第110回
問106
理論問題|化学
ブレオマイシンA₂のDNA切断機構
問106(理論)
下図に示すブレオマイシンA₂はDNA鎖を切断することができる。このために必要な化学的性質として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1
部分構造アにおけるFe(Ⅱ)との配位能
—
2
部分構造イにおけるMg(Ⅱ)との配位能
—
3
部分構造ウにおけるMg(Ⅱ)との配位能
—
4
部分構造エにおける光増感作用
—
5
部分構造オにおけるFe(Ⅱ)との配位能
—
正解です!
解説でブレオマイシンのDNA切断機構を確認しましょう。
不正解です。正解は 1 です。
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ブレオマイシンは、抗腫瘍性抗生物質として悪性リンパ腫や胚細胞腫瘍等の治療に用いられる糖ペプチド系の薬剤です。DNA切断能は、分子内のピリミジン環・β-アミノアラニン・イミダゾール等を含む金属結合ドメイン(部分構造ア)がFe(Ⅱ)と配位結合し、活性化ブレオマイシン-鉄複合体を形成することに由来します。この複合体が酸素分子を活性化して反応性酸素種(活性酸素)を生成し、DNA鎖の糖部分(デオキシリボース)を酸化的に攻撃することで鎖切断を引き起こします。
ブレオマイシンのDNA切断機構
・金属結合ドメイン(部分構造ア:ピリミジン、β-アミノアラニン等の窒素原子群)がFe(Ⅱ)と配位結合し、Fe-ブレオマイシン複合体を形成
・O₂と反応して活性酸素種(スーパーオキシドやヒドロキシルラジカル様の反応性種)を生成する「活性化ブレオマイシン」となる
・生成した活性種がDNAの糖部分(C4’水素等)を引き抜き、酸化的にDNA鎖を切断する
・二糖部分(部分構造イ)はDNAへの結合親和性に寄与し、ビチアゾール+ポリアミン部分(部分構造エ・オ)はDNAへのインターカレーション様の結合・静電的相互作用に関与するが、鎖切断そのものの化学的トリガーではない
・金属結合ドメイン(部分構造ア:ピリミジン、β-アミノアラニン等の窒素原子群)がFe(Ⅱ)と配位結合し、Fe-ブレオマイシン複合体を形成
・O₂と反応して活性酸素種(スーパーオキシドやヒドロキシルラジカル様の反応性種)を生成する「活性化ブレオマイシン」となる
・生成した活性種がDNAの糖部分(C4’水素等)を引き抜き、酸化的にDNA鎖を切断する
・二糖部分(部分構造イ)はDNAへの結合親和性に寄与し、ビチアゾール+ポリアミン部分(部分構造エ・オ)はDNAへのインターカレーション様の結合・静電的相互作用に関与するが、鎖切断そのものの化学的トリガーではない
各選択肢の解説
◯ 1 部分構造アにおけるFe(Ⅱ)との配位能:金属結合ドメインがFe(Ⅱ)と配位結合して活性化ブレオマイシンを形成し、これが酸素を活性化してDNA鎖を酸化的に切断する。DNA切断能の本質的な化学的性質
× 2 部分構造イにおけるMg(Ⅱ)との配位能:部分構造イは二糖(アミノ糖・マンノース様の糖鎖)であり、金属イオンとの配位能を担う部位ではない
× 3 部分構造ウにおけるMg(Ⅱ)との配位能:部分構造ウはペプチド骨格(β-ヒドロキシヒスチジン等を含む部分)であり、DNA切断に必要な金属配位部位はFe(Ⅱ)結合ドメイン(ア)であって、Mg(Ⅱ)配位能ではない
× 4 部分構造エにおける光増感作用:部分構造エ(ビチアゾール部分)はDNAとの結合(インターカレーション様相互作用)に関与するが、ブレオマイシンのDNA切断は光を必要としない反応であり、光増感作用によるものではない
× 5 部分構造オにおけるFe(Ⅱ)との配位能:部分構造オは末端のスルホニウム基を含むポリアミン部分で、DNAとの静電的相互作用に関与するが、Fe(Ⅱ)との配位結合を担う部位ではない
◯ 1 部分構造アにおけるFe(Ⅱ)との配位能:金属結合ドメインがFe(Ⅱ)と配位結合して活性化ブレオマイシンを形成し、これが酸素を活性化してDNA鎖を酸化的に切断する。DNA切断能の本質的な化学的性質
× 2 部分構造イにおけるMg(Ⅱ)との配位能:部分構造イは二糖(アミノ糖・マンノース様の糖鎖)であり、金属イオンとの配位能を担う部位ではない
× 3 部分構造ウにおけるMg(Ⅱ)との配位能:部分構造ウはペプチド骨格(β-ヒドロキシヒスチジン等を含む部分)であり、DNA切断に必要な金属配位部位はFe(Ⅱ)結合ドメイン(ア)であって、Mg(Ⅱ)配位能ではない
× 4 部分構造エにおける光増感作用:部分構造エ(ビチアゾール部分)はDNAとの結合(インターカレーション様相互作用)に関与するが、ブレオマイシンのDNA切断は光を必要としない反応であり、光増感作用によるものではない
× 5 部分構造オにおけるFe(Ⅱ)との配位能:部分構造オは末端のスルホニウム基を含むポリアミン部分で、DNAとの静電的相互作用に関与するが、Fe(Ⅱ)との配位結合を担う部位ではない
| 部分構造 | 役割 |
| ア ★ | 金属結合ドメイン(Fe(Ⅱ)配位・DNA切断の本質) |
| イ | 二糖部分(DNA結合親和性に寄与) |
| ウ | ペプチド骨格 |
| エ | ビチアゾール(DNAへの結合に関与) |
| オ | ポリアミン・スルホニウム基(静電的相互作用) |
引っかけポイント:
・選択肢2・3(Mg(Ⅱ)配位):金属イオンというとMg(Ⅱ)を連想しやすいが、ブレオマイシンのDNA切断に必須なのはFe(Ⅱ)である点を正確に覚えておくこと(生体内の他の反応でMgが多用されることとの混同に注意)
・選択肢4(光増感作用):抗腫瘍薬の中には光線力学療法のように光増感作用でDNA損傷を起こすものもあるが、ブレオマイシンは光非依存的(酸素依存的)にDNAを切断する薬剤であり、光増感作用とは機序が異なる
・選択肢5(部分構造オでのFe配位):金属配位能を担う窒素原子群は部分構造アに集中しており、他の部分構造(イ・ウ・エ・オ)はDNA結合や薬効の補助的役割を担うにとどまる点を区別すること
・ブレオマイシンの構造は複雑だが、「金属結合ドメイン(ア)=鉄と結合して活性酸素を作る部分」「それ以外=DNAへの結合・認識を助ける部分」と役割分担で整理すると判別しやすい
・選択肢2・3(Mg(Ⅱ)配位):金属イオンというとMg(Ⅱ)を連想しやすいが、ブレオマイシンのDNA切断に必須なのはFe(Ⅱ)である点を正確に覚えておくこと(生体内の他の反応でMgが多用されることとの混同に注意)
・選択肢4(光増感作用):抗腫瘍薬の中には光線力学療法のように光増感作用でDNA損傷を起こすものもあるが、ブレオマイシンは光非依存的(酸素依存的)にDNAを切断する薬剤であり、光増感作用とは機序が異なる
・選択肢5(部分構造オでのFe配位):金属配位能を担う窒素原子群は部分構造アに集中しており、他の部分構造(イ・ウ・エ・オ)はDNA結合や薬効の補助的役割を担うにとどまる点を区別すること
・ブレオマイシンの構造は複雑だが、「金属結合ドメイン(ア)=鉄と結合して活性酸素を作る部分」「それ以外=DNAへの結合・認識を助ける部分」と役割分担で整理すると判別しやすい
臨床メモ▼


薬剤師 あおい
ブレオマイシンの代表的な重大な副作用は肺線維症・間質性肺炎です。これはブレオマイシンが活性酸素を発生させる機序が、肺組織にも酸化ストレスを与えてしまうことと関連していると考えられています。臨床では、総投与量規制(生涯投与量の上限)が設けられており、投与前・投与中の胸部画像検査や呼吸機能検査でのモニタリングが重要です。
「金属と結合して活性酸素を発生させ、DNAを切断する」という機序は、放射線療法と類似した作用機序(DNA損傷による細胞死誘導)を持つ薬剤として理解すると、なぜブレオマイシンが放射線治療と併用されることがあるのかも納得しやすくなります。










