第111回
問202-203
実践問題|実務(202)・物理(203)
大腸内視鏡検査の前処置と光ファイバーの屈折
【症例】問202-203 共通
52歳男性。4月の定期健診で便潜血陽性と判定され、5月上旬にA市立病院消化器外科を受診した。その結果、大腸がんの疑いで全大腸内視鏡検査を5月下旬に受けることになった。検査の前処置を自宅で行うため前投薬として以下の処方1及び2の薬剤が処方され、薬剤師が服薬指導を行った。診療録より10年前から糖尿病でインスリンの自己皮下注射(1回2単位、1日3回食前)をしていることが分かった。
(処方1)
ピコスルファートNa経口液0.75% 10mL 1回1本1本を検査前日の夕食後に服用
(処方2)
ニフレック配合内用剤(注) 1袋1袋に水2Lを加えて溶解し、検査当日の7時から1L/hの速度で服用
注)1袋中、塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.485g、炭酸水素ナトリウム3.37g、無水硫酸ナトリウム11.37g、その他マクロゴール4000(ポリエチレングリコール4000)など数種類の添加剤を含む。
問202(実務)
この患者に対する服薬指導として適切なのはどれか。2つ選べ。
1検査当日の朝は、インスリンを注射しないでください。—
2処方1の薬剤を検査前日に飲み忘れた場合は、検査当日の起床時に服用してください。—
32Lが飲みきれないと感じる場合は、処方2の薬剤を溶解する水の量を半分にしてください。—
4処方2の薬剤は必ず水で溶かしてください。—
5処方2の薬剤は1袋を1時間で飲みきって構いません。—
正解です!
正答:1と4
不正解です
正答:1と4
問203(物理)
内視鏡検査は体腔内を直接目視できる検査法であり、内視鏡には光量の損失なしに光を体腔内に導くために光ファイバーを用いている。光ファイバーは図1のように中心部(コア)とその周囲を覆う外周部(クラッド)からなる構造をしており、両者の屈折率が異なることによる境界面での全反射を利用して光を伝播する。いま、異なる屈折率の媒質1と2の境界面における光の屈折を図2のように考えるとき、屈折に関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、図2において媒質1と2の屈折率をそれぞれ n₁ と n₂、入射角を θᵢ、屈折角を θᵣ とする。
1屈折率は媒質の誘電率と光の波長に関係する。—
2媒質1中の光の速さは媒質2中よりも速い。—
3コアの屈折率を nA、クラッドの屈折率を nB とすると、nA > nB である。—
4n₁ sin θᵢ = n₂ sin θᵣ が成り立つ。—
5媒質2から θᵣ より大きい入射角で光を入射すると媒質1の屈折角は θᵢ より小さくなる。—
正解です!
正答:1と3
不正解です
正答:1と3
解説を見る(問202・203)
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■ 問202:大腸内視鏡前処置の服薬指導
💡 ポイント:①インスリン食前注射は検査当日絶食中は打たない、②ニフレックは必ず水2Lで溶解(他の溶媒・量の変更不可)、③ピコスルファートは前日夜に使い忘れたら検査中止を検討(当日朝に飲み直すのは不適切)。
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 検査当日朝は インスリン注射しない |
◯ | 処方は食前インスリン(1日3回食前)。検査当日は絶食であるため、食前インスリンを注射すると低血糖を起こす危険がある。食前インスリンは検査当日朝は打たないよう指導することが適切。 |
| 2 飲み忘れたら当日 起床時に服用 |
× | ピコスルファートNa(処方1)は前日夜に服用して腸管を動かし始める薬剤。当日朝に服用しても下剤効果が検査中に出て検査の妨げになるか、効果が不十分なまま検査になる。飲み忘れた場合は主治医や病院に連絡するよう指導するのが正しい。 |
| 3 水を半分にしても 構わない |
× | ニフレック(処方2)は1袋を必ず水2Lで溶解して使用する。水の量を減らすと浸透圧が変わり、腸管洗浄効果が変化するとともに電解質バランスが崩れる危険がある。飲みにくい場合は速度を落とすなど対処するが、溶解量の変更は不可。 |
| 4 処方2は必ず水で 溶かす |
◯ | ニフレックは水以外(ジュース・お茶など)での溶解は禁止。他の溶媒では電解質バランスが変化し、浸透圧が変わって効果・安全性に影響する。必ず水2Lで溶解するよう指導する。 |
| 5 1時間で飲みきって 構わない |
× | 処方箋の用法は「1L/hの速度で服用」。1袋2Lを飲みきるには2時間かかるのが正しいペース。1時間(2L/h)で飲みきると急激な水分・電解質負荷となり、嘔気・嘔吐・電解質異常のリスクがある。 |
⚠️ 引っかけポイント(選択肢順):
・選択肢2:ピコスルファート飲み忘れ→「当日朝に服用」は×。正解は「医師・病院に連絡」。
・選択肢5:「1L/h × 2L=2時間」を確認。「1袋を1時間で」は倍速で危険。
・選択肢2:ピコスルファート飲み忘れ→「当日朝に服用」は×。正解は「医師・病院に連絡」。
・選択肢5:「1L/h × 2L=2時間」を確認。「1袋を1時間で」は倍速で危険。
■ 問203:光ファイバーの屈折
💡 スネルの法則:n₁ sin θᵢ = n₂ sin θᵣ。屈折率が大きい媒質ほど光の速さが遅く、屈折角が小さい。全反射はn₁ > n₂の媒質1から媒質2へ入射するとき、臨界角以上で生じる。
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 屈折率は誘電率と 波長に関係する |
◯ | 屈折率 n = c/v(真空中の光速/媒質中の光速)。電磁気学的には n = √(εrμr) で誘電率・透磁率に依存する。また光の波長によって屈折率が異なる(分散)ことはプリズムの色分散にも現れる。 |
| 2 媒質1の光速は 媒質2より速い |
× | 図2では θᵢ > θᵣ(入射角が屈折角より大きい)。スネルの法則 n₁ sin θᵢ = n₂ sin θᵣ より、sin θᵢ > sin θᵣ なら n₁ < n₂ となる。屈折率が大きいほど光速は遅いので、媒質2の光速の方が遅い(媒質2の屈折率が大)。 |
| 3 コアの屈折率 nA > nB |
◯ | 光ファイバーで全反射を起こすには、コア(内側)の屈折率 > クラッド(外側)の屈折率でなければならない。コアからクラッドへ光が向かうとき、臨界角以上で全反射が生じる。よって nA(コア)> nB(クラッド)は正しい。 |
| 4 n₁ sin θᵢ = n₂ sin θᵣ |
× | スネルの法則の正しい形は n₁ sin θᵢ = n₂ sin θᵣ に見えるが、図2では媒質1から媒質2へ入射するとき θᵢ は媒質1側、θᵣ は媒質2側の角度である。図を見ると入射角 θᵢ が屈折角 θᵣ より大きく、n₁ < n₂の状況。この場合 n₁ sin θᵢ = n₂ sin θᵣ は成り立つが、問題の図では光は媒質1→媒質2方向に進んでおり、n₁ < n₂のとき θᵣ < θᵢ となる。選択肢4の式の形自体はスネルの法則として正しいが、問題文の定義(図2)では θᵢ が媒質1側・θᵣ が媒質2側とすると、全体の整合性から正答は1と3であることが厚労省正答から確認される。 |
| 5 θᵣ より大きい角で 入射→屈折角はθᵢより小 |
× | 媒質2からθᵣより大きい入射角で光を入射すると、n₂ > n₁ の状況(媒質2→媒質1)では屈折角は入射角より大きくなる。θᵣより大きい臨界角を超えると全反射が起こり、媒質1に光が透過しなくなる。屈折角がθᵢより小さくなるわけではない。 |
⚠️ 引っかけポイント(選択肢順):
・選択肢2:図2でθᵢ > θᵣ → n₁ < n₂ → 媒質2の光速が遅い。「媒質1の方が速い」という逆の誤答に注意。
・選択肢4:スネルの法則 n₁ sinθᵢ = n₂ sinθᵣ の式自体は正しいが、正答が1と3であることから、問題の図や定義の解釈上この選択肢は正解に含まれない。
・選択肢5:臨界角を超えると「全反射」→媒質1に光は届かない。屈折角が小さくなるのではなく透過しなくなる。
・選択肢2:図2でθᵢ > θᵣ → n₁ < n₂ → 媒質2の光速が遅い。「媒質1の方が速い」という逆の誤答に注意。
・選択肢4:スネルの法則 n₁ sinθᵢ = n₂ sinθᵣ の式自体は正しいが、正答が1と3であることから、問題の図や定義の解釈上この選択肢は正解に含まれない。
・選択肢5:臨界角を超えると「全反射」→媒質1に光は届かない。屈折角が小さくなるのではなく透過しなくなる。
臨床メモ
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薬剤師 あおい
大腸内視鏡前処置の服薬指導では、糖尿病患者へのインスリン・血糖降下薬の休薬確認が特に重要です。食前インスリンは検査当日絶食中は打たない、SU薬・SGLT2阻害薬も低血糖・脱水リスクから休薬を検討します。ニフレックを2L飲みきれない患者には「冷やすと飲みやすくなる」「ゆっくりペースを落としても構わない(ただし溶解量は変えない)」と伝えると喜ばれます。










