第110回
問108
理論問題|化学
アラニン誘導体Aの1H NMRスペクトルによる構造決定
問108(理論)
図は、アラニン誘導体Aの1H NMRスペクトル〔400 MHz、CDCl3、基準物質はテトラメチルシラン(TMS)〕を示している。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
なお、×印のシグナルはCDCl3中に含まれるCHCl3のプロトンに由来するシグナルであり、fのピークは重水(D2O)を添加するとほぼ消失した。
アラニン誘導体A(4-メトキシベンゾイル基+アラニンエチルエステル)
アラニン誘導体Aの1H NMRスペクトル(400 MHz、CDCl3)
1
ピークa、b、cのプロトン数の合計は6である。
—
2
ピークeに対応するプロトンはエであり、重水を加えると四重線(カルテット)となる。
—
3
ピークgに対応するプロトンはカとキである。
—
4
アのプロトンとカップリング(スピン-スピン結合)しているのは、ピークdに対応するプロトンである。
—
5
イのプロトンのピークは、コのプロトンのシグナルより高磁場側にある。
—
正解です!
解説でピークの帰属とカップリングの関係を確認しましょう。
不正解です。正解は 2、4 です。
解説でピークの帰属とカップリングの関係を確認しましょう。
解説を見る▼
化合物Aは、4-メトキシ安息香酸とアラニンエチルエステルが縮合したアミド(N-(4-メトキシベンゾイル)アラニンエチルエステル)です。ベンゼン環はパラ二置換(1位:OCH3、4位:C=O)のため、環上のHは対称性により2組の等価な組(各2H)に分かれます。
各ピークの帰属
・h(約7.8 ppm、2H、d)=カ・ク(カルボニル側の芳香族H)
・g(約6.9 ppm、2H、d)=キ・ケ(OCH3側の芳香族H)
・f(約6.6 ppm、1H、br)=オ(アミドNH、D2Oで消失)
・e(約4.8 ppm、1H、quintet様)=エ(アラニンα位CH)
・d(約4.2〜4.3 ppm、2H、q)=イ(エステルOCH2)
・c(約3.9 ppm、3H、s)=コ(芳香環OCH3)
・b(約1.5 ppm、3H、d)=ウ(アラニンCH3)
・a(約1.3 ppm、3H、t)=ア(エステルCH2CH3)
・h(約7.8 ppm、2H、d)=カ・ク(カルボニル側の芳香族H)
・g(約6.9 ppm、2H、d)=キ・ケ(OCH3側の芳香族H)
・f(約6.6 ppm、1H、br)=オ(アミドNH、D2Oで消失)
・e(約4.8 ppm、1H、quintet様)=エ(アラニンα位CH)
・d(約4.2〜4.3 ppm、2H、q)=イ(エステルOCH2)
・c(約3.9 ppm、3H、s)=コ(芳香環OCH3)
・b(約1.5 ppm、3H、d)=ウ(アラニンCH3)
・a(約1.3 ppm、3H、t)=ア(エステルCH2CH3)
各選択肢の解説
× 1 ピークa(ア、3H)・b(ウ、3H)・c(コ、3H)はいずれもメチル基3Hであり、合計は3+3+3=9である。6ではない
◯ 2 ピークeはエ(α位CH)に対応する。もとは隣接するCH3(ウ)とNH(オ)の両方とカップリングし複雑な多重線となるが、D2O添加によりNHが交換・消失するとCH3とのカップリングのみが残り、n+1則で四重線(カルテット)になる
× 3 パラ二置換ベンゼン環では、OCH3にオルトのH(キ・ケ)が電子供与で高磁場(約6.9 ppm、g)、カルボニルにオルトのH(カ・ク)が電子求引で低磁場(約7.8 ppm、h)に現れる。ピークgはキとケであり、カとキではない
◯ 4 ア(エステル末端CH3、ピークa、t)は隣接するイ(OCH2、ピークd、q)とビシナルカップリングしている(エチル基特有のtriplet-quartetパターン)
× 5 高磁場側とは化学シフト(ppm)がより小さい方を指す。イ(ピークd、約4.2〜4.3 ppm)はコ(ピークc、約3.9 ppm)より低磁場側にあり、逆の記述である
× 1 ピークa(ア、3H)・b(ウ、3H)・c(コ、3H)はいずれもメチル基3Hであり、合計は3+3+3=9である。6ではない
◯ 2 ピークeはエ(α位CH)に対応する。もとは隣接するCH3(ウ)とNH(オ)の両方とカップリングし複雑な多重線となるが、D2O添加によりNHが交換・消失するとCH3とのカップリングのみが残り、n+1則で四重線(カルテット)になる
× 3 パラ二置換ベンゼン環では、OCH3にオルトのH(キ・ケ)が電子供与で高磁場(約6.9 ppm、g)、カルボニルにオルトのH(カ・ク)が電子求引で低磁場(約7.8 ppm、h)に現れる。ピークgはキとケであり、カとキではない
◯ 4 ア(エステル末端CH3、ピークa、t)は隣接するイ(OCH2、ピークd、q)とビシナルカップリングしている(エチル基特有のtriplet-quartetパターン)
× 5 高磁場側とは化学シフト(ppm)がより小さい方を指す。イ(ピークd、約4.2〜4.3 ppm)はコ(ピークc、約3.9 ppm)より低磁場側にあり、逆の記述である
| ピーク | 帰属 | δ (ppm) | 積分 | 分裂形式 |
| h | カ・ク | 約7.8 | 2H | d |
| g | キ・ケ | 約6.9 | 2H | d |
| f | オ(NH) | 約6.6 | 1H | br(D2Oで消失) |
| e ★ | エ | 約4.8 | 1H | quintet様→D2Oでq |
| d ★ | イ | 約4.2〜4.3 | 2H | q |
| c | コ(OCH3) | 約3.9 | 3H | s |
| b | ウ | 約1.5 | 3H | d |
| a | ア | 約1.3 | 3H | t |
引っかけポイント:
・選択肢1:メチル基3つ(a・b・c)を安易に見て「6」という数字に引きずられないよう、実際に3+3+3=9であることを確認する
・選択肢3:芳香族2組の帰属(OCH3側 vs カルボニル側)を逆にしないよう、電子効果(給電子基オルトは高磁場、求電子基オルトは低磁場)で判断する
・選択肢5:「高磁場側」=低ppm側という定義を取り違えると、イとコの大小関係を逆に判断してしまう
・選択肢1:メチル基3つ(a・b・c)を安易に見て「6」という数字に引きずられないよう、実際に3+3+3=9であることを確認する
・選択肢3:芳香族2組の帰属(OCH3側 vs カルボニル側)を逆にしないよう、電子効果(給電子基オルトは高磁場、求電子基オルトは低磁場)で判断する
・選択肢5:「高磁場側」=低ppm側という定義を取り違えると、イとコの大小関係を逆に判断してしまう
臨床メモ▼


薬剤師 あおい
NMRの構造決定問題は、まず「対称性」に注目すると整理しやすいですよ。今回のようにパラ二置換ベンゼン環が出てきたら、必ず2組の等価なプロトンに分かれることを思い出してくださいね。
また「重水(D2O)を加えると消える・変化する」というフレーズは、交換性プロトン(NH・OHなど)を見抜くヒントです。国試ではこのパターンが頻出なので、セットで覚えておくと得点源になります。










