第111回
問191
理論問題|病態・薬物治療
バセドウ病の血液検査所見
【症例】
20歳女性。3ケ月前から動悸、発汗、手の振戦及び4 kgの体重減少を認めた。近医を受診したところ、体温は37.2℃であり、均一で弾力性に富む甲状腺腫大を指摘された。血液検査では、遊離チロキシン(FT4)2.8 ng/dL であり、抗チログロブリン抗体が陽性であった。
本症例で認められることが多い他の血液検査所見として適切なのはどれか。2つ選べ。
1
LDLコレステロール高値
—
2
甲状腺刺激ホルモン(TSH)高値
—
3
クレアチンキナーゼ(CK)高値
—
4
アルカリホスファターゼ(ALP)高値
—
5
抗TSH受容体抗体陽性
—
正解です!
正答:4と5
不正解です
正答:4と5
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💡 症例の診断はバセドウ病(甲状腺機能亢進症)。FT4高値+甲状腺腫大+動悸・発汗・体重減少・振戦の典型症状。バセドウ病ではTSHは低値(フィードバック抑制)、抗TSH受容体抗体(TRAb)が陽性になる。
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 LDLコレステロール高値 |
× | 甲状腺ホルモン過剰はLDL受容体を増加させ、LDL-Cの取り込みを促進する。そのため甲状腺機能亢進症ではLDL-Cは低値になる。LDL-C高値は甲状腺機能低下症(橋本病など)の特徴。 |
| 2 TSH高値 |
× | バセドウ病ではTSH受容体に対する自己抗体(TRAb)が甲状腺を過剰刺激し、FT4が高値になる。FT4高値により下垂体へのネガティブフィードバックが働き、TSHは著明に低値(抑制)となる。 |
| 3 CK高値 |
× | CK(クレアチンキナーゼ)高値は筋肉障害の指標。甲状腺機能低下症では筋症状(ミオパチー)によりCKが上昇することがある。機能亢進症ではCKは通常正常〜低値。 |
| 4 ALP高値 |
◯ | 甲状腺ホルモン過剰は骨代謝回転を亢進させ、骨型ALPが上昇する。また、肝臓での代謝亢進も肝型ALPの上昇に寄与する。バセドウ病でのALP高値は頻度が高く、骨粗鬆症リスクとしても重要。 |
| 5 抗TSH受容体抗体陽性 |
◯ | 抗TSH受容体抗体(TRAb、別名:甲状腺刺激抗体TSAb)はバセドウ病の診断的自己抗体。TSH受容体を刺激し甲状腺ホルモンの過剰産生を引き起こす。陽性率は約90%以上。 |
⚠️ 引っかけポイント(選択肢順):
・選択肢1・3:LDL高値・CK高値は甲状腺機能低下症(橋本病)の特徴。機能亢進症(バセドウ病)と低下症の検査所見を対比して覚える。
・選択肢2:FT4↑→TSH↓(ネガティブフィードバック)。バセドウ病のTSHは低値。「高値」に惑わされない。
📌 甲状腺機能亢進症 vs 低下症の検査所見まとめ
亢進症(バセドウ病):FT4↑・TSH↓・TRAb陽性・LDL↓・ALP↑
低下症(橋本病など):FT4↓・TSH↑・抗TPO抗体陽性・LDL↑・CK↑
・選択肢1・3:LDL高値・CK高値は甲状腺機能低下症(橋本病)の特徴。機能亢進症(バセドウ病)と低下症の検査所見を対比して覚える。
・選択肢2:FT4↑→TSH↓(ネガティブフィードバック)。バセドウ病のTSHは低値。「高値」に惑わされない。
📌 甲状腺機能亢進症 vs 低下症の検査所見まとめ
亢進症(バセドウ病):FT4↑・TSH↓・TRAb陽性・LDL↓・ALP↑
低下症(橋本病など):FT4↓・TSH↑・抗TPO抗体陽性・LDL↑・CK↑
🔗 関連記事:バセドウ病と橋本病の違い・覚え方はこちら
→【薬剤師国家試験】バセドウ病と橋本病の違い・覚え方!どっちがどっち?を解決|薬剤師の気まぐれノート
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臨床メモ
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薬剤師 あおい
バセドウ病の薬物治療はチアマゾール(MMI)またはプロピルチオウラシル(PTU)。チアマゾールは無顆粒球症(問186参照)に注意が必要です。また、バセドウ病患者が妊娠した場合はPTUが優先される(チアマゾールの催奇形性リスクを避けるため)が、妊娠中期以降はチアマゾールへ切り替えることもあります。処方変更の理由を患者に説明できると信頼が高まります。










