第111回
問200-201
実践問題|実務(200)・物理(201)
心筋血流シンチグラフィと201Tlの放射性壊変
【症例】問200-201 共通
73歳男性。脳梗塞後片麻痺の後遺症がある。最近、動悸や息切れを感じて近医を受診し、急性冠症候群の疑いで総合病院を紹介された。トレッドミル、自転車エルゴメータは困難であったことから、精査目的で、塩化タリウム(201Tl)注射液(1回74 MBq)及びアデノシン注射液を使用した心筋血流シンチグラフィを行うこととなった。
問200(実務)
アデノシンの作用に影響を及ぼすため、この心筋血流シンチグラフィ実施前日の夕方から服用を避けるべき薬物はどれか。2つ選べ。
1ワルファリン—
2チザニジン—
3テオフィリン—
4プレガバリン—
5ジピリダモール—
正解です!
正答:3と5
不正解です
正答:3と5
問201(物理)
201Tlは軌道電子捕獲によって放射性壊変をする。201Tlに関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。
1注射された塩化タリウム(201Tl)は、血液中で201Tl⁺となり、Na⁺と似た体内挙動を示す。—
2201Tlは放射性壊変によって原子番号が1増える。—
3201Tlはシングルフォトン放出核種である。—
4塩化タリウム(201Tl)注射液の74 MBqとは1分間に74個の原子が放射性壊変をするときの放射能を表す。—
5201Tlの半減期を3日とすると、74 MBqの201Tlの6日後の放射能は18.5 MBqである。—
正解です!
正答:3と5
不正解です
正答:3と5
解説を見る(問200・201)
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■ 問200:アデノシン負荷試験前に休薬すべき薬物
💡 アデノシンは冠動脈を拡張させて心筋血流シンチグラフィの負荷試験に使用される。アデノシン受容体の拮抗薬(テオフィリン)はその作用を減弱し、取り込み促進薬(ジピリダモール)は作用を増強して過度な副作用を引き起こす。
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 ワルファリン |
× | 抗凝固薬。アデノシンの作用に直接影響しない。休薬不要。 |
| 2 チザニジン |
× | 中枢性筋弛緩薬(α₂受容体刺激)。アデノシンの作用に影響しない。休薬不要。 |
| 3 テオフィリン |
◯ | キサンチン系気管支拡張薬。アデノシン受容体拮抗薬であるため、アデノシンの冠動脈拡張作用を競合的に阻害し、負荷試験の効果を減弱させる。前日夕方から休薬が必要。カフェインも同様の理由でコーヒー・紅茶等を検査前に避ける。 |
| 4 プレガバリン |
× | 神経障害性疼痛治療薬(α₂δサブユニット結合)。アデノシン作用に影響しない。休薬不要。 |
| 5 ジピリダモール |
◯ | アデノシン取り込みトランスポーターを阻害し、内因性アデノシンの血中濃度を上昇させる。アデノシン負荷と組み合わせると過度な冠動脈拡張・血圧低下・徐脈などの重篤な副作用が増強される危険がある。検査前の休薬が必須。 |
⚠️ 引っかけポイント(選択肢順):
・選択肢3:テオフィリン=アデノシン受容体拮抗薬→アデノシン作用を弱める→負荷試験が無効になる。
・選択肢5:ジピリダモール=アデノシン増強薬→アデノシン作用を強める→副作用リスク。方向は逆だがどちらも休薬が必要。
・選択肢3:テオフィリン=アデノシン受容体拮抗薬→アデノシン作用を弱める→負荷試験が無効になる。
・選択肢5:ジピリダモール=アデノシン増強薬→アデノシン作用を強める→副作用リスク。方向は逆だがどちらも休薬が必要。
■ 問201:201Tlの放射性壊変
💡 軌道電子捕獲(EC):原子核が内殻電子を捕獲し、陽子がp + e⁻ → n + νとなる。原子番号が1減少し、特性X線やオージェ電子が放出される。201Tl(Z=81)→ 201Hg(Z=80)。
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 201Tl⁺はNa⁺と 似た体内挙動 |
× | 201TlはK⁺(カリウムイオン)と似た体内挙動を示す。Na⁺/K⁺ATPaseを介して心筋細胞に取り込まれるため、心筋血流・細胞viabilityの指標となる。Na⁺との混同に注意。 |
| 2 壊変で原子番号が1増える |
× | 軌道電子捕獲では p + e⁻ → n + ν となるため、陽子数(原子番号)が1減少する。201Tl(Z=81)→ 201Hg(Z=80)。原子番号が増えるのはβ⁻崩壊の特徴。 |
| 3 シングルフォトン 放出核種 |
◯ | 201Tlは軌道電子捕獲後に特性X線(主に水銀のX線、約69〜83 keV)を放出する。これは1本のフォトン(シングルフォトン)として検出されるため、SPECT(Single Photon Emission CT)に使用されるシングルフォトン放出核種である。 |
| 4 74 MBqは1分間に 74個が壊変 |
× | 放射能の単位 Bq(ベクレル)は1秒間に1個の原子核が壊変する放射能を表す。74 MBq = 7.4×10⁷ Bq = 1秒間に7.4×10⁷個が壊変。「1分間に74個」は全く異なる。 |
| 5 半減期3日で6日後 は18.5 MBq |
◯ | 6日 = 半減期3日の2倍。放射能は半減期ごとに1/2になるので: 74 MBq × (1/2)² = 74 × 1/4 = 18.5 MBq。正しい。 |
⚠️ 引っかけポイント(選択肢順):
・選択肢1:201TlはK⁺(カリウム)類似。「Na⁺類似」との混同は最頻出。
・選択肢2:軌道電子捕獲→原子番号減少。増えるのはβ⁻崩壊。
・選択肢4:BqはMBqも含め「1秒あたり」の壊変数。「1分間」との混同に注意。
・選択肢1:201TlはK⁺(カリウム)類似。「Na⁺類似」との混同は最頻出。
・選択肢2:軌道電子捕獲→原子番号減少。増えるのはβ⁻崩壊。
・選択肢4:BqはMBqも含め「1秒あたり」の壊変数。「1分間」との混同に注意。
臨床メモ
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薬剤師 あおい
アデノシン負荷心筋シンチの前には、テオフィリン・カフェイン含有飲料(コーヒー・紅茶・エナジードリンク)・ジピリダモールの休薬確認が必須です。患者が日常的にコーヒーを飲んでいる場合も「検査前日から控えてください」と一言伝えましょう。また201Tlは放射性医薬品であるため、調製・投与には放射線管理区域での取り扱いが必要です。投与後の患者から一定の放射線が出ることを念頭に置いた対応が求められます。










