【第110回薬剤師国家試験】問276-277 がん性疼痛管理におけるオピオイド製剤の特徴とフェンタニル舌下錠の服薬指導 解説

  • URLをコピーしました!
第110回 問276-277
第110回 問276-277
実践問題|薬剤(276)・実務(277)
がん性疼痛管理におけるオピオイド製剤の特徴とフェンタニル舌下錠の服薬指導
問276-277(連問)共通問題文
問276-277 68歳女性。15年前、乳がんにより右乳房の切除術を受けた。再発なく経過していたが、3年前に腰痛が出現し、骨転移、胸膜転移及び右胸水を認めたため、再発と診断された。オピオイドによる疼痛管理が開始され、1年前からは緩和医療に移行し、処方1及び処方2の薬剤を使用していた。
(処方1)
フェンタニルクエン酸塩テープ4 mg(1日用)(注1)
1回1枚(1日1枚)
1日1回 24時間毎 7日分
(処方2)
モルヒネ塩酸塩水和物内用液10 mg
1回2包(10 mg/包)
疼痛時内服 10回分(全20包)
その後、皮膚に対する副作用が強く出現したため、処方1の薬剤の貼付部位の変更や保湿を行ったが改善されず、処方1を処方3に変更した。
(処方3)
ヒドロモルフォン塩酸塩徐放錠24 mg(注2)
1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 7日分
注1 フェンタニルクエン酸塩テープの断面図と有効成分の構造式及び物性
注2 ヒドロモルフォン塩酸塩徐放錠24 mgの組成及び性状
問276(薬剤)
処方1及び処方3の薬剤に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 処方1の薬剤は、定常状態で薬物を0次放出する。
2 処方1の薬剤の1枚当たりの有効成分含量は、フェンタニルに換算して2.55 mgである。
3 処方1の薬剤からの有効成分の吸収量は、貼付部位の温度が上昇すると増大する。
4 処方3の薬剤は、シングルユニット型のリザーバー型製剤である。
5 処方3の薬剤は、初回分を処方1の薬剤の剥離直後に服用する。
正解です!
正答:2, 3
×
不正解です
正答:2, 3
問277へ続く
問277(実務)
処方3の薬剤に変更後、持続痛は適切に管理されていた。しかし、6ケ月を過ぎた頃、突出痛に対する処方2の薬剤の効果が不十分となった。医師は、処方2の薬剤の投与量を増量したが、服用後に不快な眠気が続くようになったため、処方2を処方4に変更した。
(処方4)
フェンタニルクエン酸塩舌下錠100 μg
1回1錠
疼痛時 舌下投与 10回分
薬剤師が患者に伝える内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 処方2の薬剤に比べ作用の発現が速いので、突出痛に対し迅速に対応できる。
2 最小用量から開始し、1回の最適量は、症状に応じて医師が段階的に調節する。
3 痛みが強いときは、錠剤を噛み砕いてから舌下におく。
4 口の中が乾燥している場合は、口に水を含み、含んだ水で溶かすように使用する。
5 突出痛に加え、持続性疼痛が増強されたときにも使用する。
正解です!
正答:1, 2
×
不正解です
正答:1, 2
解説を見る(問276)

処方1のフェンタニルテープは、注1の断面図から「膏体(薬物含有層)/支持体/ライナー」の3層構造であることが分かり、薬物放出を一定に保つための放出制御膜を持たない「マトリックス型」の経皮吸収製剤です。処方3のヒドロモルフォン徐放錠は、注2より「素錠(徐放錠)」という単一の錠剤(シングルユニット)であることが分かります。

選択肢2:注1に示された分子量528.59・塩係数1.57から、フェンタニルクエン酸塩4 mg(塩の重量)をフェンタニル(遊離塩基)に換算すると、4 mg ÷ 1.57 ≈ 2.55 mgとなり、記述と一致します。医薬品の含量表示が「クエン酸塩としての重量」であることに注意が必要な計算問題です。
選択肢3:フェンタニルは脂溶性が高く、皮膚温の上昇により皮膚透過性・血流が増加するため、発熱や電気毛布・カイロの使用、入浴などで貼付部位の温度が上がると、吸収量が増大し、過量投与のリスクが高まります。
引っかけポイント:
選択肢1:真の0次放出(一定速度での放出)は、薬物含有層の外側に放出速度を制御する膜を持つ「リザーバー型(膜透過型)」製剤で成立する考え方です。処方1はマトリックス型であり、放出制御膜を持たないため、定常的な0次放出とは言えません。
選択肢4:処方3は単一の錠剤(シングルユニット型)ですが、「リザーバー型」ではなく、添加物の構成からマトリックス(基剤)型の徐放システムと考えられます。単一剤形であることと放出機構(リザーバー型か否か)は別の軸であることに注意が必要です。
選択肢5:フェンタニルテープは剥離後も皮膚内に薬物が残留し(皮膚デポー)、剥離後もしばらく吸収が続くことが知られています。剥離直後に新たな長時間作用型オピオイドを開始すると、体内のフェンタニルと重複して過量投与となるおそれがあるため、一定の間隔をあけてから次のオピオイドを開始する必要があります。
あおい先生
あおい先生の臨床メモ
「マトリックス型」と「リザーバー型」の違いは、貼付剤・徐放製剤の設計思想の違いとして繰り返し問われます。「放出を制御する膜があるかどうか」という一点に注目すると整理しやすいです。また、フェンタニルテープの含量表示が塩の重量であることも、実際の臨床現場での換算ミスにつながりやすいポイントなので、しっかり押さえておきたいですね。
解説を見る(問277)

フェンタニルクエン酸塩舌下錠は、口腔粘膜から速やかに吸収される速効性オピオイド(ROO:Rapid Onset Opioid)製剤であり、がん性疼痛における突出痛の治療に特化した薬剤です。モルヒネ内服液などの経口オピオイドに比べて作用発現が早い一方、個人差の大きい吸収特性を持つため、投与にあたっては厳格な用量調節(タイトレーション)のルールが定められています。

選択肢1:舌下錠は口腔粘膜から直接吸収されるため、消化管吸収を経る経口液剤に比べて作用発現が速く、数分単位で症状が出現する突出痛への対応に適しています。
選択肢2:フェンタニル舌下錠は、患者ごとに効果が異なるため、最小用量(100 μg)から開始し、鎮痛効果と副作用のバランスをみながら医師が段階的に至適用量を決定していく、個別のタイトレーションが必須とされています。
引っかけポイント:
選択肢3:舌下錠は、噛み砕いたり飲み込んだりせず、そのまま舌下に置いて自然に溶解させることで、口腔粘膜からの速やかな吸収を得られるように設計されています。噛み砕くと吸収経路や吸収速度が変わり、想定外の作用が生じるおそれがあります。
選択肢4:口腔内の乾燥時に水で錠剤を溶かして使用する方法は、添付文書上の使用方法とは異なり、意図した口腔粘膜からの吸収プロファイルが得られなくなるおそれがあるため、指導内容としては不適切です。
選択肢5:フェンタニル舌下錠は、あくまで一過性の「突出痛」に対するレスキュー薬であり、持続性疼痛(ベースの痛み)が増強した場合は、処方3(徐放性オピオイド)の増量など、ベースとなる治療の見直しで対応すべきであり、舌下錠を代用してはいけません。
あおい先生
あおい先生の臨床メモ
速効性フェンタニル製剤は「よく効く分、使い方を誤ると危険」という薬の代表例です。用法を守らないと本来の吸収プロファイルから外れてしまい、効果不足や過量投与につながることもあるので、導入時にしっかり時間をかけて説明したいポイントですね。
第110回 薬剤師国家試験 解説トップへ

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次