【第110回薬剤師国家試験】問212-213 サラゾスルファピリジンの腸内細菌代謝とメサラジン放出調節製剤の服薬指導 解説

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第110回 問212-213
第110回 問212-213
実践問題|物理・化学・生物(212)・実務(213)
サラゾスルファピリジンの腸内細菌代謝とメサラジン放出調節製剤の服薬指導
問212-213(連問)共通問題文
問212-213 31歳女性。1ヶ月前に粘血便、下痢が出現したため近所の消化器内科を受診し、大腸内視鏡検査により全大腸炎型潰瘍性大腸炎と診断された。医師との面談で、患者が安価な治療を望んだため、処方1による治療が開始され症状は改善した。その後、病状が安定していたが、たびたびめまいや頭痛が生じたとの訴えがあったため、医師は処方1を処方2へ変更し、患者が処方2の処方箋を持って薬局を訪れた。
(処方1)
サラゾスルファピリジン錠500 mg
1回1錠(1日4錠)
1日4回 朝昼夕食後、就寝前 14日分
(処方2)
メサラジン錠500 mg(注)
1回2錠(1日4錠)
1日2回 朝夕食後 14日分
(注)エチルセルロースでコーティングした放出調節製剤
問212(物理・化学・生物)
処方1の薬物は、大腸へ到達後、下図のように、腸内細菌により代謝(還元)されて効果を示す。
処方1の薬物の腸内細菌による還元代謝反応
全大腸炎型潰瘍性大腸炎に有効な主たる活性成分の構造はどれか。1つ選べ。
1
選択肢1の構造
2
選択肢2の構造
3
選択肢3の構造
4
選択肢4の構造
5
選択肢5の構造
正解です!
解説でサラゾスルファピリジンの代謝経路を確認しましょう。
×
不正解です。正解は 5 です。
解説でサラゾスルファピリジンの代謝経路を確認しましょう。
問213
問213(実務)
薬剤師が、処方2の薬剤の服用及び注意事項について患者に説明する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1
錠剤が大きくて飲みにくい場合は、粉砕し水や微温湯に懸濁して服用してもよいこと。
2
糞便中に白いものがみられる可能性があること。
3
グレープフルーツジュースの飲用は避けること。
4
症状が改善しても、再燃しないように服薬を継続する必要があること。
5
処方2の薬剤の服用中は、大腸がん検査を避けること。
正解です!
解説でメサラジン放出調節製剤の服薬指導のポイントを確認しましょう。
×
不正解です。正解は 2、4 です。
解説でメサラジン放出調節製剤の服薬指導のポイントを確認しましょう。
問212の解説を見る

処方1のサラゾスルファピリジンは、スルファピリジンと5-アミノサリチル酸(5-ASA、メサラジンと同じ成分)がアゾ結合(-N=N-)で連結したプロドラッグです。経口投与後、上部消化管ではほとんど吸収・分解されずに大腸まで到達し、大腸の腸内細菌が持つアゾ還元酵素によってアゾ結合が還元的に切断されることで、初めて2つの成分(スルファピリジンと5-ASA)に分解されます。

サラゾスルファピリジンの代謝と作用のポイント
・アゾ結合の還元的切断により生成する5-アミノサリチル酸(5-ASA)が、大腸粘膜局所で抗炎症作用(プロスタグランジン・ロイコトリエン産生抑制など)を発揮し、潰瘍性大腸炎の主たる活性成分となる
・もう一方の分解産物であるスルファピリジンは、吸収されて全身循環に入り、頭痛・めまい・悪心などの副作用の原因となることが知られている(本症例の「めまいや頭痛」はこれに該当し、副作用の少ないメサラジン単剤へ処方変更された)
・大腸に到達してから初めてアゾ還元によって分解されるという特徴のため、サラゾスルファピリジンは大腸全体に活性成分を届けやすく、全大腸炎型を含む潰瘍性大腸炎に広く使用される
各選択肢の解説
× 1 スルファピリジン(ピリジン環にアミノ基が直結した構造)。アゾ結合切断後に生じるもう一方の分解産物であり、全身に吸収されて頭痛・めまい等の副作用の原因となる成分。潰瘍性大腸炎への直接的な有効成分ではない
× 2 ピリジン環が飽和したピペリジン構造になっており、かつアゾ結合が切断されずに残ったままの構造。腸内細菌による還元反応の対象や生成物として不適切
× 3 アゾ結合部分がCH₂OH(ベンジルアルコール様)に置き換わった構造。実際の還元反応はアゾ結合(-N=N-)の切断であり、カルボン酸がアルコールに変化するわけではないため誤り
× 4 アゾ結合(-N=N-)がヒドラゾ結合(-NH-NH-)まで還元された、アゾ還元の途中段階を示す構造。まだ2つの成分に完全に切断されていない中間体であり、「主たる活性成分」(最終生成物)ではない
◯ 5 5-アミノサリチル酸(5-ASA、アミノ基・ヒドロキシ基・カルボキシ基を持つ安息香酸誘導体)。アゾ結合が完全に還元的切断されて生じる、大腸局所で抗炎症作用を示す主たる活性成分
引っかけポイント:
・選択肢1:分解産物の「片割れ」ではあるが、有効成分ではなく副作用の原因となるスルファピリジン側であり、問題文の「有効な主たる活性成分」という条件に合わない
・選択肢2・3:一見それらしい部分構造の変化に見えるが、実際のアゾ還元反応の化学的な機構(アゾ結合の切断による2分子への解離)とは異なる変化が加えられている
・選択肢4:アゾ結合が完全に切れておらず、ヒドラゾ体という還元反応の途中経過を示した構造。「還元反応が完了した最終産物」を選ぶ必要がある
問213の解説を見る

処方2のメサラジン錠(エチルセルロースコーティングによる放出調節製剤)は、5-ASAそのものを、上部消化管では放出させず大腸まで送達させるための工夫がされた製剤です。この剤形特性を踏まえた服薬指導が求められます。

放出調節製剤(メサラジン)の服薬指導のポイント
・エチルセルロースコーティングは、薬物をゆっくり放出させるための機能性コーティングであり、粉砕すると放出制御機能が失われ、上部消化管で一気に吸収されて副作用リスクが高まったり、大腸での効果が減弱したりするおそれがある。粉砕・懸濁は不可
・放出制御コーティングを施した錠剤は、有効成分が放出された後もコーティング残渣(ゴーストピル)が崩壊せずに便中に排泄されることがあり、「便に白いものが混じることがある」と事前に説明しておくことで、患者の不安を防げる
・グレープフルーツジュースとの相互作用は、主にCYP3A4で代謝される薬物(Ca拮抗薬等)で問題となるものであり、メサラジンには関係しない
・潰瘍性大腸炎は寛解と再燃を繰り返す慢性疾患であり、症状が改善(寛解)した後も、再燃予防のための維持療法として服薬を継続する必要がある
・潰瘍性大腸炎は罹病期間が長くなるほど大腸がんのリスクが高まるため、定期的な大腸内視鏡等によるサーベイランス検査はむしろ推奨されるものであり、メサラジン服用中に検査を避ける必要はない
各選択肢の解説
× 1 放出調節製剤を粉砕・懸濁すると、コーティングによる放出制御機能が失われるため不適切な指導
◯ 2 コーティング残渣が崩壊せずに便中に排泄されることがあるため、事前に説明しておくべき内容として適切
× 3 メサラジンはCYP3A4代謝を主とする薬物ではなく、グレープフルーツジュースとの相互作用は特に問題とならないため不適切
◯ 4 潰瘍性大腸炎は寛解維持のため、症状改善後も服薬継続が必要であり適切な指導
× 5 大腸がん検査(サーベイランス内視鏡)はむしろ定期的に受けることが推奨されており、服用中に避ける必要はないため不適切
引っかけポイント:
・選択肢1:「錠剤が大きい=飲みにくいから砕いてよい」という一般的な発想に引きずられやすいが、放出調節製剤は例外的に粉砕不可であることが多い
・選択肢3:グレープフルーツジュースとCa拮抗薬等の相互作用の知識と混同させる典型的な引っかけ
・選択肢5:潰瘍性大腸炎では長期罹患による大腸がんリスク上昇があるため、「薬を飲んでいるから検査を避ける」のではなく、むしろ定期検査が重要という点を理解しているかが問われる
臨床メモ
あおい
薬剤師 あおい

サラゾスルファピリジンからメサラジンへの変更は、実務でも非常によく遭遇するパターンです。「同じ5-ASA製剤なのに、なぜ薬を変えるの?」と患者さんに聞かれたときは、サラゾスルファピリジンにはスルファピリジンという“余分な部分”がくっついていて、それが頭痛やめまいなどの副作用の原因になりやすいこと、メサラジンはその部分を含まない分、副作用が少ないことを説明すると納得してもらいやすいです。

また、メサラジン製剤にはエチルセルロースコーティングによる放出調節型のほか、pH依存性の腸溶性コーティング型など複数の剤形があり、それぞれ薬物放出の仕組みが異なります。「なぜこの剤形が選ばれているのか」という視点を持つと、粉砕の可否や便への排泄物といった服薬指導のポイントも自然に説明できるようになります。

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