第111回
問196-197
実践問題|物理(196)・実務(197)
痛風発作患者の処方と尿酸ナトリウム水溶液のpH計算
【症例】問196-197 共通
45歳男性。会社の健康診断にて毎年尿酸値の高値を指摘されてきた。右の第一中足趾節関節(親指の付け根)に痛みがあったので、近くの整形外科クリニックを受診したところ、痛風と診断された。処方1、2の薬剤を服用していたが、最近、仕事のストレスから普段の飲酒(ビール)が増え、3日前から同じ部位の腫脹と激しい疼痛が現れた。今朝受診し、処方3、4の薬剤が追加され、薬局を訪れた。
(処方1)
フェブキソスタット錠20mg 1回1錠(1日1錠) 1日1回 朝食後 28日分
(処方2)
クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合散 1回1g(1日3g) 1日3回 朝昼夕食後 28日分
(処方3)
ナプロキセン錠100mg 昼4錠、夕2錠(1日6錠) 1日2回 昼夕食後 1日分(初日)
(処方4)
ナプロキセン錠100mg 1回2錠(1日4錠) 1日2回 朝夕食後 6日分(2日目以降)
(検査値)
血圧 125/80 mmHg、血清クレアチニン 0.8 mg/dL、尿酸 7.2 mg/dL、CRP 5.6 mg/dL、尿pH 5.5
問196(物理)
高尿酸血症の患者では、血液中に尿酸ナトリウムが健常者より高濃度で存在している。図に示すように尿酸ナトリウムは弱酸・強塩基の塩であり、尿酸のpKa は 5.75(25℃)である。いま、400 µmol/L の尿酸ナトリウム水溶液があったとすると、この水溶液のpHに最も近い値はどれか。1つ選べ。
ただし、尿酸ナトリウムは水溶液中で次のように反応するものとし、水のイオン積 Kw = [H⁺][OH⁻] = 1.0 × 10⁻¹⁴ (mol/L)²(25℃)、log2 = 0.30 とする。また、温度は25℃で、尿酸ナトリウムは水溶液中で完全に溶解しており、沈殿は生じていないものとする。
ただし、尿酸ナトリウムは水溶液中で次のように反応するものとし、水のイオン積 Kw = [H⁺][OH⁻] = 1.0 × 10⁻¹⁴ (mol/L)²(25℃)、log2 = 0.30 とする。また、温度は25℃で、尿酸ナトリウムは水溶液中で完全に溶解しており、沈殿は生じていないものとする。
16.8—
27.6—
38.2—
48.8—
59.4—
正解です!
正答:3(8.2)
不正解です
正答:3(8.2)
問197(実務)
この患者に指導する内容として適切なのはどれか。2つ選べ。
1水分は、多めに摂取してください。—
2毎日ビールを飲み続けていて構いません。—
3処方2の薬剤は、飲みにくければ水に溶かしてから服用しても構いません。—
4処方2の薬剤は、尿をより酸性にする作用があります。—
5処方3及び4の薬剤は、吸収をよくするために食後に服用してください。—
正解です!
正答:1と3
不正解です
正答:1と3
解説を見る(問196・197)
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■ 問196:尿酸ナトリウム水溶液のpH計算
💡 NaU(弱酸の塩)は水中でU⁻を生成し、U⁻が水と反応してOH⁻を生じる(加水分解)。これは弱酸の塩の加水分解なので、pOHを求めてpHを計算する。
与えられた値:
C = 400 µmol/L = 4.0 × 10⁻⁴ mol/L
pKa(尿酸HU)= 5.75 → Ka = 10⁻⁵·⁷⁵
Kw = 1.0 × 10⁻¹⁴
加水分解定数 Kh:
Kh = Kw / Ka = 10⁻¹⁴ / 10⁻⁵·⁷⁵ = 10⁻⁸·²⁵
[OH⁻] の計算(加水分解度が小さいと仮定):
[OH⁻]² ≈ Kh × C = 10⁻⁸·²⁵ × 4.0 × 10⁻⁴
= 4.0 × 10⁻¹²·²⁵
[OH⁻] = √(4.0 × 10⁻¹²·²⁵)
= 2.0 × 10⁻⁶·¹²⁵(√4 = 2、指数は半分)
pOH:
pOH = −log[OH⁻] = −log(2.0 × 10⁻⁶·¹²⁵)
= 6.125 − log2 = 6.125 − 0.30 = 5.825
pH:
pH = 14 − pOH = 14 − 5.825 = 8.175 ≈ 8.2
C = 400 µmol/L = 4.0 × 10⁻⁴ mol/L
pKa(尿酸HU)= 5.75 → Ka = 10⁻⁵·⁷⁵
Kw = 1.0 × 10⁻¹⁴
加水分解定数 Kh:
Kh = Kw / Ka = 10⁻¹⁴ / 10⁻⁵·⁷⁵ = 10⁻⁸·²⁵
[OH⁻] の計算(加水分解度が小さいと仮定):
[OH⁻]² ≈ Kh × C = 10⁻⁸·²⁵ × 4.0 × 10⁻⁴
= 4.0 × 10⁻¹²·²⁵
[OH⁻] = √(4.0 × 10⁻¹²·²⁵)
= 2.0 × 10⁻⁶·¹²⁵(√4 = 2、指数は半分)
pOH:
pOH = −log[OH⁻] = −log(2.0 × 10⁻⁶·¹²⁵)
= 6.125 − log2 = 6.125 − 0.30 = 5.825
pH:
pH = 14 − pOH = 14 − 5.825 = 8.175 ≈ 8.2
よって正答は選択肢3(8.2)。
⚠️ 引っかけポイント:
・NaUは弱酸・強塩基の塩なので水溶液は塩基性(pH > 7)。pH 6.8は酸性に近く明らかに誤り。
・Kh = Kw/Ka を正確に使う。pKa = 5.75 → Ka = 10⁻⁵·⁷⁵ であることを忘れない。
・NaUは弱酸・強塩基の塩なので水溶液は塩基性(pH > 7)。pH 6.8は酸性に近く明らかに誤り。
・Kh = Kw/Ka を正確に使う。pKa = 5.75 → Ka = 10⁻⁵·⁷⁵ であることを忘れない。
■ 問197:患者指導の内容
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 水分を多めに摂取 |
◯ | 尿量を増やすことで尿酸の排泄を促進し、尿路結石の予防にもなる。痛風・高尿酸血症の患者には1日2L以上の水分摂取が推奨される。 |
| 2 ビールを飲み続けて構わない |
× | ビール(アルコール)はプリン体を多く含み、尿酸産生を増加させる。またアルコール代謝で生じる乳酸が尿酸排泄を競合阻害する。禁酒または節酒が必須。 |
| 3 処方2を水に溶かして服用可 |
◯ | クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合散(ウラリット®など)は水に溶かして服用することが可能。溶かすことで服用しやすくなり、また液体として摂取することで水分補給にもなる。 |
| 4 処方2は尿を酸性にする |
× | 処方2のクエン酸製剤は尿をアルカリ化する目的で投与される。尿をアルカリ性に保つことで尿酸の溶解度が上がり、尿路結石を予防できる。「酸性にする」は正反対。 |
| 5 処方3・4は食後に服用 |
× | ナプロキセンはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)であり、「吸収をよくするため食後に」という指示は処方箋にない。NSAIDsは胃粘膜障害予防のため食後が多いが、処方3・4の指示は昼夕食後・朝夕食後と既に指定されており、「吸収のため」という説明は不適切。 |
⚠️ 引っかけポイント(選択肢順):
・選択肢4:クエン酸製剤=尿アルカリ化薬。「酸性化」との混同は最頻出。尿pH 5.5(酸性)がこの患者の検査値であり、アルカリ化が必要な理由でもある。
・選択肢5:食後服用の理由を「吸収のため」と言うのは誤り。胃粘膜保護が主な理由であり、すでに処方箋に食後と指定されている。
・選択肢4:クエン酸製剤=尿アルカリ化薬。「酸性化」との混同は最頻出。尿pH 5.5(酸性)がこの患者の検査値であり、アルカリ化が必要な理由でもある。
・選択肢5:食後服用の理由を「吸収のため」と言うのは誤り。胃粘膜保護が主な理由であり、すでに処方箋に食後と指定されている。
臨床メモ
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薬剤師 あおい
痛風発作時の尿酸降下薬の扱いには2つの重要な原則があります。①すでに服用中のフェブキソスタットは中断しない(中断による尿酸値の急激な変動が発作を悪化させる)、②発作中に新たに尿酸降下薬を開始しない(開始による尿酸値の変動も発作を遷延・悪化させる)。いずれも「尿酸値を急激に動かさないこと」が原則です。この患者は処方1(フェブキソスタット)を継続中であり、そのまま服用を続けるよう指導します。
また、ナプロキセンなどのNSAIDsは腎機能への影響(eGFR低下)に注意が必要で、この患者の血清クレアチニン 0.8 mg/dL は問題ない範囲ですが、長期使用には注意します。クエン酸製剤の服薬指導では「尿をアルカリにして尿酸を溶けやすくする薬です」と一言添えると患者の理解が深まります。










