【第111回薬剤師国家試験】問187 アルコール依存症の治療 解説

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第111回 問187
第111回 問187
理論問題|病態・薬物治療
アルコール依存症の治療
問187 アルコール依存症の治療に関する記述として、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 飲酒欲求を直接的に抑制するために、シアナミドを投与する。
2 飲酒時に不快症状を誘発するために、アカンプロサートを投与する。
3 アルコール依存症の症状を緩和するために、メタノールを投与する。
4 断酒の維持を補助するために、ナルメフェンを投与する。
5 アルコール離脱症状を改善するために、ロラゼパムを投与する。
正解です!
正答:5
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不正解です
正答:5
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💡 アルコール依存症の薬物治療は「①嫌酒薬(飲酒に罰を与える)」「②抗酒薬(飲酒欲求を抑える)」「③離脱症状の治療」の3カテゴリーで整理する。各薬の目的と機序を正確に区別することが鍵。
選択肢正誤解説
1
シアナミド
× シアナミド(シアナマイド)はALDH(アルデヒド脱水素酵素)阻害薬=嫌酒薬。飲酒時にアセトアルデヒドが蓄積して悪心・頭痛・紅潮などの不快症状を引き起こす。「飲酒欲求を直接的に抑制する」のではなく、飲酒への嫌悪条件付けが機序。
2
アカンプロサート
× アカンプロサート(カンプラル®)はグルタミン酸NMDA受容体やGABA受容体に作用し、飲酒欲求(渇望)を抑制する断酒補助薬。「飲酒時に不快症状を誘発する」のは嫌酒薬(シアナミド・ジスルフィラム)の特徴であり、アカンプロサートの作用とは異なる。
3
メタノール
× メタノール(メチルアルコール)は飲用すると失明・死亡を引き起こす有毒物質であり、治療薬として投与しない。アルコール依存症の治療薬ではまったくない。
4
ナルメフェン
× ナルメフェン(セリンクロ®)はオピオイド受容体部分作動薬で、飲酒量低減(減酒)を目的とする薬物。「断酒の維持を補助する」のはアカンプロサートの適応であり、ナルメフェンは完全断酒ではなく節酒(飲酒量の低減)を目標とする点が重要な違い。
5
ロラゼパム
ロラゼパム(ワイパックス®)はベンゾジアゼピン系薬。アルコールとベンゾジアゼピンはGABAA受容体を介した交叉耐性があるため、アルコール離脱時の振戦・けいれん・せん妄(離脱症状)の治療・予防に有効。ジアゼパムも同様に使用される。
⚠️ 引っかけポイント(選択肢順):
・選択肢1:シアナミドは「嫌酒薬」(飲んだら不快)であり、「渇望を抑える」薬ではない。目的の記述が入れ替わっている。
・選択肢2:アカンプロサートの目的は「渇望抑制・断酒補助」。「不快症状誘発」と混同しない。
・選択肢4:ナルメフェンは「断酒」ではなく「減酒(飲酒量低減)」が目的。断酒補助薬との違いを押さえる。

📌 豆知識①:シアナミド vs ジスルフィラム(ノックビン)
どちらもALDH阻害の嫌酒薬だが使い分けがある。シアナミドは作用発現が速く(服用後30分〜)即効性がある一方、作用持続は短い(数時間)。ジスルフィラムは作用持続が長く(服用後1〜2週間まで効果継続)、服薬コンプライアンスの確認が容易。どちらを選ぶかは患者背景・監督可能な環境かどうかで判断する。

📌 豆知識②:ウェルニッケ脳症の予防(国試・実務の超定番)
アルコール依存症患者はビタミンB1(チアミン)欠乏になりやすい。ブドウ糖を含む輸液を投与する前にチアミンを先に補充しないと、糖代謝が亢進してチアミンをさらに消費し、ウェルニッケ脳症(眼球運動障害・運動失調・意識障害の三徴)を誘発・悪化させる危険がある。「ブドウ糖の前にビタミンB1」はアルコール依存症患者の救急対応で必須の知識。
臨床メモ
あおい
薬剤師 あおい

アルコール依存症治療薬の処方箋を受け取ったとき、目的の違いを患者に説明できることが重要です。アカンプロサート(断酒補助)とナルメフェン(減酒)は目標設定が異なります。ナルメフェンは「飲む30分前に服用」という独特の用法があり、「今日は飲まない」日は服用不要である点も服薬指導で押さえておきましょう。また、アルコール離脱せん妄(振戦せん妄)は生命に関わる救急疾患であり、ベンゾジアゼピン系薬による早期介入が重要です。

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