第111回
問304-305
実践問題|実務(304)・病態・薬物治療(305)
骨肉腫MAP療法の実務管理と副作用予防薬の選択
【症例】問304-305 共通
19歳男性。身長165 cm、体重51 kg。以前より、右足の痛みと腫れがあり、1ヶ月前に父親とともに近所の整形外科を受診した。その2週間後、医師は骨腫瘍を疑い、大学病院を紹介した。精査の結果、大腿骨遠位の骨肉腫と診断され、加療のため昨日入院となった。入院時の検査結果は以下のとおりである。
問304(実務)
この患者の治療に関して、病棟担当薬剤師が実務実習中の学生の指導を行うこととなった。薬剤師が実務実習生へ説明する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1
ドキソルビシン塩酸塩の総投与量が、500 mg/m2 以下であるのを確認すること。
—
2
シスプラチンは冷蔵庫に保管すること。
—
3
シスプラチンの点滴時間が長時間に及ぶ場合には、遮光して投与すること。
—
4
メトトレキサートは、静脈内投与開始から10分以内に終了するのが望ましいこと。
—
5
メトトレキサートの治療効果を高めるために、水分の摂取量を制限すること。
—
正解です!
MAP療法の実務管理を正確に理解しています。
不正解です。正解は 1 と 3 です。
解説で各薬剤の管理ポイントを確認しましょう。
問305(病態・薬物治療)
MAP療法による副作用を予防するために、この患者に投与すべきなのはどれか。2つ選べ。
1
アセタゾラミド
—
2
セベラマー
—
3
トリクロルメチアジド
—
4
ホリナートカルシウム
—
5
メスナ
—
正解です!
MAP療法の副作用予防薬を正確に選択できています。
不正解です。正解は 1 と 4 です。
解説で各薬剤の役割を確認しましょう。
解説を見る▼
【問304】MAP療法の実務管理ポイント
| 選択肢 | 説明内容 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 ★ | ドキソルビシン:総投与量 500 mg/m2 以下を確認 | ◯ ドキソルビシンはアントラサイクリン系抗がん薬であり、累積心毒性(心筋症・うっ血性心不全)が最大の問題。総投与量が500 mg/m2を超えると心毒性リスクが急増するため、累積投与量の管理が必須。本療法では30 mg/m2×2日×2コース=120 mg/m2であり、現時点では基準内。 |
| 2 | シスプラチンは冷蔵庫保管 | × シスプラチンは室温保存(遮光・室温)が原則。冷蔵保存すると析出・沈殿が生じる。「冷蔵庫に保管」は誤り。 |
| 3 ★ | シスプラチン:長時間点滴は遮光 | ◯ シスプラチンは光により分解(光分解)するため、点滴時間が長時間に及ぶ場合は遮光して投与する。通常は遮光ボトル・遮光カバーを使用する。 |
| 4 | メトトレキサート:10分以内に終了 | × 高用量メトトレキサート(HD-MTX)療法(12 g/m2)は4〜6時間かけて点滴投与する。10分以内という急速投与は誤りであり、腎毒性・粘膜炎のリスクを高める。 |
| 5 | メトトレキサート:水分制限 | × HD-MTX療法では尿中のMTX結晶析出・腎毒性を防ぐため、大量輸液・尿のアルカリ化が必須。水分制限は逆に毒性を高める。 |
⚠️ 引っかけポイント(問304):
・選択肢2:シスプラチンは「冷所保存が必要な注射薬」というイメージがあるが、実際は室温保存。冷蔵すると析出する。
・選択肢4・5:HD-MTXは急速投与ではなく長時間点滴、かつ水分負荷が必須。
・選択肢2:シスプラチンは「冷所保存が必要な注射薬」というイメージがあるが、実際は室温保存。冷蔵すると析出する。
・選択肢4・5:HD-MTXは急速投与ではなく長時間点滴、かつ水分負荷が必須。
【問305】MAP療法の副作用予防薬
MAP療法の主要副作用と予防薬の対応
・メトトレキサート(HD-MTX)→ 腎毒性・結晶尿:大量輸液+尿アルカリ化(アセタゾラミド・炭酸水素ナトリウム)
・シスプラチン → 出血性膀胱炎(イホスファミドほど問題にならないが)
・メトトレキサート → 葉酸拮抗による骨髄抑制・粘膜炎:ロイコボリン救援(ホリナートカルシウム)→ MTX終了後に後投与(レジメン必須)
・シスプラチン → 腎毒性(尿細管壊死):大量輸液+強制利尿(メスナは不要)
・メトトレキサート(HD-MTX)→ 腎毒性・結晶尿:大量輸液+尿アルカリ化(アセタゾラミド・炭酸水素ナトリウム)
・シスプラチン → 出血性膀胱炎(イホスファミドほど問題にならないが)
・メトトレキサート → 葉酸拮抗による骨髄抑制・粘膜炎:ロイコボリン救援(ホリナートカルシウム)→ MTX終了後に後投与(レジメン必須)
・シスプラチン → 腎毒性(尿細管壊死):大量輸液+強制利尿(メスナは不要)
| 選択肢 | 薬剤名・目的 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 ★ | アセタゾラミド (炭酸脱水酵素阻害薬) | ◯ HD-MTX療法では尿をアルカリ化してMTXの溶解性を高め、腎尿細管での結晶析出・腎毒性を防ぐ。アセタゾラミドは尿のアルカリ化を目的として投与される。炭酸水素ナトリウム(重曹)も同様の目的で使用。 |
| 2 | セベラマー (リン吸着薬) | × セベラマーは高リン血症(CKD等)のリン吸着薬。MAP療法の副作用予防とは無関係。 |
| 3 | トリクロルメチアジド (チアジド系利尿薬) | × チアジド系利尿薬はMTXの腎排泄を遅延させMTX毒性を増強する可能性がある。MAP療法の副作用予防薬ではなく、むしろ注意すべき相互作用薬。 |
| 4 ★ | ホリナートカルシウム (ロイコボリン救援) | ◯ HD-MTX療法において、MTX投与終了後(通常24時間後〜)に正常細胞を壊滅から救うロイコボリン・レスキュー(ホリナート後投与)はレジメンに組み込まれた絶対必須の副作用予防薬。骨髄抑制・粘膜炎を予防する。なおMTX点滴中の同時投与は抗腫瘍効果を拮抗するため行わない。 |
| 5 | メスナ (出血性膀胱炎予防) | × メスナはシクロホスファミド・イホスファミドが産生するアクロレインによる出血性膀胱炎を予防する薬剤。シスプラチンはアクロレインを産生せず出血性膀胱炎を起こさないため、メスナの適応はない。シスプラチンの腎毒性(尿細管壊死)には大量輸液(ハイドレーション)と強制利尿で対応する。 |
⚠️ 引っかけポイント(問305):
・選択肢5(メスナ):シスプラチンには出血性膀胱炎もアクロレイン産生もない。メスナが必要なのはシクロホスファミド・イホスファミド使用時のみ。
・選択肢3(トリクロルメチアジド):チアジド系はMTXの腎排泄を遅延させ毒性増強の恐れ→むしろ使用を避ける薬剤。
・選択肢4(ホリナート)の注意点:MTX点滴中の同時投与は×だが、レジメンとして「MTX終了後に投与する副作用予防薬」として◯。問いの趣旨(レジメン全体での副作用予防)を正確に読む。
・選択肢5(メスナ):シスプラチンには出血性膀胱炎もアクロレイン産生もない。メスナが必要なのはシクロホスファミド・イホスファミド使用時のみ。
・選択肢3(トリクロルメチアジド):チアジド系はMTXの腎排泄を遅延させ毒性増強の恐れ→むしろ使用を避ける薬剤。
・選択肢4(ホリナート)の注意点:MTX点滴中の同時投与は×だが、レジメンとして「MTX終了後に投与する副作用予防薬」として◯。問いの趣旨(レジメン全体での副作用予防)を正確に読む。
臨床メモ▼


薬剤師 あおい
HD-MTX療法の管理は薬剤師の腕の見せ所:高用量メトトレキサート療法(12 g/m2)は毒性が非常に強く、①大量輸液、②尿アルカリ化(pH 7.0以上を目標)、③MTX血中濃度モニタリング、④ロイコボリン救援の4点が必須です。MTX濃度が規定値以下に下がるまでロイコボリンを継続します。薬剤師が血中濃度をモニタリングしてロイコボリン投与タイミングを管理する重要な役割を担います。
ドキソルビシンの累積心毒性管理:アントラサイクリン系薬は累積投与量が増えるほど心筋障害リスクが高まります。500 mg/m2が目安の上限ですが、それ以前から心エコーでLVEF(左室駆出率)を定期モニタリングします。若い患者さんでも将来的な心機能低下が問題になることがあるため、長期フォローが必要です。
骨肉腫の治療と薬剤師の役割:骨肉腫は四肢原発が多く、化学療法+手術(患肢温存術または切断術)が標準治療です。MAP療法は術前化学療法として施行され、腫瘍縮小と微小転移の制御を目的とします。治療が長期にわたる若い患者さんのQOLサポート・副作用管理・服薬指導も薬剤師の大切な仕事です。










