【第110回薬剤師国家試験】問272-273 フェノバルビタール中毒の治療(球形吸着炭・尿のアルカリ化)と回復後の退薬症状 解説

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第110回 問272-273
第110回 問272-273
実践問題|薬剤(272)・実務(273)
フェノバルビタール中毒の治療(球形吸着炭・尿のアルカリ化)と回復後の退薬症状
問272-273(連問)共通問題文
問272-273 25歳女性。身長160 cm、体重55 kg。朝、自室から起床してこないため、心配に思った家族が部屋の中に入ったところ、ベッドの上で仰向けになって意識を失っていた。呼びかけに反応しなかったため、救急隊を要請した。病院搬送時の意識レベルはJapan Coma Scale(JCS)200、血圧100/55 mmHg、脈拍105拍/分、呼吸15回/分、体温36.0℃であった。採取した尿を用いて定性試験でバルビツール酸類が強陽性であった。家族からの情報によると、女性は以前よりてんかん治療のためフェノバルビタールを常用しており、たびたび体調を崩していた。胃内容物を分析したところ、フェノバルビタールが検出され、過量摂取による意識障害と診断された。
問272(薬剤)
薬剤師がフェノバルビタールの血清中濃度を測定したところ、65 μg/mLであった。医師は、球形吸着炭の6時間ごとの繰り返し投与、及び炭酸水素ナトリウム注射液の持続投与を開始した。2日後、フェノバルビタールの血清中濃度は40 μg/mLとなり、意識は徐々に回復した。
フェノバルビタールの体内動態に及ぼす球形吸着炭及び炭酸水素ナトリウムの作用として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 血漿タンパク結合の阻害
2 肝取り込みの促進
3 腸肝循環の抑制
4 尿細管分泌の促進
5 尿細管再吸収の抑制
正解です!
正答:3, 5
×
不正解です
正答:3, 5
問273へ続く
問273(実務)
3日後には、この患者の意識は完全に回復した。しかし、病棟薬剤師が患者の異変に気付き、医師とともに症状を確認したところ、一過性の退薬症状が出現したと考えられた。
観察された症状として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 不安
2 傾眠
3 手指振戦
4 発疹
5 過度の心拍数低下
正解です!
正答:1, 3
×
不正解です
正答:1, 3
解説を見る(問272)

フェノバルビタール中毒に対する治療は、消化管からの吸収阻止・排泄促進を目的とした「反復投与活性炭(球形吸着炭)」と、弱酸性薬物であるフェノバルビタールの尿中排泄を促進する「尿のアルカリ化(炭酸水素ナトリウム)」の組合せが代表的です。

選択肢3:球形吸着炭を繰り返し投与すると、血中から消化管腔内へ拡散したフェノバルビタールや、胆汁を介して腸管内に排泄されたフェノバルビタールを吸着し、便中への排泄を促すことで、腸肝循環を抑制し、体内からの消失を促進します(いわゆる「消化管透析」)。
選択肢5:フェノバルビタールは弱酸性薬物(pKa約7.3)であるため、炭酸水素ナトリウムの投与により尿がアルカリ性に傾くと、尿細管腔内でイオン形の割合が増加し、非イオン形に比べて尿細管上皮からの再吸収がされにくくなります(イオントラッピング)。その結果、尿中への排泄が促進されます。
引っかけポイント:
選択肢1:球形吸着炭・炭酸水素ナトリウムのいずれも、フェノバルビタールの血漿タンパク結合を阻害する作用は知られていません。
選択肢2:肝取り込みを促進する作用ではなく、腸管からの再吸収を抑制する作用(腸肝循環の抑制)が球形吸着炭の本体です。
選択肢4:尿のアルカリ化による効果は、能動的な「尿細管分泌の促進」ではなく、受動拡散による「尿細管再吸収の抑制」(イオントラッピング)です。
あおい先生
あおい先生の臨床メモ
「反復投与活性炭による腸肝循環の抑制」と「尿アルカリ化によるイオントラッピング」は、フェノバルビタールやサリチル酸など、弱酸性薬物の中毒治療でセットで問われる典型パターンです。どちらも「排泄を促進する」という結果は同じでも、作用している場所(消化管 vs 腎臓)と仕組みが異なる点を押さえておきましょう。
解説を見る(問273)

フェノバルビタールはバルビツール酸系薬物であり、長期の常用により身体的依存が形成されます。今回、中毒治療として球形吸着炭・尿のアルカリ化によって血中濃度が急速に低下したことが、事実上の急激な減薬・中断と同様の状況を作り出し、一過性の退薬症状(離脱症状)を引き起こしたと考えられます。バルビツール酸系・ベンゾジアゼピン系・アルコールなどの中枢神経抑制薬の離脱症状は、中枢神経の抑制が急に解除されることによる「反跳性の中枢神経興奮症状」として現れるのが特徴です。

選択肢1:不安は、バルビツール酸系薬物の離脱症状として代表的な精神症状の一つです。
選択肢3:手指振戦は、中枢神経系の抑制が急激に解除されることに伴う神経系の興奮症状として、離脱症状に特徴的にみられます。
引っかけポイント:
選択肢2:傾眠は、フェノバルビタールそのものの中枢神経抑制作用(中毒症状)でみられる所見であり、抑制が解除される離脱症状としては逆の方向の症状です。
選択肢4:発疹は、バルビツール酸系薬物の過敏症・アレルギー反応でみられることがある副作用であり、離脱症状として典型的なものではありません。
選択肢5:離脱症状では、中枢神経系の興奮に伴い交感神経系が優位となるため、心拍数は低下ではなくむしろ上昇(頻脈)する方向にはたらきます。
あおい先生
あおい先生の臨床メモ
「中毒症状」と「離脱症状」は、ちょうど正反対の方向の症状になることが多いのがポイントです。フェノバルビタールが効きすぎている状態(中毒)では意識障害・傾眠・呼吸抑制がみられる一方、急激に薬が抜けた状態(離脱)では不安・振戦・頻脈といった興奮症状が現れます。この「表と裏」の関係を意識すると、選択肢の正誤がぐっと判断しやすくなりますよ。
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