【第110回薬剤師国家試験】問25 盆地・谷間への冷気流入で生じる逆転層 解説

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第110回 問25
第110回 問25
必須問題|衛生
盆地・谷間への冷気流入で生じる逆転層
【設問】

逆転層は大気汚染物質の滞留を引き起こす。盆地や谷間などの低地に冷たい空気が流入して発生するのはどれか。1つ選べ。

問25(衛生)
1
沈降性逆転層
2
地形性逆転層
3
放射性逆転層
4
移流性逆転層
5
前線性逆転層
正解です!
盆地・谷間への冷気流入=地形性逆転層を正しく理解しています。
×
不正解です。正解は 2 です。
解説で各逆転層の発生メカニズムを確認しましょう。
解説を見る

【問25】逆転層の種類と発生機序

通常の大気では上空ほど気温が低く(気温減率)、地表付近の暖かい空気は上昇して大気汚染物質が拡散される。逆転層とは、この通常の気温分布が逆転し「上空の方が暖かい」状態になること。地表付近の冷たい空気が上昇できず、大気汚染物質が低層に滞留する。地形性逆転層は、盆地・谷間・湾岸などの地形的な低地に周囲の山や丘から冷たい空気が流れ込む(冷気湖)ことで形成される。
番号逆転層の種類発生機序・特徴
1沈降性逆転層高気圧の中心部で上空の空気が断熱圧縮されながら沈降し、温かくなることで生じる。高気圧支配下の晴天時に発生しやすく、光化学スモッグの原因になる。上空に形成される(地表ではない)。
2 ★ 地形性逆転層 盆地・谷間などの低地に周囲の高地から冷たい空気が流入(冷気湖)して形成。四日市ぜんそく(三重県四日市市:海岸に囲まれた地形)など、地形由来の公害と関連する場合もある。
3放射性逆転層晴れた夜間に地表面が放射冷却によって急激に冷え、地表付近の空気が冷やされて形成される。朝方に最も強くなり、日中の日射で解消される。最も頻繁に発生する逆転層。
4移流性逆転層暖かい空気が冷たい地表や海面の上に水平移流することで形成される。海霧や沿岸霧の発生と関連する。
5前線性逆転層温暖前線において、暖かい空気が冷たい空気の上に乗り上げることで形成される気象学的な逆転層。

通常の大気は、太陽光で温められた地表付近の軽い空気が上昇し、上空の冷たい重い空気が下降することで垂直方向の対流(換気)が常に起きている。しかし何らかの原因で上空に暖かい空気の層(逆転層)ができると、下層の冷たい空気は上昇できなくなり対流がストップする。これは街全体に透明な「巨大なドーム状の蓋」が被さった状態に等しく、工場や自動車から排出された有害物質(SO₂・NOₓなど)が地表付近に閉じ込められて高濃度の大気汚染(スモッグ)を引き起こす。

したがって正解は 2(地形性逆転層) である。

選択肢3(放射性逆転層)が最大のひっかけ。晴れた風の弱い夜間に地表面から熱が宇宙へ逃げる放射冷却によって地面が急激に冷え、地表に接した空気層が冷やされることで発生する。朝方に最も強くなり、日が昇って地表が温められると自然に解消するのが特徴。「盆地・谷間への冷気の流入」とは原因が異なる。
選択肢1(沈降性逆転層):高気圧下での空気の沈降・断熱圧縮により上空に形成される。地表の冷気流入とは無関係。
選択肢5(前線性逆転層):温暖前線や寒冷前線の境界面(前線面)において、軽い暖かい空気が冷たい空気の斜面の上に乗り上げることで上空に暖気層が形成される。低地への冷気の流入とは無関係。
臨床メモ
あおい
薬剤師 あおい

逆転層の問題は「何が原因で上空が暖かくなるか」に注目するのがコツです。名前から原因を連想できるようにしましょう。

逆転層 原因のキーワード 発生しやすい状況
放射性地表の放射冷却(夜間)晴れた夜〜朝方。最も頻繁に発生。
地形性盆地・谷間への冷気流入地形的な低地(盆地・谷・湾岸)
沈降性高気圧による空気の沈降・断熱圧縮高気圧支配下の晴天時(光化学スモッグ)
移流性暖気の水平移流(冷たい地表・海面上)海霧・沿岸霧の発生時

歴史的な大気汚染公害との関連では、ロンドンスモッグ(1952年)は放射性逆転層+霧ロサンゼルス型スモッグは沈降性逆転層+強日射が組み合わさって深刻化した事例です。そして本問の地形性逆転層が原因で起きた代表的な歴史的公害としては、谷間に煙が滞留したベルギー・ミューズ渓谷事件(1930年)アメリカ・ドノラ事件(1948年)があります。「地形性(盆地や谷間)・放射性(夜間の放射冷却)・沈降性(高気圧の断熱圧縮)」という名前がそのまま原因のキーワードになっているので、それぞれのキャラクターをパズルを解くようにすっきり整理しておきましょう!

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