【第110回薬剤師国家試験】問116 シトシンの脱アミノ反応によるDNA変異とアミノ酸配列 解説

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第110回 問116
第110回 問116
理論問題|生物
シトシンの脱アミノ反応によるDNA変異とアミノ酸配列
問116(理論)
図1に示すDNAの塩基配列は、ある遺伝子のセンス鎖の一部で、転写・翻訳されるときの読み枠は配列の下に示されている。この塩基配列中*印のシトシン残基2ケ所に脱アミノ反応が生じた。変化したヌクレオチド残基が修復されずに塩基配列の変異が2ケ所とも固定した。ただし、フレームシフト変異は起きていない。変異したDNAが転写・翻訳されてできるタンパク質の当該部分のアミノ酸配列はどれか。1つ選べ。図2にコドン対応表を示す。
図1:DNAセンス鎖の塩基配列5'-ACTGAACGT-3'(*印のシトシン2ヶ所を含む、コドンごとに区切り)。図2:コドン対応表
図1:DNA塩基配列(*はシトシン残基) / 図2:コドン対応表
1
Thr-Glu-Arg
2
Ile-Glu-Cys
3
Thr-Glu-Cys
4
Leu-Glu-Trp
正解です!
解説でシトシン脱アミノ反応による変異の流れを確認しましょう。
×
不正解です。正解は 2 です。
解説でシトシン脱アミノ反応による変異の流れを確認しましょう。
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シトシン(C)は脱アミノ反応(自然発生的な加水分解反応)によって、ウラシル(U)に変化します。DNA中に生じたウラシルは通常DNA修復機構(ウラシルDNAグリコシラーゼなど)により除去・修復されますが、修復されないまま複製が進むと、DNAポリメラーゼはウラシルをチミン(T)と同様に読み、相補鎖にアデニン(A)を挿入します。その結果、次の複製サイクルでC→Tの塩基置換(トランジション変異)が固定されます。

変異の流れ
① 元のセンス鎖:5′-ACT GAA CGT-3′(*印のCが2ヶ所、それぞれ1番目の位置)
② シトシンの脱アミノ反応:C→U(修復されず)
③ 複製後に固定:C→T(2ヶ所とも)
④ 変異後のセンス鎖:5′-ATT GAA TGT-3′
⑤ mRNA(センス鎖と同じ配列でT→U):5′-AUU GAA UGU-3′
⑥ コドン表で翻訳:AUU=Ile、GAA=Glu、UGU=Cys
各選択肢の解説
× 1 Thr-Glu-Argは、変異が起こるの元の配列(ACT-GAA-CGT → ACU-GAA-CGU → Thr-Glu-Arg)に対応するアミノ酸配列であり、変異後のものではない
◯ 2 Ile-Glu-Cysが、2ヶ所のC→T変異後(ATT-GAA-TGT → AUU-GAA-UGU)に対応する正しいアミノ酸配列である
× 3 Thr-Glu-Cysは、1つ目のコドン(1番目のCの変異)を反映せず、Thr(元のまま)としてしまっている誤り
× 4 Leu-Glu-Trpは、コドン表の読み違い、またはあり得ない変異パターンに基づく誤答である
引っかけポイント:
・1番目のコドン(ACT→ATT)と3番目のコドン(CGT→TGT)、両方のC→T変異を見落とさず反映させる必要がある。片方だけ変異を適用すると選択肢3のような誤りに陥る
・「センス鎖=mRNAと同じ配列(T→Uのみ置換)」という関係を正しく理解していないと、アンチセンス鎖(鋳型鎖)の配列と混同してしまう
・シトシンの脱アミノ反応は「C→U→(修復されなければ)T」という流れであり、直接C→Tになるわけではない点も押さえておく
臨床メモ
あおい
薬剤師 あおい

シトシンの脱アミノ反応は、体内で日常的に一定の頻度で自然発生している化学反応です。これを見逃さず修復する「塩基除去修復(BER)」の仕組み(ウラシルDNAグリコシラーゼなど)が正常に働かないと、こうした変異が蓄積し、発がんのリスクにもつながります。

また、CpG配列(シトシンの後にグアニンが続く配列)ではシトシンがメチル化を受けやすく、メチル化シトシンが脱アミノ反応を起こすとチミンに変化するため、C→T変異のホットスポットになりやすいことも知られています。がん遺伝子研究や薬理遺伝学の分野でもよく登場する重要な現象です。

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