第111回
問154-155
理論問題|病態・薬物治療/薬理
双極性障害(30歳女性)の症状と治療薬
【症例】30歳女性。高校3年生のときにきっかけもなく元気がなくなり、3ヶ月間学校を休んだことがあったが、特に治療を受けずに回復した。その後は順調であったが、1ヶ月前に急に元気がなくなり、会社を休んだりしていた。ここ数日は「偉大な発見をしたので、自分には特別な才能がある」と言ったり、誰彼構わず夜中に電話をするといった状態が持続するため、母親に連れられて来院した。母親によると2週間前から母親と話していても、話の内容が次々と脱線し、話している内容がまとまらない、些細なことを契機に怒り出すなど、普段とは異なる行動がみられた。睡眠をほとんどとっていないが、本人は疲れを感じていない。親戚や友人への電話で家や車の購入計画などを話し、相手が反対すると激怒するようになった。血液生化学検査、脳画像検査、脳波検査、脳脊髄液検査で異常はない。飲酒・喫煙歴なし。違法薬物の使用歴もない。診察の結果、患者は双極性障害と診断された。
問154(病態・薬物治療)
この患者に認められる症状はどれか。2つ選べ。
1
観念奔逸
—
2
誇大妄想
—
3
心気妄想
—
4
罪業妄想
—
5
貧困妄想
—
正解です!
躁状態の特徴的な症状を正確に把握できています。
不正解です。正解は 1 と 2 です。
解説で躁状態の症状分類を確認しましょう。
問155(薬理)
双極性障害に用いられる薬物の薬理作用に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1
炭酸リチウムは、イノシトール1-リン酸分解酵素を阻害し、ホスファチジルイノシトール(PI)代謝回転を充進させる。
—
2
オランザピンは、電位依存性Ca²⁺チャネルのα₂δサブユニットに結合し、興奮性神経伝達物質の遊離を抑制する。
—
3
アリピプラゾールは、ドパミンD₂受容体及びセロトニン5-HT₁A受容体に対して部分刺激薬として作用する。
—
4
カルバマゼピンは、γ-アミノ酪酸(GABA)トランスアミナーゼを阻害し、脳内GABA量を増加させる。
—
5
ラモトリギンは、電位依存性Na⁺チャネルを遮断し、神経細胞の過剰興奮を抑制する。
—
正解です!
双極性障害治療薬の作用機序を正確に把握できています。
不正解です。正解は 3 と 5 です。
解説で各薬物の作用機序を確認しましょう。
解説を見る(問154・155)
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【問154】症例の読み取り:双極性障害の躁状態
症例の特徴:「偉大な発見・特別な才能がある」(誇大感)、話が脱線・まとまらない(思考の飛躍)、夜間も活動的・睡眠不要感、浪費計画(家や車の購入)、易怒性。これは双極性障害の躁エピソードの典型例。
・観念奔逸:思考がとめどなく連続し話題が次々変わる → 本症例に該当
・誇大妄想:自分が特別な能力を持つという確信(「特別な才能がある」)→ 本症例に該当
・心気妄想・罪業妄想・貧困妄想はうつ状態の典型的症状
・観念奔逸:思考がとめどなく連続し話題が次々変わる → 本症例に該当
・誇大妄想:自分が特別な能力を持つという確信(「特別な才能がある」)→ 本症例に該当
・心気妄想・罪業妄想・貧困妄想はうつ状態の典型的症状
| 選択肢 | 症状 | 判定・理由 |
|---|---|---|
| 1 ★ | 観念奔逸 | ◯ 思考が次々飛躍して話がまとまらない状態。躁状態の特徴的思考障害 |
| 2 ★ | 誇大妄想 | ◯ 自分の能力・重要性を過大評価する妄想。「特別な才能がある」が該当 |
| 3 | 心気妄想 | × 自分が重篤な病気にかかっているという確信。うつ状態でみられる |
| 4 | 罪業妄想 | × 些細なことを大きな罪として自分を責める。うつ状態でみられる |
| 5 | 貧困妄想 | × 財産を失った・貧困になるという確信。うつ状態でみられる |
【問155】双極性障害治療薬の薬理作用
| 選択肢 | 薬物・記述 | 判定・理由 |
|---|---|---|
| 1 | 炭酸リチウム:PI代謝回転を充進させる | × イノシトール1-リン酸分解酵素を阻害した結果、イノシトールが枯渇してPI代謝回転は低下する(充進ではない) |
| 2 | オランザピン:Ca²⁺チャネルα₂δ結合→興奮性伝達物質遊離抑制 | × α₂δサブユニット結合はプレガバリン・ガバペンチンの特徴。オランザピンはD₂・5-HT₂A受容体遮断薬 |
| 3 ★ | アリピプラゾール:D₂・5-HT₁A受容体の部分刺激薬 | ◯ D₂受容体部分アゴニスト(過剰時は遮断的・不足時は刺激的)および5-HT₁A受容体部分アゴニストとして作用する |
| 4 | カルバマゼピン:GABAトランスアミナーゼ阻害→GABA増加 | × GABAトランスアミナーゼ阻害はバルプロ酸の機序。カルバマゼピンの主な作用は電位依存性Na⁺チャネル遮断 |
| 5 ★ | ラモトリギン:Na⁺チャネル遮断→神経過剰興奮抑制 | ◯ 電位依存性Na⁺チャネルを遮断してグルタミン酸遊離を抑制。双極性障害のうつ状態維持療法に有効 |
⚠️ 引っかけポイント(問155・選択肢順):
・選択肢1:炭酸リチウムはPI代謝回転を「充進」ではなく低下させる
・選択肢2:α₂δサブユニット結合はプレガバリン・ガバペンチン
・選択肢4:GABAトランスアミナーゼ阻害はバルプロ酸。カルバマゼピンはNa⁺チャネル遮断
・選択肢1:炭酸リチウムはPI代謝回転を「充進」ではなく低下させる
・選択肢2:α₂δサブユニット結合はプレガバリン・ガバペンチン
・選択肢4:GABAトランスアミナーゼ阻害はバルプロ酸。カルバマゼピンはNa⁺チャネル遮断
臨床メモ
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薬剤師 あおい
炭酸リチウムは有効血中濃度域が狭く(0.6〜1.2 mEq/L)、TDMが必須です。NSAIDs・利尿薬との併用でリチウム濃度が上昇し中毒(振戦・嘔吐・意識障害)のリスクがあるため、薬局での相互作用確認が重要です。
ラモトリギンは皮膚障害(Stevens-Johnson症候群)のリスクがあり、特にバルプロ酸との併用時は血中濃度が上昇するため用量を大幅に減量する必要があります。










