第111回
問198-199
実践問題|実務(198)・物理(199)
パリペリドン徐放錠(PAL)への切り替えとOROS製剤の浸透圧計算
【症例】問198-199 共通
60歳女性。統合失調症にて入院中。ハロペリドールと以下の併用薬による治療を受けていたが、手の震えなどの訴えがあった。医師、薬剤師はアカシジアを疑った。医師との合同カンファレンスでハロペリドールをパリペリドン経口徐放錠(PAL)に切り替える方針となった。合同カンファレンス後、医師からPAL 6mg、1日1回就寝前の処方を検討しているとの連絡があった。
(併用薬)
酸化マグネシウム錠330mg 1回1錠(1日2錠) 1日2回 朝夕食後ビペリデン塩酸塩錠1mg 1回1錠 むずむず・流涎あるとき 1日3回まで
(合同カンファレンス直前検査値)
AST 16 IU/L、ALT 13 IU/L、血清クレアチニン 0.66 mg/dL、空腹時血糖 115 mg/dL、HbA1c 6.2%、CCr 72 mL/min
(PALの添付文書に記載された情報)
注)本剤は、浸透圧を利用した放出制御システム(OROS)を応用した、パリペリドンの放出制御型の徐放錠である。規格は3mg、6mg、9mg。
問198(実務)
PALへの切り替えについて薬剤師が医師に提案する内容として適切なのはどれか。2つ選べ。
1服用は朝食後とする。—
2統合失調症の悪化に備えリスペリドンを追加する。—
3切り替えは低用量の3mgから開始する。—
4酸化マグネシウムは他剤に変更する。—
5服用開始後2日目に1日用量の評価を行う。—
正解です!
正答:1と3
不正解です
正答:1と3
問199(物理)※採点除外
⚠️ この問題は採点対象から除外されています(解なし)。
理由:問題文中の濃度の単位に誤りがあり、正解が得られないため。
厚生労働省の訂正:「Na₂SO₄水溶液の濃度が 0.010 mol/L」→ 正しくは「0.010 mmol/L」
理由:問題文中の濃度の単位に誤りがあり、正解が得られないため。
厚生労働省の訂正:「Na₂SO₄水溶液の濃度が 0.010 mol/L」→ 正しくは「0.010 mmol/L」
OROSは半透膜でコートされており、浸透圧による水の流入に伴うプッシュ層の膨潤を利用した徐放性薬物放出システムである。浸透圧によるプッシュ層への水の流入量を計算するモデルとして、大気圧(1.0×10⁵ Pa)下、27℃でNa₂SO₄水溶液と純水を半透膜で仕切られたU字管に同量ずつ入れた。その後、図1のように平衡に達したときの界面の差がh cm、Na₂SO₄水溶液の濃度が0.010 mol/Lとなった。0.010 mol/L Na₂SO₄水溶液と純水の密度は、ともに27℃で1.0 g/mLとする。また、同条件下では水銀柱の高さが図2のように76 cmであった。なお、界面の差h cmを水銀柱の高さx cmに換算するには x = h/14 で求められることがわかっている。h cmの値に最も近いのはどれか。1つ選べ。なお、気体定数は8.3 J/K・molとする。
10.10 cm—
20.80 cm—
32.4 cm—
45.3 cm—
58.0 cm—
解説を見る(問198・199)
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■ 問198:PALへの切り替えの提案内容
💡 PAL(パリペリドン経口徐放錠)はOROS製剤で朝食後服用・食物依存性あり。リスペリドンの活性代謝物であるため、リスペリドンとの併用は過量投与になる。酸化マグネシウムはpH上昇によりOROS製剤の放出に影響しない(相互作用なし)。
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 服用は朝食後 |
◯ | PALは食後(特に高脂肪食後)に服用することでバイオアベイラビリティが上昇する食物依存性製剤。添付文書でも朝食後服用が推奨されている。医師の提案「就寝前」から朝食後への変更を提案することが適切。 |
| 2 リスペリドンを追加 |
× | パリペリドンはリスペリドンの活性代謝物(9-ヒドロキシリスペリドン)であるため、PALとリスペリドンの併用は実質的に過量投与となる危険がある。追加は不適切。 |
| 3 3mgから開始 |
◯ | 初回投与時は低用量の3mgから開始し、効果・副作用を確認しながら増量するのが原則(医師の提案は6mg)。特に本患者はCCr 72 mL/minと腎機能がやや低下しており、パリペリドンは腎排泄型であるため慎重な開始が望ましい。 |
| 4 酸化マグネシウムを変更 |
× | 酸化マグネシウムはpHを上昇させるが、PAL(OROS製剤)は浸透圧を利用した放出制御システムであり、消化管pHの影響を受けにくい。相互作用の問題はなく変更不要。 |
| 5 2日目に用量評価 |
× | PALは徐放製剤であり、定常状態に達するまで約4〜5日かかる。服用開始後2日目での評価は早すぎる。定常状態到達後の評価が適切。 |
⚠️ 引っかけポイント(選択肢順):
・選択肢2:「リスペリドン→パリペリドンに切り替え」なのに、リスペリドンを追加するのは実質二重投与。代謝物の関係を押さえる。
・選択肢4:酸化マグネシウムとOROS製剤の相互作用は原則なし。「pH変化=徐放製剤に影響」とは限らない。
・選択肢5:徐放製剤は定常状態到達(約4〜5日)後に評価。2日目は早すぎる。
・選択肢2:「リスペリドン→パリペリドンに切り替え」なのに、リスペリドンを追加するのは実質二重投与。代謝物の関係を押さえる。
・選択肢4:酸化マグネシウムとOROS製剤の相互作用は原則なし。「pH変化=徐放製剤に影響」とは限らない。
・選択肢5:徐放製剤は定常状態到達(約4〜5日)後に評価。2日目は早すぎる。
■ 問199:解なしの理由と本来の正解の考え方
⚠️ 厚生労働省による訂正内容
問題文の「Na₂SO₄水溶液の濃度が 0.010 mol/L」は誤りで、正しくは「0.010 mmol/L(= 1.0 × 10⁻⁵ mol/L)」。この誤植により正解が得られないとして採点除外となった。
問題文の「Na₂SO₄水溶液の濃度が 0.010 mol/L」は誤りで、正しくは「0.010 mmol/L(= 1.0 × 10⁻⁵ mol/L)」。この誤植により正解が得られないとして採点除外となった。
【問題文の誤り(0.010 mol/L)で計算するとどうなるか】
Na₂SO₄ → 2Na⁺ + SO₄²⁻ ファントホッフ係数 i = 3
C = 0.010 mol/L = 10 mol/m³
π = iCRT = 3 × 10 × 8.3 × 300 = 74,700 Pa
問題文の比率で水銀柱 x を換算:
1.0×10⁵ Pa : 76 cm = 74,700 Pa : x
x = 76 × 74,700 / 1.0×10⁵ = 56.8 cmHg
問題文の公式 x = h/14 より:
h = 14 × 56.8 = 795 cm(!)
→ 選択肢の最大値8.0 cmをはるかに超える → 正解なし
C = 0.010 mol/L = 10 mol/m³
π = iCRT = 3 × 10 × 8.3 × 300 = 74,700 Pa
問題文の比率で水銀柱 x を換算:
1.0×10⁵ Pa : 76 cm = 74,700 Pa : x
x = 76 × 74,700 / 1.0×10⁵ = 56.8 cmHg
問題文の公式 x = h/14 より:
h = 14 × 56.8 = 795 cm(!)
→ 選択肢の最大値8.0 cmをはるかに超える → 正解なし
【訂正後(0.010 mmol/L = 0.010 mol/m³)で計算すると…】
C = 0.010 mmol/L = 0.010 mol/m³
π = 3 × 0.010 × 8.3 × 300 = 74.7 Pa
問題文の比率で水銀柱 x を換算:
1.0×10⁵ Pa : 76 cm = 74.7 Pa : x
x = 76 × 74.7 / 1.0×10⁵ = 0.05677 cmHg
問題文の公式 x = h/14 より:
h = 14 × 0.05677 = 0.7948 cm ≈ 0.80 cm
→ 選択肢2(0.80 cm)とピッタリ一致!
π = 3 × 0.010 × 8.3 × 300 = 74.7 Pa
問題文の比率で水銀柱 x を換算:
1.0×10⁵ Pa : 76 cm = 74.7 Pa : x
x = 76 × 74.7 / 1.0×10⁵ = 0.05677 cmHg
問題文の公式 x = h/14 より:
h = 14 × 0.05677 = 0.7948 cm ≈ 0.80 cm
→ 選択肢2(0.80 cm)とピッタリ一致!
💡 結論:作問者は「mol/L」と書くべきところを「mol/L」と書いた(mmolのmを付け忘れた)ために、正解がhの最大値を795倍以上上回る天文学的な値になってしまった。訂正後の0.010 mmol/Lで計算すると綺麗に選択肢2(0.80 cm)が導かれる。つまり「幻の正解は選択肢2」である。
【ORORSの浸透圧計算の本質(試験対策として押さえる公式)】
浸透圧:π = iCRT(ファントホッフの式)
i:電離によるファントホッフ係数(Na₂SO₄ならi=3)
C:モル濃度(mol/m³)
R:気体定数(8.3 J/K·mol)
T:絶対温度(K)
界面差:h = π / (ρg) 単位換算:x = h / 14(水柱→水銀柱)
i:電離によるファントホッフ係数(Na₂SO₄ならi=3)
C:モル濃度(mol/m³)
R:気体定数(8.3 J/K·mol)
T:絶対温度(K)
界面差:h = π / (ρg) 単位換算:x = h / 14(水柱→水銀柱)
臨床メモ
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薬剤師 あおい
PAL(インヴェガ®)は必ず食後に服用するよう指導することが重要です。空腹時服用では吸収が低下します。また、OROS製剤は「ゴースト錠(残殻)」が便中に排泄されることがあります。患者から「便に錠剤が出てきた」と心配の声があったときに「薬の成分はすでに吸収済みで、殻だけが出てきたものです」と説明できると信頼感が上がります。パリペリドンは腎排泄型なので、腎機能に応じた用量調整も忘れずに確認しましょう。










