8歳男児。アトピー性皮膚炎に対しステロイド軟膏を使用していたが、顔面の皮疹の改善が見られないため、今回より以下の処方に変更となり、患児は母親とともに処方箋を持って薬局を訪れた。服薬指導時に薬剤を見た母親から「薬の名前の横に劇と書いてあるけれど、大丈夫なのでしょうか。1日1回に減らして塗ってもよいですか。」との質問があった。
| (処方) |
タクロリムス水和物軟膏0.03% 5 g 1回適量 1日2回 朝夕 顔面に塗布 |
【問318】タクロリムス軟膏に関する服薬指導
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 ★ | 自己判断で回数変更不可、指示どおり使用 | ◯ 1日2回(朝夕)という用法は有効性・安全性が確認された用法であり、自己判断で1日1回に減らすと十分な効果が得られないおそれがある。母親の質問への直接的な回答として適切。 |
| 2 | 眼の周囲に塗布禁止 | × タクロリムス軟膏0.03%(小児用)は顔面・頸部への使用が想定されており、眼の周囲への塗布自体は禁止されていない。ただし眼そのもの(眼内・粘膜)への入り込みは避けるよう指導する。「眼の周囲」全体を禁止するのは過大な記述。 |
| 3 | びらん・潰瘍面にも使用可 | × びらん・潰瘍面では皮膚バリアが障害されており、タクロリムスの経皮吸収が増大するため、使用は避けるべきとされる。「使用できる」と説明するのは不適切。 |
| 4 ★ | 使用初期に皮膚刺激感あり | ◯ タクロリムス軟膏は使用初期にほてり・灼熱感・刺激感を生じることが多く、特徴的な副作用として知られる。多くは使用継続により軽減するため、事前に説明しておくことでアドヒアランス低下を防げる。 |
| 5 | 毛細血管拡張・皮膚萎縮・緑内障に注意 | × これらはステロイド外用薬の長期使用に伴う副作用(皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイド緑内障等)であり、タクロリムスはステロイドではないためこれらの副作用は基本的に問題とならない。ステロイドとタクロリムスの副作用プロファイルの違いを問う選択肢。 |
・選択肢2:「顔面に塗布」という処方内容と「眼の周囲に塗布してはならない」は矛盾する。顔面用製剤であることを踏まえて判断する。
・選択肢5:ステロイド外用薬の副作用(皮膚萎縮・毛細血管拡張・緑内障)とタクロリムスの副作用(初期刺激感)を混同させる典型パターン。「変更後の薬剤」=タクロリムスについての説明であることに注意。
【問319】劇薬の薬局における取扱い
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 ★ | 施錠なしの調剤棚に貯蔵可 | ◯ 劇薬には施錠保管の義務はない(毒薬は施錠保管が必須=薬機法第48条)。劇薬は「他の医薬品と区別して貯蔵」すれば、施錠していない調剤棚への貯蔵も可能。 |
| 2 ★ | 他の物と区別して貯蔵 | ◯ 薬機法第48条により、劇薬は他の医薬品と区別して貯蔵・陳列しなければならない。これは劇薬・毒薬に共通する基本的な保管規定。 |
| 3 | 盗難時は都道府県知事への届出 | × 劇薬の盗難・紛失について、薬機法上都道府県知事への届出義務は規定されていない。届出義務があるのは麻薬・向精神薬・覚醒剤原料等の盗難時(麻薬及び向精神薬取締法等に基づく)であり、劇薬とは異なる制度。 |
| 4 | 薬袋に白地赤枠赤字で「劇」表示 | × 「白地に赤枠、赤字をもって品名及び『劇』の文字を記載」は劇薬を収める容器・被包への表示義務(薬機法第44条)であり、薬局が患者に交付する際の薬袋への表示義務を直接定めたものではない。製造販売業者が製品自体に行う表示規定と、薬局の調剤・交付実務上の薬袋表示を区別する必要がある。 |
| 5 | 廃棄時に都道府県知事への事前届出 | × 劇薬の廃棄について都道府県知事への事前届出義務は規定されていない。劇薬は他の医薬品と同様、廃棄物処理法等に基づき適切に廃棄すればよく、麻薬の廃棄(都道府県知事への届出・職員立会い等)のような特別な手続は不要。 |
・選択肢1:「施錠」を要求するのは毒薬。劇薬と毒薬の保管規定の違いが最頻出ポイント。
・選択肢3・5:「都道府県知事への届出」というフレーズは麻薬関連の規定を連想させる引っかけ。劇薬にはこうした行政への届出義務はない。
・選択肢4:「白地に赤枠赤字+『劇』」自体は劇薬の正しい表示方法だが、これは製造販売業者が行う容器・被包への表示規定。「薬袋への記載義務」という対象のすり替えに注意。


毒薬・劇薬の保管規定の整理:「毒」は施錠保管が必須、「劇」は施錠不要だが他の医薬品と区別して貯蔵すればOK。覚え方は「毒は鍵をかけて閉じ込める(劇は鍵なしで隔離するだけ)」。容器・被包の表示は、毒薬が黒地に白枠白字で品名及び「毒」、劇薬が白地に赤枠赤字で品名及び「劇」と対比して覚えましょう。
タクロリムス軟膏とステロイドの使い分け:顔面・頸部の皮疹は長期ステロイド使用で皮膚萎縮・毛細血管拡張のリスクが高いため、タクロリムス軟膏への切り替えがよく行われます。一方で使用初期の灼熱感・刺激感はアドヒアランス低下の原因になりやすいため、「使い始めは熱く感じることがあるが、続けるうちに軽減することが多い」と事前に伝えることが服薬指導の重要ポイントです。
小児用タクロリムス軟膏(0.03%)の特徴:成人用は0.1%、小児(2歳以上15歳未満)には0.03%が用いられる。いずれも劇薬指定であり、本症例(8歳男児)でも劇薬としての取扱いが問われる点が、実務(318)と法規(319)を連動させた良問構成になっています。
1回あたりの塗布量上限:小児用0.03%製剤は年齢・体重に応じて1回あたりの塗布量上限が定められており、1回5g(1本)を超えて塗布してはならないという安全上のルールがあります。処方監査の際は、年齢・体重と処方された総量(本症例では5g)が上限を超えていないか必ず確認しましょう。












