第111回
問55
💊 必須問題|薬剤
受動的ターゲティングを目的とした製剤
問題文
受動的ターゲティングを目的に臨床で用いられている製剤はどれか。1つ選べ。
1
自己乳化型マイクロエマルション製剤
—
2
マイクロニードル製剤
—
3
シクロデキストリン包接体製剤
—
4
ポリエチレングリコール修飾リポソーム製剤
—
5
生分解性高分子マイクロカプセル型製剤
—
正解です!
素晴らしい!下の解説も確認してみましょう。
不正解です。正解は 4(ポリエチレングリコール修飾リポソーム製剤) です。
下の解説でしっかり確認しましょう!
解説を見る
▼
ターゲティングには受動的ターゲティング(体の生理的・解剖学的特性を利用して自然に標的部位に集積させる)と能動的ターゲティング(抗体・リガンドなどを修飾して特定細胞に結合させる)があります。
PEG修飾リポソーム製剤(PEGylated liposome)は、リポソーム表面をポリエチレングリコール(PEG)で修飾することで網内系(RES)による取り込みを回避し、血中循環時間を延長します。腫瘍組織では血管の透過性亢進とリンパ管の未発達により粒子が集積しやすいEPR効果(Enhanced Permeability and Retention effect)を利用した受動的ターゲティングです。代表薬はドキソルビシン封入PEGリポソーム(ドキシル®)です。
🔑 受動的ターゲティングの仕組み(EPR効果)
腫瘍組織では血管内皮の隙間が大きく(透過性↑)、かつリンパ管が未発達(排出↓)
→ 数十〜数百nm程度の粒子(リポソームなど)が腫瘍に蓄積しやすい
→ PEG修飾により血中での分解・除去を回避し循環時間を延長することで、さらに腫瘍への集積が促進される
腫瘍組織では血管内皮の隙間が大きく(透過性↑)、かつリンパ管が未発達(排出↓)
→ 数十〜数百nm程度の粒子(リポソームなど)が腫瘍に蓄積しやすい
→ PEG修飾により血中での分解・除去を回避し循環時間を延長することで、さらに腫瘍への集積が促進される
| 選択肢 | 製剤 | 目的・特徴 |
|---|---|---|
| 1 | 自己乳化型マイクロエマルション製剤 | 難溶性薬物の溶解性・吸収性改善が目的。ターゲティングではない |
| 2 | マイクロニードル製剤 | 皮膚角質層を貫通して経皮吸収を促進する製剤。ターゲティングではない |
| 3 | シクロデキストリン包接体製剤 | 難溶性薬物の溶解性改善・安定化・味マスキングが目的。ターゲティングではない |
| 4 ★ | PEG修飾リポソーム製剤 | EPR効果による受動的ターゲティング。腫瘍組織への選択的集積。ドキシル®が代表 |
| 5 | 生分解性高分子マイクロカプセル型製剤 | 薬物の徐放・放出制御が目的。体内で分解されて薬物を放出する。ターゲティングが主目的ではない |
⚠️ 引っかけポイント:
・自己乳化型マイクロエマルション(選択肢1)は溶解性改善が目的。ターゲティングとは無関係
・マイクロニードル(選択肢2)は皮膚への薬物送達経路の改善であり、特定臓器・細胞へのターゲティングではない
・シクロデキストリン包接体(選択肢3)は溶解性・安定性の改善が目的。ターゲティングとは無関係
・生分解性マイクロカプセル(選択肢5)は徐放が主目的。受動的ターゲティングの代表ではない
・自己乳化型マイクロエマルション(選択肢1)は溶解性改善が目的。ターゲティングとは無関係
・マイクロニードル(選択肢2)は皮膚への薬物送達経路の改善であり、特定臓器・細胞へのターゲティングではない
・シクロデキストリン包接体(選択肢3)は溶解性・安定性の改善が目的。ターゲティングとは無関係
・生分解性マイクロカプセル(選択肢5)は徐放が主目的。受動的ターゲティングの代表ではない
臨床メモ
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💊 薬剤師 あおい
ドキシル®(塩酸ドキソルビシンリポソーム製剤)はPEG修飾リポソームにドキソルビシンを封入した抗がん剤で、EPR効果により腫瘍への選択的集積を利用しています。通常のドキソルビシンと比べて心毒性が軽減されることが特徴ですが、代わりに手足症候群(手掌・足底の発赤・腫脹・疼痛)が特徴的な副作用として現れます。患者さんに「手足が赤くなったり痛くなったら早めに連絡してください」と伝えることが大切です。
なお、ドキシル®はハーセプチン®(トラスツズマブ)などの抗体修飾リポソームとは異なり、能動的ターゲティングは行っていません。EPR効果という受動的な機構を利用している点を押さえておきましょう。












