば、似たような計算問題に幅広く対応できます。
NPC/N比の目安:侵襲のない通常状態で150〜200程度が目安とされます。値が低すぎる(タンパク質に対してエネルギーが少ない)と、アミノ酸がエネルギー源として消費されてしまい、本来の目的(体タンパク合成)に使われにくくなります。逆に高すぎる(300〜500等)のは、腎不全などでタンパク制限が必要な特殊な病態で用いられる値であり、本症例(腎機能正常)には当てはまりません。
脂肪乳剤の「2つの自由」:①フィルターを通さなくてよい(通してはいけない)、②中心静脈でなくても末梢静脈から投与できる。この2点は脂肪乳剤特有の特徴として頻出です。「高カロリー輸液=中心静脈・フィルター使用」というイメージのまま脂肪乳剤に当てはめないように注意しましょう。










