第111回
問324-325
実践問題|実務(324)・法規・制度・倫理(325)
TIA発症後のアスピリン療法と保険調剤の点数構成
【症例】問324-325 共通
46歳男性。消化性潰瘍の既往あり。高血圧症及び脂質異常症に対し処方1の薬剤による治療を行っている。先日、急に話しづらさを感じ、かかりつけ医の紹介で別の医療機関において画像検査を受けた結果、TIA(一過性脳虚血発作)と診断されて入院となり、処方2の薬剤による治療が開始された。
| (処方1) |
アムロジピン錠5 mg 1回1錠(1日1錠) ロスバスタチン錠5 mg 1回1錠(1日1錠) 1日1回 朝食後 28日分 |
| (処方2) |
アスピリン腸溶錠100 mg 1回1錠(1日1錠) 1日1回 朝食後 3日分 |
| (処方3) |
アスピリン腸溶錠100 mg 1回1錠(1日1錠) 1日1回 朝食後 28日分 |
問324(実務)
処方2の薬剤による治療開始時に、病院で薬剤師が患者に説明する内容として適切なのはどれか。2つ選べ。
1
この薬はTIAによる後遺症の治療薬である。
—
2
この薬の服用中は納豆の摂取を控える必要がある。
—
3
消化性潰瘍が再発することがある。
—
4
この薬の服用中は発熱や頭痛が起こらない。
—
5
出血リスクがあるため、検査や手術等の際は服用中止が指示される場合がある。
—
正解です!
アスピリンの作用機序と注意すべきリスクを正確に理解しています。
不正解です。正解は 3 と 5 です。
解説でアスピリンの位置づけと既往歴を踏まえた注意点を確認しましょう。
問325(法規・制度・倫理)
退院後の外来受診で、これらの薬剤は継続となり、処方1及び処方3が記載された処方箋が発行された。この男性は、仕事が忙しく、かかりつけの薬局の開局時間内に処方箋を持参できず、開局時間外である19時に薬局に電話したところ、対応してくれることになり処方箋を持参した。薬剤師は会計時にこの患者に調剤の領収証と明細書を渡したところ、費用の内容について質問を受けた。患者に対する保険調剤に関する説明として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1
調剤技術料の項目に含まれる調剤基本料は、処方3の追加を理由として、変わることはありません。
—
2
調剤技術料には、薬剤師が患者の症状を踏まえて、説明や指導を行うことに対する費用の項目があります。
—
3
薬学管理料には、患者の服薬状況等の情報を収集、分析、評価し、薬剤服用歴へ記録することに対する費用の項目があります。
—
4
薬剤料は、薬局の開局時間外に処方箋を受け付けたので、費用が追加されています。
—
5
1点の単価は100円です。
—
正解です!
保険調剤における点数構成(調剤技術料・薬学管理料・薬剤料)を正確に理解しています。
不正解です。正解は 1 と 3 です。
解説で調剤報酬の3つの区分と時間外加算の対象を確認しましょう。
解説を見る▼
【問324】TIA発症後のアスピリン療法における服薬指導
TIA(一過性脳虚血発作)は脳梗塞の前兆とされ、再発・脳梗塞への進展を防ぐために抗血小板薬(アスピリン)による二次予防が開始される。アスピリンはCOX阻害により血小板凝集を抑制する一方、胃粘膜保護作用を担うプロスタグランジン産生も抑制するため、消化性潰瘍の既往がある本患者では特に注意が必要。
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | TIAによる後遺症の治療薬 | × アスピリンは抗血小板作用による脳梗塞・TIA再発の二次予防薬であり、TIAによって生じた後遺症(症状)そのものを治療する薬剤ではない。「予防」と「後遺症治療」を混同させる選択肢。 |
| 2 | 服用中は納豆の摂取を控える | × 納豆(ビタミンK)との相互作用が問題となるのはワルファリンであり、アスピリンとは無関係。抗血栓薬の種類(抗血小板薬 vs 抗凝固薬)によって食事指導の内容が異なる点を理解しているかが問われる。 |
| 3 ★ | 消化性潰瘍が再発することがある | ◯ アスピリンはCOX阻害により胃粘膜保護に関与するプロスタグランジン産生を抑制するため、消化性潰瘍のリスクを高める。既往歴のある本患者では潰瘍の再発・出血に特に注意が必要であり、必要に応じてPPI等の併用が検討される。 |
| 4 | 服用中は発熱や頭痛が起こらない | × アスピリンには解熱・鎮痛作用があるが、これは「服用中に発熱・頭痛が起こらない」ことを意味しない。低用量アスピリン(抗血小板療法)では解熱・鎮痛効果を期待した使用ではなく、原疾患・他の原因による発熱・頭痛は当然起こり得る。「起こらない」という断定が誤り。 |
| 5 ★ | 検査・手術時に服用中止が指示される場合がある | ◯ 抗血小板薬服用中は出血リスクが高まるため、観血的検査(内視鏡下生検等)や手術の前には、医師の指示により一定期間の休薬が必要となる場合がある。患者が自己判断で中止せず、必ず医師に相談するよう指導することが重要。 |
⚠️ 引っかけポイント(問324):
・選択肢2:「抗血栓薬=納豆禁止」という短絡的な暗記の誤り。ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)に限定される注意点であり、アスピリン(抗血小板薬)には適用されない。
・選択肢4:「アスピリン=解熱鎮痛薬」という知識から「発熱・頭痛が起こらない」と誤読しやすいが、これは薬の作用と患者に症状が起こるかどうかを混同させる文章構造になっている。
・選択肢2:「抗血栓薬=納豆禁止」という短絡的な暗記の誤り。ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)に限定される注意点であり、アスピリン(抗血小板薬)には適用されない。
・選択肢4:「アスピリン=解熱鎮痛薬」という知識から「発熱・頭痛が起こらない」と誤読しやすいが、これは薬の作用と患者に症状が起こるかどうかを混同させる文章構造になっている。
【問325】保険調剤の点数構成(調剤技術料・薬学管理料・薬剤料)
保険調剤の費用は大きく①調剤技術料(調剤基本料・薬剤調製料等)、②薬学管理料(服薬管理指導料等)、③薬剤料(薬剤そのものの価格)の3つに区分される。診療報酬の1点=10円。
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 ★ | 調剤基本料は処方3追加で変わらない | ◯ 調剤基本料は、薬局の体制・機能等に応じて処方箋受付1回ごとに算定される基本的な点数であり、処方される薬剤の種類数(処方1・3)が増えても、それを理由に調剤基本料自体が変動することはない。 |
| 2 | 調剤技術料に説明・指導の費用項目がある | × 薬剤師が患者の症状を踏まえて説明・指導を行うことに対する費用は薬学管理料(服薬管理指導料等)の項目であり、調剤技術料(調剤基本料・薬剤調製料等)には含まれない。調剤技術料は「薬を正確に調製・取り揃える」技術的行為への対価が中心。 |
| 3 ★ | 薬学管理料に服薬状況の収集・分析・記録の費用項目がある | ◯ 薬学管理料には、患者の服薬状況・服薬指導の内容等を収集・分析・評価し、薬剤服用歴(薬歴)に記録することに対する費用(服薬管理指導料の一部)が含まれる。選択肢2と対比して、「説明・指導・記録」=薬学管理料であることを示す正しい記述。 |
| 4 | 開局時間外受付で薬剤料に費用追加 | × 開局時間外に処方箋を受け付けた場合に算定される時間外加算等は、調剤技術料(調剤基本料等の加算)に該当するものであり、薬剤料(薬の価格そのもの)には時間外であることによる加算は発生しない。「薬剤そのものの値段は営業時間に関わらず一定」と理解する。 |
| 5 | 1点の単価は100円 | × 診療報酬(調剤報酬を含む)における1点の単価は10円。「100円」は誤り。例えば調剤報酬の合計点数が500点であれば、保険調剤の総額は5,000円となる(実際の患者負担額はここに保険の負担割合を乗じた額)。 |
⚠️ 引っかけポイント(問325):
・選択肢2・3:「調剤技術料」と「薬学管理料」のどちらに「説明・指導・記録」が含まれるかという区分の理解が問われる。技術料=モノを揃える対価、管理料=対人業務(説明・記録・フォロー)の対価とイメージすると整理しやすい。
・選択肢4:「時間外対応=何かに加算」という発想自体は正しいが、加算先が調剤技術料であり薬剤料ではない点に注意。
・選択肢5:「1点=10円」は医療保険制度全体に共通する基本知識であり、即答できるようにしておく。
・選択肢2・3:「調剤技術料」と「薬学管理料」のどちらに「説明・指導・記録」が含まれるかという区分の理解が問われる。技術料=モノを揃える対価、管理料=対人業務(説明・記録・フォロー)の対価とイメージすると整理しやすい。
・選択肢4:「時間外対応=何かに加算」という発想自体は正しいが、加算先が調剤技術料であり薬剤料ではない点に注意。
・選択肢5:「1点=10円」は医療保険制度全体に共通する基本知識であり、即答できるようにしておく。
臨床メモ▼


薬剤師 あおい
抗血小板薬 vs 抗凝固薬の食事指導の違い:「納豆・クロレラ・青汁を控える」という指導が必要なのはワルファリン(ビタミンK拮抗薬)のみです。アスピリン・クロピドグレル等の抗血小板薬にはビタミンKとの相互作用はなく、この指導は不要です。「抗血栓薬=納豆NG」と一括りにせず、薬の作用機序(血小板凝集抑制 vs 凝固因子合成阻害)で区別しましょう。
保険調剤の点数構成を「モノ・コト・ヒト」で整理:①薬剤料=「モノ」(薬そのものの価格)、②調剤技術料=「コト」(調剤という作業・体制への対価)、③薬学管理料=「ヒト」(患者対応・説明・記録などの対人業務への対価)。今回の設問のように「どの費用がどの区分に入るか」を問う問題では、この3分類を軸に考えると整理しやすくなります。
開局時間外対応の評価:休日・夜間等に患家や患者からの求めに応じて調剤を行った場合、調剤基本料の時間外加算・休日加算・深夜加算等が算定されます。これは薬局が時間外に対応する「体制・労力」への評価であり、薬剤そのものの価格(薬剤料)には影響しません。「対応した時間帯」と「薬の値段」は別物と捉えましょう。












